2001.06.12更新
現代の「回文」収録
村上春樹さんが回文集『
またたび浴びたタマ』28日出版、カルタ形イラストつき作家の村上春樹さんが、上から読んでも下から読んでも同じフレーズになる「
回文」を作って五十音順にまとめた『またたび浴びたタマ』(文芸春秋)を二十八日に出す。近年、社会へのかかわりに関心を深め、今春も神戸の震災をモチーフにした連作短編集『神の子どもたちはみな踊る』を発表したばかりの村上さんが、意外な“芸”を披露した一冊だ。創作された
回文は、表題作のように腑(ふ)に落ちるものもあるが、不思議なフレーズも少なくない。その一編一編に、回文の背景を説明するショートショ−トやエッセーを付けていて、それがまた楽しい。村上さんは、きっかけについて「今年のお正月、いっさい仕事をするまいと決めていましたが、頭が『言語モード』に入っていて、活発に動き続けていたんです。そこで、机に向かわないでできることはないかと考えて、
回文を思い立ったわけです」とeメールで答えてくれた。「五日間で作ってしまいましたが、五十音を網羅するのはホネでした。最後の方になると頭の中であらゆる言葉がひっくり返ってきて、世界の風景はすごくシュールレアリスティックな感じになってしまいました」村上さんは昔から言葉遊びが好きで、雑誌「ビックリハウス」に投稿したこともある。「
回文の魅力は、頭のエネルギーの純粋な無駄遣いであること。逆向きにすると、言葉が驚くほど変質していく。意味的にもイメージ的にも。そういうマジカルな単純さが回文本来の魅力です」収録した作品では「
ババリアのアリババ」「A型がええ」など「単純でくだらないものがわりに好き」という。「僕の中にはナンセンスなものに強く引かれる側面があって、そういうものが時々、凝縮して出てくる。でもミレニアムの幕開けに延々とこんなことをしていたと思うと、なんだか奇妙な気持ちになります」
それぞれの
回文には、友沢ミミヨさんのユーモラスなカルタ形の絵が配してある。切り取れば、カルタとしても使える。せっかくのきれいな本を切り刻む人はいないだろうが。何人かカルタしたるか、堪忍な――と、これは記者の習作。(小山内 伸)《朝日新聞2000.08.20(日)文化総合27 12版Nに掲載》
◆回文の最優秀賞に東京木屋さん
上から読んでも下から読んでも同じ文章になる回文のコンテストで温泉の町おこしを図ろうと、仙台市青葉区の作並温泉一帯の住民らでつくる「日本ことば遊び回文学会」(佐々木信一会長)などが募集した「第二回 回文コンテスト」の結果が1日、発表された。
全国から1529点の作品が寄せられ、最優秀賞には、東京都板橋区の自営業、木屋一利さん(47)の作品「
おかえりと帰省した島みな唄(うた)う波間したしい関取えがお」が選ばれた。自由の部の優秀賞には、東京都大和市、会社員、佐々木美郁さん(31)の「
素敵、澄みきった空が心地いい。風が『お帰り』と吹くよ。横側には初孫のこの子、待つ母に。わが子よ、よく太り笑顔が世界一。ここから育つ君が好きです」が輝いた。句の部は広島県尾道市、無職、細谷恒己さん(62)の「
祭りどき白指(しらゆび)ゆらし気取り妻」、歌の部は栃木県足利市、無職、景山達次郎さん(68)の「そこに皆草木よろこび萌ゆる春湯も日頃よき作並にこそ」がそれぞれ優秀賞に選ばれた。また、作並温泉にちなんだ回文を詠んだ東京都田無市、翻訳業、福田家水曜さん(38)の「
今、花見時です。惜しみなく桜開く作並路を素敵と皆は舞い」に作並温泉賞が贈られた。【野口 美恵】〔毎日新聞2000.08.02(水)夕刊、3版8に掲載〕
「
夜キスしながら、そのあとあなたみつめる目『罪だなあ』と、あの空悲しすぎるよ」 作並温泉(宮城)回文コンテスト最優秀作品(1999年7月30日朝日新聞より)
悲しみの今朝いつしか散る花かな春近しつい酒のみし仲
<山田光紀さん>(この収録は毎日新聞「ことば遊び」1972年による)BACK MAIN MENU