朝日新聞記事検索より
検索日:2000年12月12日
記事中フリーターム ->IT基本法
記事数:25 件です.(\1)
記事の期間:2000年7月24日−12月8日
朝日新聞記事データベース/G−Search
2000年12月12日
◆000025
(T001208M11--12)
安心は“する”もの 堺屋前経企庁長官、楽観論説き退任
2000.12.08 東京朝刊 11頁 1経 写図有 (全773字)
内閣改造に伴い経済企画庁長官を辞任した堺屋太一氏=写真=が七日、額賀福志郎
新長官に事務を引き継いだ。堺屋氏は民間人として入閣。経済や景気への洞察力、作
家としての表現力を駆使して、日本経済の姿を分かりやすく語りかける一方、積極的
な財政出動による景気優先の経済運営の旗を振り、巨額の国の借金も残した。景気の
先行きへの不安は依然として払しょくされていないが、堺屋氏は「安心はできるので
はなく、するもの。建設的な楽観論が必要だ」と述べて政治の舞台から降りた。
「変化の胎動も感じられる」――。この発言で経企庁長官としての堺屋氏は一躍、
注目を集めた。一九九八年十一月二十四日のことで、日本は金融不安に覆われ、不況
感はぬぐいようもない時期だったからだ。この発言は後日、当時の不況が改善に向か
い、九九年四月に景気の「谷」を迎えたことで裏付けられ、堺屋氏の景気を見る目の
確かさを物語ることになった。
日本経済をデフレスパイラルのふちから救い出すとして、あらゆる積極的な財政政
策を展開。日本の経済成長率はなんとかプラスを維持するようになった。
一方で、その重いつけも回ってきた。国や地方の借金は長官時代にも膨張を続け、
今年度末には六百四十五兆円になる。堺屋氏一人の判断ではないが、景気優先政策の
理論的支柱として果たした責任は大きい。
物価下落の中でデフレ懸念は残り、失業率も高止まりしたままだ。個人消費も伸び
ない。国の金をつぎ込む景気対策の限界だ。
堺屋氏は「今年度の補正予算やIT基本法などの手当てをして、回復への道筋はつ
けた。後は普通にやればうまくいく」と繰り返し、最後は「悲観論は感情だ」と、
「安心の勧め」を説いた。
しかし、財政や税制、社会保障、構造改革など堺屋氏があまり目を向けなかった課
題は深刻さを増している。国民や内外の市場による評価はこれからだ。
◆000024
(S001205M14--05)
景気とITを一緒にするな(声) 【西部】
2000.12.05 西部朝刊 14頁 オピニオン2 (全554字)
経営コンサルタント 佐々木信興(山口県 66歳)
日本独自の情報技術(IT)社会実現を目指す高度情報ネットワーク社会形成基本
法(IT基本法)が成立した。しかし、誠に結構ですと手放しで喜ぶ気にはなれない。
森喜朗首相は「これで景気が回復する」と言い、堺屋太一経済企画庁長官は「二〇
〇五年までに米国に追いつく」と言っているが、それは本音だろうか。私には信じら
れないことである。
先駆者である米国のIT革命は一九八〇年代前半、当時のレーガン大統領の大胆な
規制緩和と構造改革により達成出来たことであり、今日の繁栄をもたらすまでに十年
以上の年月と、古い体質を持った企業の倒産、従業員の失業というおびただしい血を
流した結果である。
この間、日本はバブル崩壊以降の「ソフトランディング」という問題先送りの政策
により、空白の十年間を刻んできた。
日本は、このIT革命によって、本当に国民生活の利便性を向上させ、それに伴う
行政コストを限りなくゼロに近づけ、そして経済構造を改革することが出来るのであ
ろうか、疑問である。
森首相は、二〇〇五年までのIT革命のプロセスを国民に具体的に説明し、理解を
求めるよう努力することが必要である。
いやしくも景気対策という名の「バラマキ政策」にすり替えることだけは、やめて
欲しいものである。
◆000023
(T001202M04--01)
世紀末国会、法案は着々 「官房長官辞任」「加藤政局」波乱あれど
2000.12.02 東京朝刊 4頁 政治 (全2902字)
二十世紀最後の国会が終わった。現憲法下で百五十回目という節目の国会でもあっ
たが、世紀末を象徴するかのような目まぐるしい七十二日間だった。参院選挙制度改
革をめぐる与野党攻防で「野党不在」が続いた末に参院議長が辞任したのが第一幕。
二幕目はスキャンダルで官房長官が辞任、第三幕は「加藤政局」一色となったが、エ
ピローグはすべての重要法案の成立だった。与野党間の「談合」による五五年体制型
の国対政治は完全に過去のものとなり、妥協なき激突国会に様変わりした。(木之本
敬介)
「(与党は)国会を採決機関にしてしまうのか。自民党の野中広務幹事長とは一度
も会談していない。森喜朗首相も野中氏も逃げていた」
民主党の菅直人幹事長は一日、代議士会で振り返った。確かに、これだけ与野党が
激突しながら、与野党党首会談はもちろん、幹事長会談も開かれなかったことは、国
会の様変わりぶりを表す象徴的な出来事だった。
○ごり押しが発端
「異常国会」の発端は、自民党が参院選比例区に非拘束名簿式を導入する公職選挙
法改正を、ごり押ししたことだった。野党の審議拒否などおかまいなし。参院議院運
営委員長が入院するもみ合いまであり、あっせんに乗り出した斎藤十朗参院議長が辞
任。引き替えの形で国会は三週間ぶりに正常化した。
次にやってきたのはスキャンダル。当時の中川秀直官房長官の一連の疑惑に、森首
相の問題発言、ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)の自民党費肩代わ
り問題が加わり、国会は内閣追及一色になった。
最後は自民党の加藤紘一元幹事長らが森首相の退陣を求めた「加藤政局」。七年ぶ
りの内閣不信任決議案可決か、という事態に国会は緊迫感に包まれた。腰砕けで終わ
ったが、松浪健四郎代議士の「水かけ事件」で二十七年ぶりの登院停止処分というお
まけまでついた。
○参院選にらんで
一見脈絡のない波乱国会だったが、貫かれていたのは「来年夏の参院選をいかに有
利に戦うか」という青木幹雄参院自民党幹事長らの戦略だ。非拘束式は凋落(ちょう
らく)を続ける自民票を支えるのが狙いだし、選挙前に党の秩序、イメージを崩そう
とする加藤氏の乱も絶対に許されなかった。そこには二十一世紀の日本を見据えた視
点も論争もなかった。
ただ、与野党双方が議員立法の形で提出した「あっせん利得処罰法」の審議など、
法案によっては熱心な政策論争が展開された。最後は与党が数で押し切ってしまった
ものの、議論を通じて論点が明確になった意味は大きい。
「国会は野党のためにある」とも言われる。もちろん十分な審議を保証する責任は
与党が持つのだが、同時に野党側にも政府・与党に切り込む力量が求められる。民主
主義の当然の前提なのだが、今国会を振り返る限り、与野党ともその自覚が感じられ
ない。
◆今国会で成立した主な法律
一日に閉会した第百五十臨時国会で成立した主な法律、予算は次の通り。
◇予算◇
●二〇〇〇年度一般会計補正予算 森内閣の「日本新生プラン」に向けた経済対策
(事業規模十一兆円)のためなどに、四兆七千八百三十二億円を計上。社会資本整備
費(国費二兆五千億円)の二六%を情報技術関連に充てたが、従来型の公共事業も盛
り込まれた。
◇議員立法◇
●あっせん利得処罰法 国会議員や公設秘書、地方議員、首長が、国や地方自治体
の契約や行政処分について請託を受け、公務員に対して「権限に基づく影響力を行使
して財産上の利益を収受」した場合、三年以下(公設秘書は二年以下)の懲役刑とな
る。
●改正少年法 厳罰化の方向で(1)刑事罰対象を現行の十六歳以上から十四歳以
上に引き下げる(2)十六歳以上が故意の犯罪で被害者を死亡させれば原則家裁から
検察側に逆送し刑事裁判にかける(3)凶悪事件で家裁の少年審判に検察官立ち会い
を認める――が柱。
●原子力発電施設等立地地域振興特別措置法 原発関連施設の周辺地域で、道路、
鉄道、港湾整備、産業など幅広い事業に補助金を上乗せするのが目的。都道府県知事
が振興計画を立案し、首相を議長として新設される原子力立地会議が承認する。
●改正公職選挙法 参院選の比例区を、候補者個人への投票も認める非拘束名簿式
に改める。候補者への投票は一度所属政党への投票とみなして、政党への投票と合算
される。議席を各政党の得票に応じて比例配分したうえで、個人票の多い順に当選す
る。参院の定数一〇減(比例区四、選挙区六)も盛り込んだ。
◇政府提出◇
●医療保険制度改正関連法 七十歳以上については現在の外来一日五百三十円の定
額制が、かかった費用の一割を負担する定率制になる。七十歳未満でも「高額療養費」
制度の改正で、医療費が一定額を超えればその分の一%も自己負担となる。
●改正警察法 警察不祥事を受け、国や都道府県の公安委員会の監察機能を強化。
警察庁や都道府県警に監察を指示し、その進み具合を点検する権限を公安委に持たせ
る。住民が警察への苦情を公安委に申し出る制度や地元警察署の問題を協議する機関
も設ける。
●ヒトクローン技術規制法 人や動物の卵子の核を除き、そこに人の体細胞を移植
した「人クローン胚(はい)」を人や動物の子宮に移植することを禁じる。違反した
研究者らに十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金を科す。また違反者が所属す
る研究機関などにも罰金を科す。
●公共工事入札・契約適正化法 元建設相の受託収賄事件などをふまえ、公共事業
の透明性確保を目指す。工事を発注する省庁や地方自治体に対し、入札と契約の過程
の公表を義務づけ、受注業者が下請け業者に工事を「丸投げ」することの禁止などを
定める。
●IT基本法 「広く国民が低廉な料金で利用することができる世界最高水準の高
度情報通信ネットワークの形成」を基本方針として、具体的な目標や達成期限を定め
た重点計画を作ることを定めている。首相を本部長とする「高度情報通信ネットワー
ク社会推進戦略本部」の設置も盛り込んだ。
●船舶検査法 「周辺事態」が起きた場合、紛争当事国への経済制裁の一環として、
不審な船の積み荷などを検査できるようにする。国連安全保障理事会の決議がある場
合に加え、対象の船が所属する「旗国」の同意を得られた場合も実施できる。
●任期付き任用法 専門知識を持つ民間人を外部から政府に登用するため、一般職
国家公務員の任期付き任用制度を導入する。
〈成立したその他の法律・条約〉
租税特別措置法改正▽国会議員秘書給与法改正▽人権教育・啓発推進法▽未成年者
喫煙禁止法、未成年者飲酒禁止法改正▽酒税法改正▽マンション管理適正化推進法▽
国会法改正▽市町村合併特例法改正▽在日米軍駐留経費負担新特別協定▽農地法改正
▽労働者災害補償保険法、労働保険保険料徴収法改正▽一般職職員給与法改正▽訪問
販売法、割賦販売法改正▽家畜伝染病予防法改正▽民事再生法改正▽外国倒産処理手
続き承認援助法▽著作権等管理事業法▽書面交付等情報通信技術利用関係法整備法▽
一九九九年度決算剰余金処理特例法▽中小企業信用保険法、中小企業総合事業団法改
正▽地方交付税法改正
◆000022
(T001130M04--14)
首相動静・29日
2000.11.30 東京朝刊 4頁 政治 (全485字)
森首相
【午後】0時8分、国会。9分、議会開設百十年記念祝賀会。39分、官邸。43
分、上野官房副長官。1時34分、福田官房長官。2時、平沼通産相、通産省の広瀬
勝貞事務次官、村田成二産業政策局長。30分、自民党の古賀誠、片山虎之助衆参両
院国対委員長。38分、古賀委員長。43分、町村信孝自民党国対筆頭副委員長。3
時5分、セルゲーエフ・ロシア国防相ら。首藤新悟防衛庁防衛局長ら同席。27分、
小川郷太郎カンボジア大使。40分、伊藤康成内閣安全保障・危機管理室長。51分、
阿南惟茂内閣外政審議室長、高木勇樹農水事務次官、野上義二外務審議官、今野秀洋
通産省通商政策局長ら。4時36分、皇居。5時、宮中茶会。6時20分、公邸。4
3分、総理府。高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)成立打ち上
げ懇親会。堺屋IT担当相、中川前IT担当相、竹島一彦内閣内政審議室長。7時4
6分、公邸。47分、福田長官。
◆000021
(T001130M04--02)
IT基本法が成立、4月にも重点計画策定 参院本会議でで可決
2000.11.30 東京朝刊 4頁 政治 (全421字)
日本独自の情報技術(IT)社会実現をめざす高度情報通信ネットワーク社会形成
基本法(IT基本法)が二十九日の参院本会議で、自民、公明、保守の与党三党と民
主党の賛成多数で可決、成立した。首相を本部長とする「高度情報通信ネットワーク
社会推進戦略本部」の設置や、政府のIT政策を具体化する「重点計画」の策定が明
記されている。「IT革命」を掲げる森喜朗首相はIT戦略会議がすでにまとめた
「IT基本戦略」をもとに、重点計画を四月にもまとめる考えだ。
同法は電子商取引の促進、電子政府・自治体の推進、個人情報の保護、国際協調な
どを基本方針にすえ、政府が重点計画を策定する、と定めている。
重点計画は、(1)具体的な目標や達成期間を定める(2)達成状況を公表する―
―ことが義務づけられている。
来年一月に設置される戦略本部には、関係閣僚を副本部長として置き、学者ら民間
の有識者を積極的に任命する。政府は、戦略本部を中心に年明けから重点計画策定の
作業に入る。
◆000020
(T001125E08--04)
日本企業のIT化戦略 小巻泰之(ぜみなーる)
2000.11.25 東京夕刊 8頁 夕刊経済特集4 写図有 (全2072字)
IT(情報技術)は今や、政府、企業あるいは家計においても、元気印のキーワー
ドとなっている。IT革命の先進国の米国は戦後最長の景気拡大を享受した。これを
見習い、一九九〇年代を顧みて「失われた十年」を経験してきた日本は、景気のけん
引役としてITに大きな期待を寄せている。
○関連設備投資は急伸
政府はIT基本法(正式名称・高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)の成立
を目指し、超高速ネットワークインフラの整備、電子商取引の推進などから、経済の
再生を図ろうとする。企業はパソコンを導入し、インターネット取引などを通じて、
IT革命の恩恵を享受しようと動き始めている。
事実、民間企業の設備投資に占めるIT関連の設備投資比率は上昇の一途をたどっ
てはいる。通産省の鉱工業生産活動分析によれば、九五年にはIT関連投資のウエー
トは一六%程度であったが、最新統計では二七%程度と一〇ポイントも上昇している。
また、IT関連投資をおこなっている企業も通信業でのインフラ整備だけでなく、活
用している企業での投資も増加傾向にある。これは、企業にとって、ITがなくては、
ビジネスにも差し支える状況が生まれつつあることを示すものだ。
もっとも、ITの導入が日本経済の救世主になるかどうかについては、慎重な見方
も示されている。というのは、現在の状況は、(1)技術を利用した新規参入者を締
め出す規制の存在(2)電子商取引での税制上の問題(3)ビジネスモデルへの特許
のあり方(4)割高な通信接続料など、普及には制度上の改革が不可欠な課題が横た
わっているからだ。
しかし、これらを解決し、企業の環境を整備さえすれば、よいというわけではない。
IT導入の成否を握るのは、あくまでそれを利用する個々の企業にかかっている。こ
の点で、米商務省のリポート「デジタル・エコノミー二〇〇〇」は興味深い指摘をし
ている。
○導入で生産性低下も
そこでは、企業がITを導入した場合の効果について、同時に分権化などの組織的
な改革を行うかが重要なポイントと、強調している。具体的な検証事例として、マサ
チューセッツ工科大学のブライニョルフソン教授らが、ITを導入した企業の効果を
計測した分析結果を挙げている。分析は米企業三百六十七社を取り上げ、(1)IT
導入と企業の分権化の両方が高度に進んでいる企業(2)導入したものの分権化を進
めない企業(3)IT導入は進んでいないが、分権化は進んでいる企業(4)双方と
も進んでいない企業四つに分類して、その生産性を計測した。その結果、IT導入の
効果が高い順は、(1)、(3)、(4)、(2)となっている。しかも、(4)と
(2)は生産性はマイナスと悪化している。
ここでの結果は二つの興味深いことを示している。まず、(1)の企業の効果が高
いのは想定しやすいが、権限をきちんと、現場や担当部署にまでおろすなどして分権
化していれば、ITを導入しなくとも生産性を高められることを物語っている。さら
に、生産効率を上げるためにITを導入したにもかかわらず、分権化がなければ、か
えって逆効果を招く結果になる、と警告している。要はITは「機械の箱」で、それ
に命(付加価値)を吹き込むためには、企業の自助努力が必要である。外部環境のお
ぜん立てだけでは、プラスの効果は生まれないわけだ。
ここで企業の分権化というのは、企業が有効に活用できる意思決定のプロセス、組
織体制になっているかである。単に、パソコンを何台設置したとか、インターネット
やメールを導入したとか、どれだけの金額を投資したかではない。ITを企業内の中
心戦略と位置づけ、それを生かすための組織上の改革を断行したのかどうかが、問わ
れる。企業の意思決定を行う企画部門などが、投資の決済などだけで、導入に理解し
ていない場合には、効果は期待できないのは、言うまでもない。
また、当初、電子メールなどの導入で、現場と経営中枢がつながり、中間管理職は
不要になると言われたが、実際はそうではない。期待されたのは、電子媒体を通じて
経営トップと直接に意思が共有化され、決済などが円滑に行われることであった。相
変わらずの「ハンコ」禀議(りんぎ)方式が中心では、電子メールは業務以外のツー
ルとなっている場合が多い。「お隣の企業が導入しているから当社も」といった思い
つきだけで、経営改革を怠れば、生産性の低下を招き、いつかは、危機を招くことに
なる。
○不可欠な検証データ
ただ、日本の現状は、ITがどの程度、生産性の上昇に貢献したのか、そうした分
析データはほとんど整備できていない。政府はネット構築などのインフラ整備への戦
略に重点を置いているが、それがどの程度機能しているのかは検証できていない。日
本はまず、データを整備し、効果を検証することから、始めなければならない。
*
こまき・やすゆき ニッセイ基礎研究所主任研究員 関西学院大学卒、筑波大大学
院修了。86年日本生命保険に入社。94年から現職。専門は景気循環とマクロ経済
の実証分析。38歳。
◆000019 (T001110M02--04)
IT基本法案が衆院を通過 雇用対策盛り込む
2000.11.10 東京朝刊 2頁 2総 (全204字)
日本型情報技術(IT)社会実現に向けて基本理念や基本計画を定めた「高度情報
通信ネットワーク社会形成基本法案」(IT基本法案)が、九日の衆院本会議で、自
民、公明、保守の与党三党と、民主党などの賛成多数で可決され、参院に送られた。
民主党が同日の衆院内閣委員会で、情報社会が進むことで生まれる失業などの雇用問
題について「適確かつ積極的に対応しなければならない」とする条文を盛り込む修正
を要求。与党側が受け入れた。
◆000018
(T001110E02--10)
中央省庁再編に伴う民間人登用、法案が通過 参院
2000.11.10 東京夕刊 2頁 2総 (全214字)
来年一月の中央省庁再編に伴って、専門的な知識をもつ民間人を高額の給与で登用
するための任期付き任用法案が十日の参院本会議で、自民、公明、保守の与党三党の
ほか、民主、社民両党などの賛成で可決され、参院を通過した。参院で先に審議され
ていたもので、同日中に衆院に送られる。共産党は反対した。
この日の参院本会議では、前日衆院を通過した「高度情報通信ネットワーク社会形
成基本法案」(IT基本法案)の趣旨説明と質疑も行われ、審議入りした。
◆000017
(T001020M02--07)
革命の主役は消費者だ IT基本法(社説)
2000.10.20 東京朝刊 2頁 2総 (全1141字)
景気回復を支える政府の経済対策が決まった。新鮮味を出すため、情報技術(IT)
という言葉がちりばめられている。
その方向を法律で確認するかのように、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本
法」という長い名前の法案が閣議決定された。いわゆるIT基本法案である。IT革
命を推進するために、政府が今後取り組む課題などが盛り込まれている。
基本法と銘打つからには、IT革命によってどんな社会をつくろうとするのか、国
民はどんな利益を享受するのか、といった構想がほしい。
二十一世紀に向けた社会のありようが描かれて初めて、政府がすべきこと、民間に
まかせるべきことがはっきりとする。
残念ながら、基本法にはそうした視点が不十分だ。たとえばインフラについての考
えかたである。
基本法案は、今後重点を置く分野として「世界最高水準の高度情報通信ネットワー
ク」をあげている。郵政、建設、農水省などが、来年度予算で競い合って、光ファイ
バー網の整備の予算を要求している。
しかし、光ファイバーは、すでにNTTや民間各社が日本全国にかなり張り巡らせ
ている。こうした投資は基本的に民間の仕事だろう。なかには、橋や農道などに代わ
って、公共事業を確保するために、ITの看板を掲げた事業も少なくないのではない
か。
インフラ整備として、政府が力を入れなければならないのは、教育の充実やルール
づくりだと思う。
電子商取引をはじめとする新しい取引についてルールや罰則を決めるとともに、そ
うした取引にかかわる消費者の保護が大事な課題だ。人々が安心してネットワーク社
会のなかで活動できるかどうかが、IT革命の成否を握っているからである。
その点でいえば、基本法案が、電子商取引の促進にからんで「消費者の保護」にふ
れているだけなのは納得がいかない。
基本法制定に関連して、政府は証券取引法や旅行業法など五十の法律を改正すると
いう。取引の際に書面の交付や署名・押印を義務付けている規定を改め、電子メール
などを通じた契約や通知も認めるものだ。
こうした手直しに追われて、消費者保護がおろそかになることが心配だ。それが後
手に回っている金融自由化の経過を、IT革命で繰り返してはならない。
もちろん、消費者も新しいネットワーク時代の知識と自己防衛を学ぶ姿勢が必要だ
ろう。インターネットは、国境を超えた自由な空間のなかで発展してきた。それだけ
に自己責任を求められる面も多いことを認識しなければなるまい。
IT分野の技術は日進月歩であり、次々に新しい産業やサービスが生まれる。新し
い法律をつくったとしても、政府のできることには限界がある。
ITをてこにした新しい社会づくりは、「官」依存から脱し、その知恵や創意を発
揮する企業や個人が主体になる。
◆000016
(T001018M11--02)
IT推進50法案を一括改正へ 対面義務緩める 20日に閣議決定
2000.10.18 東京朝刊 11頁 1経 (全1029字)
政府は、電子商取引など情報技術(IT)の民間利用に弾みをつけるため、取引の
際に書面交付や対面販売、署名・押印を義務づけている法律上の規定を改正し、電子
メールなどによる契約や通知も認める一括処理法案を、二十日の閣議で決定する。改
正される法律は、証券取引法や旅行業法、訪問販売法など五十種類にのぼり、IT推
進の理念をうたったIT基本法案とともに開会中の臨時国会で成立をはかる。施行は
来年四月の見通しで、IT社会実現に向けた具体的な規制緩和策の第一弾となる。
政府は七月に、IT戦略会議(議長・出井伸之ソニー会長)を設置し、IT推進へ
の具体策の検討を続けている。書面交付や対面販売、署名・押印の義務規定は、経済
界などから、電子商取引の拡大の妨げとなっているとの指摘が強く、首相も早急な見
直しを指示していた。
署名などの義務規定がある法律は全部で百二十四本あるが、国際条約などの取り決
めで簡単に改正できないものや、消費者保護などの点から改正すると法律の根幹にか
かわるものを除いた五十本を、まず改正することになった。
訪問販売法では、予約金を受け取って通信販売する場合、通販業者が契約内容など
の承諾書面を消費者に送ることを義務づけているが、改正で、電子メールによる連絡
が可能になる。
旅行業法では、旅行会社に対し、窓口販売の際にパック旅行の契約書面を示したり、
電話による説明の場合には書面を郵送したりすることを求めているが、利用者がイン
ターネットや携帯電話用のホームページなどを通じて申し込んだ場合でも、正規の契
約と見なされるようになる。こうした改正で、事業者や消費者の負担を軽減し、電子
商取引市場を活性化する狙いだ。
政府は「民間取引に関する規制のうち、さしあたり電子化できるものはすべて盛り
込んだ」としている。ただ、当面は、電子メールなどによる契約の承諾や通知は、利
用者が合意した場合に限り、書面による交付や対面販売も引き続き行われるため、事
業者の負担が増えるとの指摘もある。
また、一般企業の株主総会の招集や議決権行使などを電子化するためには、商法の
改正が必要だが、現在の法務省のスケジュールでは早くても二〇〇二年からの実施に
なりそうだ。
政府は、今回の一括処理法案に引き続き、超高速インターネット網への集中投資、
電子政府計画の前倒し、学校教育のIT化による人材育成、などについても具体的な
実現目標を盛り込んだIT国家戦略を年内に策定し、順次実現を図る方針だ。
◆000015
(T001017M11--01)
縦割り社会、ITで横に IT戦略会議・出井伸之議長に聞く
2000.10.17 東京朝刊 11頁 1経 写図有 (全850字)
政府のIT(情報技術)戦略会議議長の出井伸之ソニー会長=写真=は、朝日新聞
記者とのインタビューで、政府のIT戦略の進め方に苦言を呈した。主なやりとりは
次の通り。(2面参照)
――IT革命に伴い競争の敗者など、陰の部分も出てきます。
「ITが進めば新しい格差は生まれるが、このままでは国そのものが格差を付けら
れる。日本が遅れたのは、技術が悪いのではなく、制度でタテに分断されているから
だ。タテ割り社会を、ITで横につなげないといけない。例えば、光ファイバー敷設
は進んでいるが、建設省やNTT、東京電力などがそれぞれ持っている。それをみん
なで使えるようにすることだ」
――しかし、通産、郵政両省の統合などの制度論には踏み込んでいません。
「それを言い出すと、制度改革まで何もできない。いまは緊急事態で、今の制度で
できることから対応すべきだ。自民党もジャーナリストも、森(喜朗首相)さんをか
らかっている場合ではない。短期間に細かいことだけやり、優先順位をつける。IT
基本法をなんとしても通してもらう」
――米国は郵政省の役割の見直しを求めています。
「日本のように規制官庁と政策官庁が同居しているのは、非常におかしい。米国の
ように委員会方式にするのも現実的ではないが、いずれ挑戦すべきだろう」
――今年度補正予算案の目玉もIT関連ですが。
「ITは補正でやるうちはうまくいかない。(当初予算の段階で)伝統的なものに
割り振られ、比率も決まっている。共通インフラではなく、地域振興だとか、個別に
カネを使ってきた。一時代前の予算の建て方だ」
――IT講習券の不要論も唱えましたね。
「今、ITを使っている人には無意味だ。発想自体が理解できない。ITのために
振興券使うというのは、あまりに政治家的な発想なんじゃないの。私は生理的にいや
ですけれどね」
――NTT問題をどう取り上げますか。
「NTTの制度論にはさわらないが、料金の高さには文句を言っている。NTTの
存在を真っ向から否定することは会議の目的ではない」
◆000014
(T001017E02--07)
「IT戦略」にネット普及率など数値目標視野 中川官房長官
2000.10.17 東京夕刊 2頁 2総 (全286字)
中川秀直官房長官は十七日午前の記者会見で、政府のIT(情報技術)戦略会議が
来月発表する「IT国家戦略」の中で、超高速インターネットの普及率など、具体的
な数値目標を盛り込むことについて、「数値目標も視野にあっていいことだと思う。
今度の補正予算案でも、いまの普及率を欧米並みの水準に持っていく方法はないか、
という議論をした。様々な対策を考えていくが、あり得る話だと考えている」と述べ、
数値目標の設定に前向きな姿勢を示した。
また政府は同日、日本型のIT社会実現に向けて基本理念や基本計画などを定める
「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案」(IT基本法案)を閣議決定した。
◆000013
(T001011M04--07)
期限定め重点計画作成 IT基本法案の全容判明
2000.10.11 東京朝刊 4頁 政治 (全216字)
日本型情報技術(IT)社会の実現を目指し、基本理念や基本計画などを定めるI
T基本法案の全容が十日、明らかになった。「広く国民が低廉な料金で利用すること
ができる世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」を基本方針として、具体
的な目標や達成期限を定めた重点計画を作って政策を実現する、としている。首相を
本部長とする「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」の設置も盛り込んだ。
政府は来週にも国会に提出し、今国会での成立を目指す。
◆000012
(T000926M04--03)
焦点採録 代表質問・衆院25日
2000.09.26 東京朝刊 4頁 政治 写図有 (全2933字)
○民主党・無所属クラブ 鳩山由紀夫氏 大胆な歳出削減を
【経済対策】
経済再生の道は構造改革以外になく、大胆な歳出削減、規制改革、地方分権を急が
なくてはならない。財政赤字を増やし、弱い経済を温存するうえ、経済の国際的な信
用を失墜させるだけの補正予算は必要ない。
【公共事業見直し】
公共事業の三割カットなど量的削減に着手する意思はないのか。
【あっせん利得処罰法案】
あっせん利得処罰法の与党案は抜け道だらけだ。口利き依頼が密室で行われれば立
証は極めて困難で、予算や税制改正などの口利き行為は対象にならない。金庫番であ
る事例が多い私設秘書が対象外である点も見過ごせない。
【情報技術(IT)革命】
IT、ITとくり返しても、さっぱりイメージできない。今から一年間で具体的に
どんな政策をするのか。その政策で二十一世紀の日本をどんな姿にしようと考えてい
るのか。
【外交・安全保障】
東ティモールやシエラレオネの平和執行の性格を持った平和維持活動(PKO)に
も日本は責任を果たすべきか。
【憲法問題】
「はじめに憲法ありき」では時代の変化に適応できない。「日本が地域や世界の安
定のために果たすべき安全保障上の役割は」という本質的な問いに答えを出すことこ
そ、進めるべき憲法論議の道ではないか。
【選挙制度改革】
与党の党利党略丸出しだ。今回の改革は久世(公尭)前金融再生委員長への利益提
供問題に絡む自民党費肩代わり問題を選挙制度問題にすり替えた。天文学的な金のか
かる選挙を復活させる与党案は「天下の悪法」。なぜ急に選挙制度を変えなければな
らないのか。
○自民党 谷津義男氏 NTT法見直し急務
【憲法問題】
二十一世紀にふさわしい、国民のための憲法の制定が必要だ。
【IT革命】
電気通信分野における競争促進に向けた法整備が急務で、NTT法の見直しが必要
ではないか。
【公共事業見直し】
与党三党は二百三十三件の公共事業を「原則中止」とするよう政府に申し入れた。
政府は今後、どう対処していくのか。
○民主党・無所属クラブ 岡田克也氏 少年法改正、未来奪う
【外交・安全保障】
日ロ首脳会談の共同声明は、(一九九七年の)クラスノヤルスク合意を白紙に戻し、
二〇〇〇年末までの平和条約締結を断念したものだ。普天間飛行場の移設問題で沖縄
県が十五年の使用期限を設けるよう求めているが、沖縄サミット時の日米首脳会談で
は話し合った形跡がない。日本が侵略されるなどの緊急事態に、自衛隊がシビリアン
コントロールのもとで適切に活動するルールを法律として決めるのは政治の当然の責
任だ。
【少年法改正】
与党の改正案では、更生の可能性がある少年の未来を奪うことにならないか。
【政治資金】
久世前金融再生委員長への一億円の資金提供問題は、自民党と一体化した財団か架
空の党員を使った裏献金との疑いが濃厚だが、違法な行為だとの認識はあるのか。
○公明党 北側一雄氏 外国人選挙権、決着を
【あっせん利得処罰法案】
与党案は前国会で提出された野党案に比べて実効性があり、構成要件も明確だ。
【経済対策】
補正予算の構成にあたって、特例公債は発行しないことを明言すべきだ。
【外交・安全保障】
日朝国交正常化交渉には「過去の清算」や拉致問題など避けて通れない問題がある。
しかるべき時期に日朝首脳会談は不可欠だと考える。
【永住外国人地方選挙権付与法案】
歴史的事実を踏まえるならば、今世紀中の決着を図るべきだ。
◆首相答弁 特例公債、回避に努力 有事法制はぜひ必要
【経済対策】
財政は厳しい状況だが、まず経済を自律的な回復軌道に乗せるため、補正予算を編
成するなど景気回復に軸足をおく。性急に財政再建を優先させれば景気回復を危うく
しかねない。特例公債については、発行を回避するよう(補正予算の)編成過程にお
いて努める。
【公共事業見直し】
公共事業は当面は所要の額の確保が不可欠で、必要な社会資本整備に努めたい。二
〇〇一年度予算編成に向けて、公共事業を抜本的に見直し、再構築する。
【あっせん利得罪処罰法案】
解釈しだいで適用範囲が変わらないよう犯罪の構成要件を明確にし、国民の要望を
幅広く行政に反映させる政治の役割に配慮する必要があると言ってきた。与党案はこ
うした論点を踏まえたもので、十分に議論して今国会で成立することを期待し、その
結果を踏まえて適切に対応する。
【IT革命】
今国会にIT基本法案などを提出するほか、次期通常国会に向けてIT革命を本格
的に推進するための必要な法案の策定作業を急ぐ。超高速インターネットの整備、電
子政府の実現、学校教育の情報化などの課題にも目標年次を明確に定めて取り組み、
すべての国民がデジタル情報を基盤とした情報知識を共有し、自由に情報を交換でき
る日本型IT社会を実現する。NTTの在り方を含む電気通信分野の競争政策全般の
審議を踏まえて、競争政策の抜本的な見直しを行う。
【外交・安全保障】
国際社会の平和と安全を求める努力に対し、資金面だけでなく人的な面でも協力を
行うことが我が国の国際的地位と責任にふさわしい協力のあり方だ。個々のPKOへ
の参加の是非は、具体的な要請などを踏まえ総合的に判断すべきだ。
日ロ首脳会談で署名した共同声明ではクラスノヤルスク合意実現の努力継続が明確
に確認され、断念したとの指摘は当たらない。沖縄の普天間飛行場移設に伴う代替施
設の使用期限問題は国際情勢もあり厳しいという認識だが、日米首脳会談でも取り上
げた。クリントン米大統領も「十分に踏まえ、今後協議していきたい」と答弁してお
り、十分話し合いができている。
日朝国交正常化交渉では、拉致容疑問題やミサイル問題の解決に向け粘り強く取り
組む。金正日総書記と意思疎通を行うことが極めて重要で、準備が整えば日朝の首脳
が会うことも考えられる。有事法制については、ぜひとも必要な法制で平時にこそ備
えていくものと認識する。自衛隊の行動は有事の場合でも可能な限り個々の国民の権
利が尊重されることは当然だ。
【憲法問題】
憲法をめぐる議論は制約されるべきではないが、改正は世論の成熟を見定めるなど
慎重な配慮を要する。衆参両院に憲法調査会が設置され、熱心な議論が行われており、
十分に見守っていきたい。
【選挙制度改革】
現行の拘束名簿式は政党主体の選挙を目指す一方、有権者がどの候補者を当選させ
たいか意思表示ができず、選挙への関心が高まりにくい問題点が指摘されている。国
民が政治に関心をもち、政治が信頼される制度をめざし、各党、各会派で議論してい
ただきたい。
【政治資金】
自民党によると、一億円の寄付の収支は適正に処理され、自由民主会館の管理、維
持に使用された。裏献金とか違法な行為との指摘は当たらない。
【永住外国人地方選挙権付与法案】
我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題だ。すでに国会に二法案が提出されてお
り、議論の行方に注意を払っていきたい。
【少年法改正】
与党の改正案は、個々の事案や少年の特性に応じて刑事処分を含め多様な処分を用
意しており、少年の健全育成という目的に反するものではない。
◆000011
(T000922M04--10)
森首相の所信表明演説<要旨>
2000.09.22 東京朝刊 4頁 政治 (全6901字)
はじめに
平和と幸せに満ちた二十一世紀は、偶然に来るものではありません。私たちが今も
日一日、新世紀に向け努力することによってもたらされるのであります。
私は、二十世紀最後のこの国会を二十一世紀の「日本新生」の礎を築く重要な国会
にしたいと考えています。私たちは、将来への確たる展望を持って、二十一世紀への
キックオフをしなければなりません。
「日本新生」の最も重要な柱は「IT(情報技術)戦略」、いわばE−ジャパンの
構想であります。「日本型IT社会」の実現こそが、二十一世紀という時代に合った
豊かな国民生活の実現と我が国の競争力の強化を実現するための鍵(かぎ)であるか
らです。
○IT革命
IT革命を迅速に進めるため、内閣官房に、官民の人材を集めた担当室を発足させ
ました。今国会には、法制面の対応として「IT基本法案」と、民間同士の書面の交
付等を義務付けた法律を一括して改正するための法律案を提出します。IT基本法案
は、官民一体となって迅速かつ集中的に必要な施策を実施していくための基本的な枠
組みとなるものであり、早急にその整備を図ることが必要であります。来年の通常国
会に向けて、電子商取引の特質に応じた新たなルールや個人情報保護など情報化社会
の基本ルールの整備を行うべく、必要な法律案の策定作業を急ぎます。
「日本型IT社会」実現のため、早急にIT国家戦略を取りまとめます。我々の目
指すべき「日本型IT社会」は、すべての国民がデジタル情報を基盤とした情報・知
識を共有し、自由に情報を交換することが可能な社会であります。その最も基本的な
社会的基盤となるのが、音声、映像、経済情報などを数値で表した大量のデジタル情
報を、迅速かつ低価格で交換することのできる、超高速インターネットであります。
グローバルなインターネット社会においては、文字情報にとどまらない大量のデジ
タル情報を、だれもが低価格で伝達し合うことができる必要があります。その実現の
ために、しっかりとした年次目標を掲げて、民間主導の原則の下、超高速インターネ
ットの整備を図り、インターネットサービスの低廉化や利便性向上を促進してまいり
ます。五年後には我が国を世界の情報通信の最先端国家に仕上げてまいります。
近く取りまとめる経済対策ではIT革命の飛躍的推進を第一の柱とし、学校や公共
施設の高速インターネットを整備するとともに、全国民がインターネットを使えるよ
う一大国民運動を展開してまいりたいと思っています。それに必要な基礎技能習得の
ための思い切った方策を推進してまいります。
国民が利便と楽しみを得られるような情報の中身、いわゆるコンテンツの発展を目
指します。インターネット博覧会の実施はその起爆剤となるものであります。だれも
が家庭でインターネットを容易に利用でき、その楽しさと有用性を実感できる社会を
構築するとともに、ニュービジネスの創出と既存産業の活性化を通じて、より質の高
い経済社会の実現を目指してまいります。
○教育改革
二十一世紀の日本を支える子どもたちが、創造性豊かな「立派な人間」として成長
することこそが、「心の豊かな美しい国家」の礎であります。そのため、思い切った
教育改革を断行してまいります。
「教育改革国民会議」においては、人間性豊かで創造性に富む日本人の育成、新し
い時代の多様で自由な学校づくり、教育振興基本計画の策定、教育基本法の見直しな
ど教育各般にわたり議論を重ね、明日、中間報告が行われる予定です。年内に最終報
告が取りまとめられる予定であります。これを受けて、少人数授業等の実施、十分な
適性を有しない教員への対策、授業妨害やいじめへの対応、家庭教育の充実、奉仕活
動や体験活動の促進、教育委員会の活性化などの幅広い改革を実行してまいります。
来年の通常国会を「教育改革国会」と位置付け、学校教育に関する事項、公立学校
の学級編成、教職員定数の標準などに関する法改正を始め、直ちに取り組むべき課題
について、一連の教育改革関連法案を提出したいと考えております。
教育基本法の見直しについては「教育改革国民会議」の最終報告を受けて、中央教
育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりま
す。
○社会保障改革
来るべき世紀を活力に満ちた高齢社会とするため、豊かな知識、経験を有する高齢
者が意欲と能力に応じて多様な働き方ができるよう「七十歳まで働くことを選べる社
会」の実現に向けて努力してまいります。
介護が必要となった方々には本年四月から施行されている介護保険をより良いもの
に育て、自立した生活を支援してまいります。
国民の将来に対する不安を解消するためには、国民生活のセーフティーネットであ
る社会保障制度を再構築し、揺るぎないものにしていかなければなりません。今国会
に提出する健康保険法等の改正案は、安定的な医療保険制度や疾病構造の変化等に対
応した医療提供体制を築いていく上で不可欠であり、二十一世紀における医療制度の
抜本改革に向けた第一歩となるものであります。
年金、医療、介護、雇用等、生涯を通じた社会保障全般について実際に費用を負担
し、給付を受ける生活者の視点に立ち、横断的・総合的な見直しを進めていくことが
必要であります。社会保障は、長期間を見据えた設計が求められる制度であり、これ
までの経緯を十分踏まえる必要はありますが、見直しに当たって私は、リスクにはで
きる限り自ら備えをするという「自己責任の原則」に立つ必要があり、その意味で我
が国の社会保障の基本は社会保険方式に置くべきであると考えます。その上で国庫負
担等の税負担について「政策上の必要性」「制度設計における明確な公費負担の理念」
を国民に示し、広く検討していくことが肝要であると考えております。
その前提として、若い世代が将来に対して明確なビジョンを描くことができるよう
「世代間の公平」にも十分配慮し、制度間の整合性の確保や「利用者の選択や民間活
力の活用」によるサービスの多様化を始め、給付内容や制度運用の徹底した見直しと
効率化を図っていくことが重要であります。「社会保障構造の在り方について考える
有識者会議」において議論いただいておりますが、広く国民的な議論を喚起し、二十
一世紀において、社会保障全体について明確な理念の下に着実な改革が進められるよ
う努力してまいります。
○経済の再構築
〈経済対策と補正予算〉
我が国の経済を新時代にふさわしい構造に改革し、二十一世紀における新たなる発
展を確実にすることは現下の最大の課題であります。日本経済は、昨年春ごろを底に
緩やかながらも改善しつつあります。四月から六月期の国民所得統計速報によれば、
実質経済成長率は年率四・二%に達しています。企業収益は前年を大きく上回ってき
ております。景気は緩やかながら改善しているという政府の見方が誤りなかったこと
を裏付けていると言えます。
しかしながら、これをもって経済は万全と言えるわけではありません。雇用情勢は
いまだ厳しく、消費は一進一退の状況にあり、企業の倒産件数も高水準になっていま
す。
こうした状況の中、日本経済を正常な状態まで回復させるための「守りの再構築」
を完遂するとともに、安定的かつ持続可能な成長軌道に乗せるための「攻めの再構築」
を遂行していかなければなりません。
我が国経済は、古い殻を破って新しい構造に転換する真っ最中にあると言えます。
景気は今、正に勝負どころにあります。私は、景気回復に軸足を置き、未来の発展に
視線を据えて、断固たる決意で経済政策を進めてまいります。
近くまとめる経済対策の主眼は我が国経済を量的拡大志向から夢と安心と個性が沸
き立つ世の中に変えることであります。この眼目はIT革命の飛躍的推進、循環型社
会の構築など環境問題への対応、少子高齢化対策及び便利で住みやすい街づくりなど
都市基盤の整備の四分野にあります。
景気の自律的回復に向けた動きをより確かなものとし、この経済対策を実現してい
くため、地域の動向にも細かく目配りしつつ、経済対策関連について総額三兆円台後
半の補正予算を編成することを決定しました。歳出・歳入の見直し、平成十一年度決
算剰余金の活用などにより、国債の追加発行を極力抑制するよう努めてまいります。
〈平成十三年度予算編成と公共事業の見直し〉
平成十三年度予算については、景気を本格的な回復軌道に乗せるという考え方を維
持しつつ、財政の効率化と質的改善を図るため、私自らがリーダーシップを発揮し、
新たに発足させた財政首脳会議を中心として今後本格的に取り組んでまいります。総
額七千億円の「日本新生特別枠」において「日本新生プラン」の重要四分野等を推進
し、公共事業の抜本的な見直しに取り組むなど、中央省庁改革を好機として、施策の
大胆な見直しと効率化を進め、公債発行額をできる限り圧縮し、新世紀にふさわしい
予算となるよう全力を尽くす所存であります。
公共事業の見直しについては、与党三党で合意がまとめられました。これを重く受
け止め、「公共事業ビッグバン」とも言うべき抜本的見直しを進め、二十一世紀にふ
さわしい「真に国民のためになる公共事業」を実現してまいります。中止すべき事業
は中止するなどの厳しい洗い直しをするとともに、受益と負担の明確化、事業評価シ
ステムの確立、入札・契約制度の改革を進めつつ、「日本新生プラン」四分野への思
い切った重点化や事業間の連携を推進してまいります。
また、公共事業に対する国民の信頼を高めるため、公共工事の入札・契約手続きの
透明性、競争性の向上等を図る、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法
律案を今国会に提出いたします。
財政構造改革は、二十一世紀の我が国経済・社会の在り方と切り離しては論じられ
ない課題であります。我が国の財政は厳しい状況にありますが、経済が自律的な回復
軌道に乗る前に、性急に財政再建を優先させれば、景気回復を危うくさせることにも
なりかねません。柔軟な財政刺激政策を行い、経済を正常な状態に回復させるための
限定的な範囲で財政投入を行ってまいります。同時に、財政が将来も持続可能な仕組
みを作り上げるための準備は今から始めなくてはなりません。財政の透明性の確保を
図り、効率化と質的改善を進めながら、我が国の景気回復をより確かなものとし、そ
の上で税制の在り方、社会保障の在り方、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れ
て、取り組んでまいります。
〈経済構造改革の推進〉
二十一世紀に向けて、我が国が力強い経済成長を達成していくためには、企業経営
のダイナミズムを確保するための制度改革の推進、多様な雇用形態を踏まえた労働市
場の発展、創造的技術開発のための環境整備などの思い切った経済構造改革に取り組
むことが不可欠です。「産業新生会議」における議論を踏まえ、企業法制の見直しや
企業年金・資金調達・雇用システムの在り方等、経済構造改革の具体的な行動計画を
年内に取りまとめるとともに、緊要性の高い政策課題については迅速に対応してまい
ります。
平成十四年三月末のペイオフ解禁を控え、預金者及び市場等から信頼され、揺るぎ
ない金融システムを再構築するよう、最大限の努力を行ってまいります。
○社会システム再構築
中央省庁改革が来年一月に迫りました。二十一世紀にふさわしい行政システムを構
築する歴史的な改革を真に実効あるものとするため、全力を尽くしてまいります。国
・地方を通じ、行政に民間の知見を導入していくことは重要であります。政府として
は民間の方々の専門的な知識や経験を積極的に活用するため、任期付き採用制度に関
する法案を今国会に提出します。
来年三月には新しい「規制改革推進三カ年計画」を策定する一方、基礎的自治体の
在り方も視野に入れた地方分権の推進、特殊法人等の見直しに積極的に取り組み、年
内に行政改革大綱を策定いたします。国民本位の効率的で質の高い行政の実現のため
に来年一月に導入される政策評価制度を円滑に実施するとともに、その法制化も次期
通常国会への法案提出を目指し、検討を進めてまいります。
司法制度改革についても二十一世紀の国民社会・経済にとって重要な基盤として、
司法制度改革審議会での議論を踏まえ、積極的に対応してまいります。
警察をめぐる不祥事が続発したことを受けて、国民の警察に対する信頼を回復する
ため、警察法の改正案を今国会に提出し、警察行政の透明性の確保、国民の要望や意
見への誠実な対応、時代の変化に対応する柔軟で強力な警察活動基盤の整備など、警
察の刷新改革に全力を挙げて取り組んでまいります。
少年法改正については、現在、与党において、少年の健全育成や悪質な少年犯罪の
防止という観点から、刑事処分を可能とする年齢の引き下げや事実認定手続きの一層
の適正化等について議論が進められていますが、政府としても、この結果を受けて適
切に対処してまいります。
国民の政治に対する信頼を高めるためにも、政治倫理の確立に向けた取り組みには
一刻の猶予もありません。政治家一人一人が自覚すべきは当然でありますが、政治倫
理の一層の確立を図るため、あっせん利得をめぐる法的措置について今国会において
十分議論し、結論を出していただきたいと考えております。
参議院の選挙制度改革や永住外国人に対する地方選挙権の付与についても、同様に
ご議論を進めていただきたいと考えております。
○日本外交
日米安保体制は、アジア太平洋地域全体の平和と安定に寄与するものであり、その
信頼性の向上に努めていくことが重要です。在日米軍駐留経費負担に係る特別協定の
署名がなされたところですが、できる限り速やかに国会でご審議の上、その締結につ
きご承認いただきたいと考えます。沖縄県民の負担を軽減するべく、引き続きSAC
O(日米特別行動委員会)最終報告の着実な実施に全力で取り組みます。普天間飛行
場の移設・返還については、沖縄県及び地元地方公共団体との間の代替施設協議会等
において、できるだけ早く成案を得るべく努力してまいります。
今月三日から五日にロシアのプーチン大統領が訪日され、本格的な平和条約交渉を
行うとともに、経済分野の協力や国際問題について胸襟を開いて話し合いました。平
和条約についてはこれまでの両国間のすべての合意に依拠しつつ、四島の帰属の問題
を解決することにより平和条約の締結を実現するため、交渉を継続することで一致し
ました。大統領との間で培った信頼関係に基づき、私の訪ロも視野に入れつつ、引き
続き平和条約の締結に向けて全力を尽くしてまいります。
朝鮮半島情勢については六月の南北首脳会談後も前向きな動きが継続しており、緊
張緩和に向けた胎動が見られます。これを確実な流れにしていくため、米韓と緊密に
連携しながら、北東アジアの新時代の到来に向け、全力を傾けてまいります。日朝関
係についても国交正常化交渉に粘り強く取り組むとともに、人道上の問題や安全保障
上の懸案の解決に向け、全力を傾けてまいる考えであります。明日から、金大中大統
領が訪日されますが、こうした朝鮮半島情勢の新たな展開について率直かつ緊密に議
論するとともに、日韓関係の更なる発展と幅広い交流に向けた意見交換を行い、信頼
関係を一層強固なものとしてまいります。
我が国と中国との関係はアジア太平洋地域の安定と繁栄にとって重要であり、両国
間の懸案について率直に議論するとともに大局的見地に立って取り進めていくことが
必要であります。来月には、朱鎔基総理の訪日が予定されていますが、中国との間の
友好協力パートナーシップの一層の進展に努力してまいります。
防衛力整備に関しては今年度で終了する中期防衛力整備計画に引き続く、新たな防
衛力整備計画を策定する方向で検討してまいります。有事法制は、自衛隊が文民統制
の下で、国家国民の安全を確保するために必要であると考えております。法制化を目
指した検討を開始するよう政府に要請するとの先般の与党の考え方をも十分に受け止
めながら、政府としての対応を考えてまいります。
○21世紀へ
二十一世紀の世界には、決して順風満帆の将来が約束されているわけではありませ
ん。IT化の進展によって、ますます国境の意味が希薄なものとなる一方、政治や経
済問題の伝播(でんぱ)のスピードは格段に上昇し、持てる者と持たざる者との格差
は一層拡大しているのが現状です。我が国は果敢にこれらの課題に挑戦していく決意
です。
私は今、政権という「重いボール」を持つことになって、若き日に興じたラグビー
を思い出します。私は国民の皆様とスクラムを組んで、あらゆる困難を乗り切って、
「日本新生」のゴールポストを目指して走り続ける覚悟であります。
*
所信表明の全文は、アサヒ・コム(www.asahi.com)に掲載していま
す。
◆000010
(T000922M04--01)
求心力の維持に躍起 言葉躍り、内容生煮え 森首相の所信表明
2000.09.22 東京朝刊 4頁 政治 写図有 (全1017字)
小渕政権からの継承を強調するあまり「カラーがない」と言われ続けて半年。森喜
朗首相も、そろそろ本格的に政権の課題をアピールしたいという思いがあるのだろう。
情報技術(IT)革命と教育改革という二枚看板が、所信表明演説全体の三分の一を
占めているところからも、それがうかがえる。ただ、その内容はまだ生煮えで、今度
の臨時国会では主要テーマにはならない。それでも訴えるのは、何か看板を掲げ、
「この政権でやりたい」と主張していかなければ、来年夏の参院選までに政権の求心
力を失いかねないという事情が透けて見える。(伊藤宏)=1面参照
演説は、冒頭からIT革命を唱え、「IT国会」と錯覚しそうな力の入れようだ。
続けて教育改革を訴え、来年の通常国会を「教育改革国会」と位置づけた。今国会は
IT、通常国会は教育をテーマにし、教育改革などを掲げて夏の参院選に臨みたい。
首相やその周辺が描いている青写真を反映した構成になっている。
しかし、演説では「IPバージョン6」など首相自身もよく理解していない専門用
語が躍った。今国会にかかる法案はIT基本法案など三本だけで本格的な法整備は来
年以降だ。与野党がITをめぐって激論を交わす場面は、ほとんど見られないだろう。
教育改革は、教育改革国民会議が二十二日に中間報告をまとめるだけで、今国会では
関連法案は出てこない。
与党三党は、六月の総選挙で大幅に議席を減らし、自民党内からも「森首相では参
院選が戦えない」という声があがった。しかし、主流派は「森支持」を唱え、党内的
には今、首相交代を求める大きな動きはない。「低空でも安定飛行」の状況だ。
それでも、内閣支持率が低迷を続け、政策でも目立った成果がなければ、首相への
不満がいつ噴き出してきてもおかしくない。来年に向けた政策課題を今から示してお
かなければ、常に「失速」する危険をはらんでいるのだ。
今国会は、あっせん利得罪の創設や参院選挙制度の改革、永住外国人の地方選挙権
付与法案など、与党内でも調整が難しい法案が並んでいる。こうした政治倫理や選挙
制度という政治の根幹にかかわる問題については、「国会でご議論を頂きたい」と繰
り返しただけだった。
首相独特の与党への気配りもあるだろうが、ITや教育については雄弁に語った一
方で、直面する重要問題について自分の言葉で語らないのであれば、「所信」として
寂しい。
【写真説明】
衆院本会議で所信表明演説をする森首相=21日午後
◆000009
(T000919M04--01)
ITバブル 自民の若手中心に「族」も台頭 省庁は既得権益確保に
2000.09.19 東京朝刊 4頁 政治 写図有 (全1613字)
自民党を「IT」が席巻中だ。情報技術(IT)は森喜朗首相の「日本新生プラン」
の目玉。議員連盟や勉強会が続々と誕生し、若手議員を中心に新たな「IT族」が台
頭しつつある。来年度予算編成に向け、関連予算の獲得競争に走る各省庁の官僚たち
が自民党に押し寄せ、「ITバブル」(閣僚経験者)の様相も。来年1月の中央省庁
再編をにらみ、新たな利権を求めて動く政治家たちと、既得権益の確保に動く官僚た
ち――それぞれの思惑が交錯する。(秋山訓子)
●「メシの種」
通産省の課長は、目を疑った。
七月下旬、自民党情報産業振興議員連盟の下に「IT小委員会」(細田博之委員長)
が発足した。「ITについて説明を」と求められ、自民党本部に出かけたら、会議室
は議員であふれ、席が足りないほど。
「これまでは議連でも数人の出席がやっとだったのに」「ITが『メシの種』にな
る、という政治家の熱気をひしひしと感じた」と課長が驚きを語る。
六月の総選挙後、亀井静香政調会長の肝いりで旗揚げした「自民党IT対策戦略チ
ーム」の座長で、IT小委員会にも名を連ねる山口俊一代議士が言う。「これまでオ
タクの趣味の世界と見られていたITが、急に表舞台に出た」。細田氏や山口氏らは
九月中に「自民党IT議員連盟」を発足させる準備中だ。
細田、山口両氏とも当選四回。「IT族」に名乗りを上げる議員が若手中心なのに
は、理由がある。
ITと関係が深い郵政省や建設省、通産省の政策決定では、橋本派を軸にした郵政
族、建設族、商工族が幅を利かせており、若手が食い込むのは難しい。「でも、IT
という新分野なら、既成の『族』秩序のすき間がある」と、若手議員の一人。そこに
潜り込むことで、献金や票が期待できるというわけだ。
郵政族の若手、荒井広幸代議士(当選三回)は昨年秋、自民党SOHO(スモール
オフィス・ホームオフィス)議員連盟を立ち上げた。パソコンを使って自宅などで仕
事をする人たちへの優遇税制導入などが活動の中心だ。
「携帯電話をインターネットにつなげば、有権者から政策や意見が直接聴けるし、
少額の寄付を集めることもできる。新たな政治の道具になりうる」
ITへの追い風も吹いている。自民党が進める公共事業の見直しだ。公共事業の定
義を拡大解釈し、建設国債を光ファイバー敷設といったIT関連予算にも充てる方策
を検討中だ。
●利権が先行
ITに熱いまなざしを注ぐのは、政治家だけではない。
八月三十一日、自民党本部。党IT対策戦略チームの会合は、概算要求の説明に押
しかけた各省庁の官僚たちで膨れ上がった。二回に分けたが、それでも収容できない
盛況ぶり。
道路や下水道管に光ファイバー収容空間(国土交通省)▽IT関連の職業訓練(厚
生労働省)▽農村部の自治体や農協に情報網を構築(農水省)……。各省庁のIT関
連予算の概算要求は、国土交通省の約三千六百億円を筆頭に、総額一兆円を超えると
みられる。
二十一日召集の臨時国会では、IT基本法案をはじめ、数十本の法改正を伴うIT
関連の規制緩和の論議がスタートする。予算獲得や法改正への後押しを求めて、各省
庁の自民党もうでは熱を帯びる。
もっとも、ITバブルには懐疑的な声も。ある省庁の幹部は「光ファイバーを敷け
ばいいのか。需要があるのかどうかすら検証していない。運ぶ荷物がないのに農道空
港を造るのと同じになりかねない」。
「年末にかけて、うちの町にも光ファイバーを、といった陳情が増えるだろう。ム
ダな公共事業の二の舞いになりそう」。こんな心配をする代議士もいる。
「ITと政治」の関係はいま、献金や票、予算獲得といった利権がらみの動きが先
行している。「ITという新しい道具で、有権者と政治をどうつなぐか」――一部の
代議士らが抱くそんな夢は「ITバブル」の中にのみ込まれそうだ。
【写真説明】
自民党の「IT対策戦略チーム」の会合=東京都千代田区永田町の同党本部で
◆000008
(T000919E04--05)
最高水準の通信網整備 基本理念7つ設定 IT基本法案骨格固まる
2000.09.19 東京夕刊 4頁 2総 (全459字)
政府は十九日、情報技術(IT)社会の実現に向けた「高度情報通信社会形成推進
基本法案」(仮称)の骨格を固めた。「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの
整備」を基本方針に据え、具体的な目標と期限を区切った重点計画を策定。首相を本
部長とする「高度情報通信社会推進戦略本部」を内閣に設置することなどを盛り込む。
二十一日召集の臨時国会に提出する。
法案は「すべての国民がITの成果を享受できる社会」「新たな経済取引の普及、
新規産業の創出」など七つの基本理念を設定。基本方針として「ネットワーク整備」
のほか、(1)国民の情報技術への教育・学習の振興、専門家の育成(2)情報技術
社会の推進を阻害する規制の見直し、電子商取引の促進(3)行政の情報化、電子政
府・自治体の推進(4)個人情報の保護――などを掲げた。
重点計画では予算措置、法整備などを具体的に盛り込み、計画の達成状況を公表す
ると明記。戦略本部は関係閣僚を副本部長として置き、学者ら民間の有識者を積極的
に任命する、としている。成立すれば来年一月に施行、三年ごとに見直す。
◆000007
(T000914M14--01)
IT評価の「思惑」(記者ノート)
2000.09.14 東京朝刊 14頁 オピニオン2 (全824字)
「ネットでワインが買えます」「携帯電話でゲームをしませんか」「日本最大級の
転職情報サイトのご案内」。デジタル編集部のファクスは、毎日、毎日、こんな書類
を吐き出している。インターネット関連の新しい企業から、記事化を求める売り込み
だ。机はこうした書類で埋め尽くされ、アドレスを教えた相手からは、電子メールで
も情報が寄せられる。IT(情報通信技術)ブームを、肌で感じる日々が続いている。
ただこのブーム、急に高まっただけに、世間のITへの見方は「過大評価」気味か
ら「過小評価」まで少々極端な感じがする。ネット販売がいずれ対面販売にとって代
わる、という人がいるかと思えば、「ITなんて使えなくても困らない」という声も
ある。
「過大評価」しているように見えるのは政府だ。IT基本法の制定やIT教育の拡
充、インフラ整備を打ち出している。ベンチャー企業や投資家、コンサルタントらも、
「過大評価」組。雇用が10万人以上純増するとか、ダイヤモンドでも今後は現物を
見ずに買うとか。24時間どこでも仕事ができ、生産性はさらに上がる、とも。
一方で、「過小評価」する声は年配の会社員や営業マンからよく聞く。新しい技術
についていけなければ職場を追われる。他人が起業、株式公開して巨額の金を手にす
ることへのやっかみもあるかもしれない。IT教育を引っ張るはずの教員の中にも、
ITと距離を置く傾向を感じる。「ITなんて使いにくい」という反発に回りがちだ。
どちらにも「思惑」がある。「過大評価」側には支持率や株価の上昇。「過小評価」
組は、自らの立場を脅かすITの導入を遅らせること。
産業の発展への「評価」はあとからついてくるはずだ。だが、ITは未来型産業で、
世間の評価によって業績や株価が大きく左右される。評価のぶれは、IT企業の健全
な成長、自然な衰退を妨げる恐れが多分にある。
ITは生活を便利にする道具にすぎない。思惑で振り回すものではない。
(デジタル編集部・小倉一彦)
◆000006
(T000831M11--03)
「5年で米超えよ」超高速インターネット整備 IT戦略会議が方針
2000.08.31 東京朝刊 11頁 1経 (全897字)
政府の「IT(情報技術)戦略会議」と「IT戦略本部」の合同会議が三十日、首
相官邸で開かれ、戦略会議の出井伸之議長(ソニー会長)が「五年以内に米国を超え
る超高速インターネット大国」を目指すという基本方針を示した。同会議は日本独自
のIT国家戦略を年内に策定する方針を決めた。
出井氏は米国を超えるための具体的な方針として、(1)超高速インターネット網
への集中投資(2)電子商取引の障害となっている規制の撤廃と新しいルールの整備
(3)電子政府の実現(4)学校教育の徹底したIT化による人材育成――の四点を
提示した。IT国家戦略については、まず会議内に起草委員会を設け、草案をまとめ
ることにした。
一方、政府側は電子商取引に関連して、民間の商取引の際に書面交付や対面販売、
署名・押印を義務づけている法律が計百二十四本あることを報告した。
このうち対面販売を義務づける三十八本の法改正に加え、IT革命に取り組む政府
の基本姿勢を示す「IT基本法」を、九月下旬に見込まれる臨時国会に提出する方針
を説明した。
○整備は官?民? 意見分かれる
三十日に開かれたIT(情報技術)戦略会議では、五年以内に米国を超える超高速
インターネット網の整備を進める方針に委員の多くが賛同した。電話や放送といった
通信インフラに比べて高速インターネット網の整備が遅れていることを痛感している
ためだが、「整備の主体は国か民間か」という議論では意見は分かれたままだ。
福井俊彦・富士通総研理事長が超高速インターネット網の整備主体について、「国
が引くのか民間が引くのか」と問題を提起。「民間が自由競争の中で達成すべきだ」
(岸暁・東京三菱銀行会長)、「民間のエネルギーでやっていくべきだ」(今井賢一
スタンフォード日本センター理事長)という意見が相次いだ。
一方、梶原拓岐阜県知事は「自治体も基盤整備を進めており、公共事業の有効活用
を考えるべきだ」と、国の役割を強調した。
出井議長は「超高速インターネットのインフラ整備は高速道路のようなもの。民間
だけとか国だけとかいうわけにはいかない。民と官の協力で進めていくべきだ」と議
論を引き取った。
◆000005
(T000831M02--01)
ITなら何でもありか 概算要求(社説)
2000.08.31 東京朝刊 2頁 2総 (全1153字)
▽国土交通省 光ファイバー網の整備二千五百十九億円などIT(情報技術)関連
三千六百四十二億円
▽労働省 IT対応の職業能力開発 二百五億円
▽通産省 IT経済への構造改革の推進 百一億円
▽文部省 IT授業などのための新世代型学習空間の整備 百五十一億円
▽農水省 農林水産業・農山漁村IT推進プロジェクト 百六十九億円
「IT革命の推進」を唱える森喜朗首相に呼応したのか、この二文字をつければ予
算が取れると踏んだのか。来年度予算の概算要求は「IT」ラッシュである。
ITが、これからの経済社会の発展の担い手の一つになることは間違いあるまい。
しかし、だからといって、IT推進で国はどんな役割を果たすべきか、予算をどの
分野につぎ込むべきか、といった議論をせずに、ぶんどり合戦やばらまきをしたら、
無駄な公共事業の二の舞いになるだろう。
例えば、国土交通省の光ファイバー網である。来年一月の中央省庁再編で、建設、
運輸など四省庁が統合され、国全体の一般公共事業予算の約八割を占めるようになる。
IT予算の獲得でも、他の省庁を圧倒しようというのか、道路、河川や下水道に高
速インターネットも可能な光ファイバー網を張り巡らせる計画を立てた。
もともと防災や道路の管理などが狙いだったが、下水道はビルや家庭にもつながっ
ているから、用途は広げられるという。しかし、光ファイバー網は民間の手で投資が
進んでいる。民間との分担や事業の運営などについて、現実的に考えたうえの要求だ
ろうか。
農水省もそうだ。農村に光ファイバーを引き、ため池や水路を監視したり、土地改
良のデータをやり取りしたりする、という。いったい、そうしたことに大容量の通信
網が必要なのだろうか。
森首相はこの秋の臨時国会で、IT基本法案を成立させたい考えだという。民間の
投資や電子商取引を促すための規制緩和や、消費者保護などが目的なら結構だが、I
T名目の公共事業にお墨付きを与えるのでは困る。
米国では、政府が提唱した「情報スーパーハイウエー構想」が、IT革命を引っ張
った。しかし、政府は基本的には規制緩和などで誘導しただけで、資金的には民間の
投資が主体だったことを忘れてはなるまい。
IT騒ぎの陰で見過ごせないのは、優先度の点で疑問の多い、整備新幹線向けの千
五百億円の要求である。今年度当初予算の四倍を超す額だ。
整備新幹線の要求の大部分は、与党が配分を決める「生活関連等重点化枠」に盛り
込まれている。はたして削れるだろうか。
来年度予算をにらむ一方で、森首相は今年度の補正予算を早期に成立させる意向も
示している。こちらもITが主役のひとつだ。
「景気のためなら何でもあり」が、「ITなら何でもあり」に入れ替わるだけでは、
財政の傷口は広がるばかりであろう。
◆000004
(T000830M13--02)
下水道も道路もIT 来年度予算の概算要求
2000.08.30 東京朝刊 13頁 1経 (全1701字)
各省庁が二十九日までにまとめた二〇〇一年度予算の概算要求には、森喜朗政権が
目玉に掲げる「IT(情報技術)」の二文字が目白押しだ。
●一気に6.5倍
下水道に大容量の光ファイバー網を張り巡らす――中央省庁再編で「国土交通省」
となる建設省は、こんな計画を打ち出した。元々は、下水の流量や水質を測定するた
めの事業。「末端の家庭まで延ばせば一般通信にも使える」と触れ込み、来年度に向
け一気に六・五倍の予算を要求した。
建設省は、遠隔医療や教育、福祉、防災などへの活用を強調するが、用途などを検
討する「IT都市基盤戦略委員会」は今月初め、やっと初会合が開かれただけ。同省
道路局も運輸省、警察庁などと国道に光ファイバーを通す別の事業を進めている。
農村に光ファイバーを引く構想もある。農地のデータを行政や農協が共有し、ため
池や水路などを二十四時間遠隔監視して災害防止に役立てる、という。農水省は、
「デジタル・デバイド」(情報の格差)の解消を前面に出す。
だが、「何も出さないと『知恵がないのか』と、官邸に言われそうだから」と幹部
は漏らす。建設、農水両省にとって、道路や土地改良に代表される従来型の公共事業
に批判が強まるなか、ITは公共予算の格好の振り向け先だからだ。
労働省が掲げる「IT能力開発百万人」。在職者や離職者から就職浪人や主婦ら計
百万人に、パソコン訓練や学習の場を設ける。
省内では百万人という数字がまず浮上した。能力開発の内容は、五月に緊急雇用対
策で打ち出したばかり。数字だけでも膨らませて新味を出そうとしたのが真実のよう
だ。
●会議は1度
「ITを神風として、経済新生につながる景気回復策を考えるべきだ」
森喜朗首相は二十四日、訪問先のニューデリーで記者団にこう語った。発足来、九
州・沖縄サミットや景気対策など小渕政権の「残務処理」に追われた森政権にとって、
ITは新味を打ち出せる数少ないテーマだ。支持率低迷に苦しむ政権の浮揚にとって、
「神風」への願望は強い。
中川秀直官房長官は二十九日、九月下旬召集の臨時国会に、国のIT戦略の基本的
な方向を示すIT基本法案を提出する方針を表明した。内閣官房のIT担当室も五十
人体制にする。
ただ、有識者を集めて鳴り物入りで発足させたIT戦略会議はまだ一度しか開かれ
ず、その前に各省庁は概算要求をすでに固めたことになる。順序は、どこかちぐはぐ
だ。
●冷たい視線
民間企業の視線は冷ややかだ。
「通信インフラの整備はあくまで民間に任せるべきだ」。公共事業による通信イン
フラ整備はこれまで何度も浮上したが、その都度、民間企業の反対で実現には至って
いない。
通信用の光ファイバー網は現在、NTTグループや新電電各社がそれぞれ敷設を進
め、今年三月末にはすでに、大都市部の商業地域の九割以上で整備が進んでいる。
一方、人口十万人未満の地方では一四%と、地域格差が広がっている。郵政省は
「民間任せでは、地方での整備は進まない」と主張、公共事業として光ファイバーを
敷設する自治体に補助金を交付することを検討している。
ただ、敷設後の管理・運営は結局、民間に委託せざるを得ない。NTTは「採算が
合わない限り、委託を求められても断るしかない」と明確に否定する。
ある外資系通信事業者は、規制を緩め、下水道や道路の側溝、地下鉄などの管路を
民間事業者に開放して、競争で通信網を整備させた方が安上がりだと主張する。
米国でも、クリントン政権のゴア副大統領は当初、官主導の情報網整備を提唱した。
ところが、通信業界は「民業圧迫だ」とこぞって反発、ケーブルの敷設から運営、保
有は民間企業の役割となり、政府は規制緩和や競争政策の促進などを通じ、インター
ネットの普及に力を注ぐことになった歴史がある。
東京大学大学院の須藤修教授(情報経済)は、国によるIT投資について「規制緩
和など環境整備を進めなければ投資が生きないし、民間のインフラを効率的に使って
やれる行政の役割もある。不便な地域にとっては、大容量の光ファイバーより、携帯
電話が確実につながる方が優先順位が高いのではないか」と話している。
◆000003
(T000830M04--06)
IT基本法案を臨時国会に提出 中川官房長官発表
2000.08.30 東京朝刊 4頁 政治 (全387字)
中川秀直官房長官は二十九日、日本型情報技術(IT)社会の実現に向けた基本理
念や基本計画などを定める「IT基本法」(仮称)案を九月下旬に召集予定の臨時国
会に提出すると発表した。電子商取引や電子政府の早期実現、教育の情報化、情報通
信分野のインフラ整備や技術開発などの基本計画や基本方針を盛り込むほか、IT社
会の実現に向けた国と地方、政府と民間の役割分担などを定めることにしている。
中川長官は「IT革命に対応して、戦略的かつ迅速に諸施策を推進するため、日本
型IT社会の基本理念や基本計画、官民の役割を明らかにする必要がある」と述べた。
基本法案の策定作業を進めるため、関係省庁から十人程度の職員を内閣官房におか
れているIT担当室に集めてスタッフを拡充するほか、郵政省の平井正夫東京郵政局
長、通産省の古田肇機械情報産業局次長を基本法担当の内閣審議官として、九月四日
付で発令する。
◆000002
(T000824M02--06)
「IT基本法案」を秋に国会提出 中川秀直官房長官が意向
2000.08.24 東京朝刊 2頁 2総 (全288字)
中川秀直官房長官は二十三日、東京都内で講演し、情報技術(IT)革命に取り組
む政府の基本姿勢を示す「IT基本法案」を秋の臨時国会に提出する考えを明らかに
した。IT関連の法改正は、できるものから一括法として臨時国会に提出し、来年の
通常国会での法改正とあわせ、二段階で取り組む方針を示した。
中川長官は、一括法に盛り込む中身として、(1)民間の電子商取引を促すため、
旅行の契約など、取引の際に書面提出を義務づけている規制の緩和(2)インターネ
ットを通じた買い物での不当な勧誘防止や一定期間内に商品購入の解約ができるクー
リングオフ制度を創設するための訪問販売法改正――などを挙げた。
◆000001
(T000724M03--07)
電子商取引の規制緩和、秋の国会に法案提出へ
2000.07.24 東京朝刊 3頁 3総 (全292字)
中川秀直官房長官は二十三日、民間の電子商取引を促すため、取引の際に書面の提
出や署名、押印、対面販売などを義務づけている規制を緩和する法案を、秋に見込ま
れる臨時国会に提出する考えを示した。フジテレビの番組で語った。政府はすでに情
報技術(IT)関連の法改正をまとめた一括法を制定する方針を示しているが、電子
商取引の規制緩和については、一括法に先駆けて取り組む。
中川氏は「政府のIT戦略会議でも、首相主導で国家戦略を出しなさい、という意
見があった。ぜひ考えたいと思っている」とも述べ、来年の通常国会にはIT革命に
取り組む政府の姿勢を示すIT基本法の提出を検討していることも明らかにした。
朝日新聞社