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動物たちの沈黙 : 《動物性》をめぐる哲学試論(エリザベート・ド・フォントネ著)

眼横鼻直(がんのうびちょく・げんおうびちょく)
Date:2020.01.01

書名 「動物たちの沈黙 : 《動物性》をめぐる哲学試論」
著者 エリザベート・ド・フォントネ 
訳者 石田 和男, 小幡谷 友二, 早川 文敏共
出版者 彩流社
出版年 2008年9月
請求番号 130.2/69
Kompass 書誌情報

私は文学を通して人間と動物の関係を研究している。近年、日本でもペットの殺処分の問題をはじめ、動物との付き合い方を見直す動きが現れている。ヨーロッパ諸国は日本に比べ動物愛護の先進国といえ、彼らから日本人が学ぶことは多い。

エリザベート・ド・フォントネは現代フランスの哲学者。彼女の『動物たちの沈黙 動物性をめぐる哲学詩論』はヨーロッパの哲学者・思想家の動物に関する主張を集成、分析した大著だ。ヨーロッパの知識人たちが、古代から現代にいたる歴史の変遷の中で、いかに動物に対する認識を変容させていったかを学ぶことができる。

例えば、近代哲学の祖をされる17世紀フランスのルネ・デカルトは「動物機械論」を提唱し、ヨーロッパ人の動物観に決定的な影響を与えた。動物に魂はあるのか、という命題は古代ギリシアの哲学者たちにも検討されたものだが、デカルトは動物には精神がなく、機械的な運動をするだけの存在であると主張した。

動物は機械であるとする認識から、19世紀には科学技術の進歩を背景に動物の生体解剖実験が盛んに行われるようになった。進化論で人間とその他の動物との垣根を突き崩した生物学者チャールズ・ダーウィンは、生体解剖に激しく反対したが、1870年代のイギリスではその賛否をめぐって大論争が起きた。科学の進歩と倫理の相克の問題は、現代人にも共有される普遍的な問題である。

人と動物との関係を知ることは、すなわち人間自身を知ることに他ならない。つまり、動物の扱い方を見れば、その人間、あるいは社会の一端をうかがい知ることができる。

長大な本であるため、通読する必要は必ずしもないと思う。興味のある個所を読むだけでも得られるものは少ないくないであろうし、知的好奇心をくすぐられるものである。是非手にとってみてもらいたい。

文学部 講師 大渕 利春

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