礼文島の屋号とその意味付け
一調査方法とその状況
調査地 香深井
女性三人(村方あぐりさん、など)
男性十五人(岩崎さん<商店>、高橋さん<商店>、藤田さん<豆腐屋>、佐々木さん<商店>、小軽米さん<組合長>、など)
約二十人に礼文島の屋号の由来、現在どのような使われ方をしているか、聞き取りをした。
店の看板に屋号を掲げている所をまず探し、その由来を聞いてみた。その方法を分析してみると五十才位の人は全然わからず、七十才位の人でも読み方は解っても由来を知ている人は僅かであった。僅かな人の中でとりわけ、小軽米 栄さんはくわしく知っていた。
小軽井さんはとても歴史好きの人で、本棚一つは歴史の本でいっぱいな位だった。そして、昔から日記を書いていて私と話しをしている時何かあやふやな事が出てくると、すぐに日記をとりだし正確に教えてくれた。近所でも物知りの人として有名だった。しかし屋号の意味に関してはあまり気にとめてなく、そんなに知らないとの事だったが知っている範囲で良かったら、ということで話を教えてくれた。
二調査内容
1△印は(うろこ)と呼びます。魚の鱗の形から創られたものです。
2 大上印は(だいかめ)と呼ばれています。普通これは(だいかみ)と呼ぶと考えられますが初代の屋号の持ち主が工藤亀吉といい屋号と名前をかけて(だいかめ)と呼ばれています。
3 大メ印は(だいしめ)と呼びます。大きくしめるという意味を持っています。
4 一川印は(いちさんぎ)と呼びます。これは木が三本あり簡単には倒れないという願いが込められている。
5 入十印は(いりじゅう)と呼びます。十の願いを叶えたいという意味を持っています。
6 入中印は(いりなか)と呼びます。中位にして下さいという意味を持っています。
7 又一印は(またいち)と呼びます。またも一番という意味を持っています。
8 十O印は(じゅうまる)と呼びます。5番と同じ意味を持っています。
9 人吉印は(やまきち)と呼びます。山のように吉が入りますようにという意味を持っています。
10
長印は(かくちょう)と呼びます。まじめさが長く続きますようにという意味を持っています。11
#印は(いげた)と呼びます。兄弟仲よくという意味を持っています。12
人三印は(やまさん)と呼びます。13
一人上印は(いちやまじょう)と呼びます。14
キ印は(かねき)と呼びます。15
一○印は(いちまる)と呼びます。16
○川印は(まるかわ)と呼びます。17
○ス印は(まるす)と呼びます。18
一人キ印は(いちやまき)と呼びます。19
○太印は(まるた)と呼びます。20
人七印は(やましち)と呼びます。21
△二印は(うろこに)と呼びます。22
人川印は(やまかわ)と呼びます。23
一△印は(いちうろこ)と呼びます。24
共印は(きょう)と呼びます。25
大〆印は(だいしめ)と呼びます。26
入中印は(いりなか)と呼びます。27
人ト印は(やまと)と呼びます。28
○大印は(まるだい)と呼びます。29
人タ印は(やまた)と呼びます。30
人一印は(やまいち)と呼びます。31
〇サ印は(まるさ)と呼びます。32
人〇一印は(ひとまるいち)と呼びます。33
人十印は(やまじゅう)と呼びます。34
三△印は(さんうろこ)と呼びます。35
○正印は(まるせい)と呼びます。36
人ト印は(やまと)と呼びます。37
一人上印は(いちやまじょう)と呼びます。38
○三印は(まるさん)と呼びます。39
ノニイ印は(のにい)と呼びます。40
人上印は(やまじょう)と呼びます。41
又サ印は(またさ)と呼びます。42
万印は(かくまん)と呼びます。43
一△印は(いちうろこ)と呼びます。44
人○印は(やままる)と呼びます。45
一人川印は(いちやまかわ)と呼びます。46
一人タ印は(いちやまた)と呼びます。47
入丁印は(いりちょう)と呼びます。48
#サ印は(いげたさ)と呼びます。49
人三印は(やまさん)と呼びます。50
○エ印は(まるえ)と呼びます。51
#印は(いげた)と呼びます。52
○中印は(まるなか)と呼びます。53
○ヨ印は(まるよ)と呼びます。54
又上印は(またじょう)と呼びます。
三調査が終わって
今、屋号の由来を調べるのはとても困難で由来が解ったのはほとんど小軽米栄(こがるまいさかえ)さんという組合長さんのお蔭でした。屋号の由来が解ったほとんどの家は将来の希望、目標、家訓でした。屋号は自分がどれだけ生産力を持っているかを表わし、家の誇りにもなったそうです。
昔は屋号で呼び合う人もいたそうですが、今では代々続いている有名家の人を屋号で呼ぶだけで、屋号自体は店の看板に出す程度で昔ほどの重要さはないと云って良いほどです。
おもしろいのは女性には屋号と似た「人号」みたいなものがありました。それは蝶とか亀の形をした一、五p位の焼印で鎌とか下駄といった他の人と間違えてしまいそうなものに押して自分の物とはっきり区別したそうです。踏みつける下駄には屋号をつけられないので、人号をつけたそうです。女性が自分を主張しているというのは、おおらかな礼文島ならではないでしょうか。
年がたって礼文島で世代が変る時、新世代の人は屋号の由来を受継いで先人が考えだした屋号を忘れてはならないのだが、現実として忘れられてきているので今回私達が調べた事によって礼文島の祖先が作り出し、使ってきた屋号の重要性を見直すきっかけになっていただければ幸いです。
自然豊かな礼文島も現在、観光の為に年々開発され本来の美しさが失はれてきたのはとても残念です。ある人が「自然と観光はつりあわない」としみじみ言っていたのが印象的でした。観光、便利さを追及するばかりでなく、残された自然をいかに大事にするかに将来の礼文島がかかっていると思います。(文責:石間 直子)
BACK(礼文の情報へ) BACK(北海道の情報へ)
MAIN MENU(情報言語学研究室へ)