空間内の自己交差がないような閉曲線を結び目といいます。

結び目を数学的に扱い、研究する分野が結び目理論です。
結び目理論は様々な自然科学の分野との繋がりがありますが、
主にトポロジー(位相幾何学)の一分野とされています。
トポロジーは幾何学の一分野ですが、
角度や長さなどで図形を調べるユークリッド幾何学とは異なり、
トポロジーでは、曲げたり伸ばしたりといった変形が許されます。
例えば、上の結び目と下の結び目はトポロジーの立場では、同じものです。
是非、紐で結び目を作って確かめてみて下さい。

結び目の研究方法は、主に代数的なものと幾何的なものに分かれます。
代数的な研究方法は、結び目に対して位相不変量という量(数、多項式など)を定義し、
その性質を調べるものです。位相不変量は、位相(トポロジー)的な変形をしても不変な量で、
結び目の様々な性質を調べるときに有効です。例えば、二つの結び目があり、
それらの位相不変量が異なれば、異なる結び目であることが分かります。
一方、幾何的な研究方法は、結び目の補空間(外側の残りの空間)を3次元多様体としてみなし、
3次元多様体論の手法を用いて研究する方法です。ここで、3次元多様体とは、
各点の近傍が3次元ユークリッド空間と同じ構造を持つ空間です。例えば、
この宇宙はどこにいても3次元ユークリッド空間と同じ構造を持つと考えられるので、
一つの3次元多様体であると言えるでしょう。
私の研究テーマは、幾何的結び目理論で、
主に結び目補空間内の圧縮不能曲面を切り貼り技法によって調べ、
結び目の様々な性質を導き出すことです。結び目と垂直に交わる球面で分解するタングル分解、
結び目に石鹸膜のように曲面を張るザイフェルト曲面、
結び目を包み込むような結び目補空間内の圧縮不能閉曲面などを主に研究しています。
最近は、空間から実数直線への写像に関して、
その結び目への制限がモース関数となるように結び目を良い位置に置き、同時に、
結び目補空間内の圧縮不能曲面も良い位置に置くという手法を開発中です。