[きりつぼ][100]
何ごとかあらむとも思したらず、
さぶらふ人々の泣きまどひ、上も御涙の隙なく流れおはしますを、あやしと見たてまつりたまへるを。
[きりつぼ][113]
朝餉の気色ばかりふれさせたまひて、大床子の御膳などは、いとはるかに思しめしたれば、陪膳に
さぶらふかぎりは、心苦しき御気色を見たてまつり嘆く。
[きりつぼ][113]
すべて、近う
さぶらふかぎりは、男女、いとわりなきわざかな、と言ひあはせつつ嘆く。
[きりつぼ][118]
慰むやと、さるべき人々参らせたまへど、なずらひに思さるるだにいとかたき世かなと、うとましうのみよろづに思しなりぬるに、先帝の四の宮の、御容貌すぐれたまへる聞こえ高くおはします、母后世になくかしづききこえたまふを、上に
さぶらふ典侍は、先帝の御時の人にて、かの宮にも親しう参り馴れたりければ、いはけなくおはしましし時より見たてまつり、今もほの見たてまつりて、「亡せたまひにし御息所の御容貌に似たまへる人を、三代の宮仕に伝はりぬるに、え見たてまつりつけぬを、后の宮の姫宮こそ、いとようおぼえて生ひ出でさせたまへりけれ。
[きりつぼ][119]
さぶらふ
人々、御後見たち、御兄の兵部卿の親王など、かく心細くておはしまさむよりは、内裏住みせさせたまひて、御心も慰むべくなど思しなりて、参らせたてまつりたまへり。
[はゝき木][171]
さる方の心もなくては、めざましきあるじならむ」と、のたまへば、「何よけむともえうけたまはらず」と、かしこまりて
さぶらふ。
[夕がほ][239]
風すこしうち吹きたるに、人は少なくて、
さぶらふかぎりみな寝たり。
[わかむらさき][284]
「過きりおはしましけるよし、ただ今なむ人申すに、驚きながら、
さぶらふべきを、なにがしこの寺に籠りはべりとはしろしめしながら忍びさせたまへるを、愁はしく思ひたまヘてなん。
[わかむらさき][320]
乳母は、うしろめたさに、いと近う
さぶらふ。
[わかむらさき][324]
宮聞こしめしつけば、
さぶらふ人々のおろかなるにぞさいなまむ。
[わかむらさき][326]
年ごろの蓬生をかれなむも、さすがに心細く、
さぶらふ人々も思ひ乱れて」と、言少なに言ひて、をさをさあへしらはず、物縫ひいとなむけはひなどしるければ、参りぬ。
[わかむらさき][327]
立ちかへり参り来なむ」とて、出でたまへば、
さぶらふ人々も知らざりけり。
[わかむらさき][329]
おのづから、ほど経てさるべきにおはしまさば、ともかうもはべりなむを、いと思ひやりなきほどのことにはべれば、
さぶらふ人々苦しうはべるべし」と聞こゆれば、「よし、後にも人は参りなむ」とて、御車寄せさせたまへば、あさましう、いかさまに、と思ひあへり。
[すゑつむ花][340]
左衛門の乳母とて、大弐のさしつぎにおぼいたるがむすめ、大輔命婦とて、内裏に
さぶらふ。
[もみぢの賀][391]
「しばしばも
さぶらふべけれど、事ぞとはべらぬほどは、おのづから怠りはべるを、さるべきことなどは、仰せ言もはべらむこそうれしく」など、すくすくしうて出でたまひぬ。
[もみぢの賀][406]
心なげにいはけて聞こゆるは」など、
さぶらふ人々も聞こえあへり。
[あふひ][16]
さぶらふ人々もさうざうしげなめり」とて、にはかにめぐらし仰せたまひて見たまふ。
[あふひ][54]
御車さし出でて、御前など参り集まるほど、をり知り顔なる時雨うちそそきて、木の葉さそふ風あわたたしう吹きはらひたるに、御前にさぶらふ人々、ものいと心細くて、すこし隙ありつる袖ども湿ひわたりぬ。
[さか木][97]
ほどなく明けゆくにやとおぼゆるに、ただここにしも、「宿直申しさぶらふ」と声づくるなり。
[さか木][101]
例もけ近く馴らさせたまふ人少なければ、ここかしこの物の背後などにぞさぶらふ。
[さか木][124]
御簾の内のけはひ、そこら集ひさぶらふ人の衣の音なひ、しめやかにふるまひなして、うち身じろきつつ、悲しげさの慰めがたげに漏り聞こゆるけしき、ことわりにいみじと聞きたまふ。
[すま][168]
さぶらふ人々よりはじめ、よろづのこと、みな西の対に聞こえわたしたまふ。
[すま][181]
二条院の君は、そのままに起きも上りたまはず、尽きせぬさまに思しこがるれば、さぶらふ人々もこしらへわびつつ、心細う思ひあへり。
[あかし][228]
ここにはかしこまりて、みづからもをさをさ参らず、もの隔たりたる下の屋にさぶらふ。
[あかし][253]
さぶらふ人々、ほどほどにつけてはよろこび思ふ。
[みをつくし][307]
はかなく過ぐる月日にそへて、いとどさびしく、心細きことのみまさるに、さぶらふ人々もやうやうあかれゆきなどして、下つ方の京極わたりなれば、人げ遠く、山寺の入相の声々にそへても、音泣きかちにてぞ過ぐしたまふ。
[みをつくし][308]
さぶらふ人々、貴きも賤しきもあまたあり。
[よもぎふ][318]
もとより荒れたりし宮の内、いとど狐の住み処になりて、うとましうけ遠き木立に、梟の声を朝夕に耳馴らしつつ、人げにこそさやうのものもせかれて影隠しけれ、木霊など、けしからぬ物ども、ところ得て、やうやう形をあらはし、ものわびしき事のみ数知らぬに、まれまれ残りてさぶらふ人は、「なほいとわりなし。
[よもぎふ][318]
立ちとまりさぶらふ人も、いとたへがたし」など聞こゆれど、「あないみじや。
[よもぎふ][338]
雨そそきも、なほ秋の時雨めきてうちそそけば、「御かささぶらふ。
[ゑあはせ][374]
御消息はただ言葉にて、院の殿上にさぶらふ左近中将を御使にてあり。
[ゑあはせ][375]
女房のさぶらひに御座よそはせて、北南方々分かれてさぶらふ。
[ゑあはせ][375]
殿上人は後涼殿の簀子におのおの心寄せつつさぶらふ。
[松かぜ][411]
近衛府の名高き舎人、物の節どもなどさぶらふに、さうざうしければ、「その駒」など乱れ遊びて、脱ぎかけたまふ色々、秋の錦を風の吹きおほふかと見ゆ。
[うす雲][428]
東の院の対の御方も、ありさまは好ましう、あらまほしきさまに、さぶらふ人人、童べの姿などうちとけず、心づかひしつつ過ぐしたまふに、近きしるしはこよなくて、のどかなる御暇のひまなどには、ふと這ひ渡りなどしたまへど、夜たちとまりなどやうにわざとは見えたまはず。
[うす雲][440]
このごろは、なほもとのごとく参りさぶらはるべきよし、大臣もすすめのたまへば、「今は夜居などいとたへがたうおぼえはべれど、仰せ言のかしこきにより、古き心ざしを添へて」とてさぶらふに、静かなる暁に、人も近くさぶらはず、あるはまかでなどしぬるほどに、古代にうちしはぶきつつ世の中の事ども奏したまふついでに、「いと奏しがたく、かへりては罪にもやまかり当らむと思ひたまへ憚る方多かれど、知ろしめさぬに罪重くて、天の眼恐ろしく思ひたまへらるることを、心にむせびはべりつつ命終りはべりなば、何の益かははべらむ。
[あさがほ][468]
さぶらふ人々の、さしもあらぬ際のことをだに、なびきやすなるなどは、過ちもしつべくめできこゆれど、宮はその上だにこよなく思し離れたりしを、今はまして、誰も思ひなかるべき御齢、おぼえにて、はかなき木草につけたる御返りなどのをり過ぐさぬも、軽々しくやとりなさるらむなど、人のもの言ひを憚りたまひつつ、うちとけたまふべき御気色もなければ、古りがたく同じさまなる御心ばへを、世の人に変り、めづらしくもねたくも思ひきこえたまふ。
[あさがほ][478]
年ごろ沈みつる罪うしなふばかり御行ひを」とは思し立てど、「にはかにかかる御事をしも、もて離れ顔にあらむも、なかなか今めかしきやうに見え聞こえて、人のとりなさじやは」と、世の人の口さかなさを思し知りにしかば、かつはさぶらふ人にもうちとけたまはず、いたう御心づかひしたまひつつ、やうやう御行ひをのみしたまふ。
[をとめ][35]
大臣御気色あしくて、「ここにさぶらふもはしたなく、人々いかに見はべらんと心おかれにたり。
[をとめ][38]
さぶらふめる人人も、かつはみなもどき笑ふべかめるものを、いと口惜しく、やすからず思うたまへらるるや」とて、立ちたまひぬ。
[をとめ][42]
小侍従やさぶらふ」とのたまへど、音もせず。
[をとめ][46]
内裏にさぶらふが、世の中恨めしげにて、このごろまかでてはべるに、いとつれづれに思ひて屈しはべれば、心苦しう見たまふるを、もろともに遊びわざをもして慰めよ、と思うたまへてなむ、あからさまにものしはべる」とて、「はぐくみ、人となさせたまへるを、おろかにはよも思ひきこえさせじ」と申したまへば、かう思し立ちにたれば、とどめきこえさせたまふとも思し返すべき御心ならぬに、いと飽かず口惜しう思されて、「人の心こそうきものはあれ。
[をとめ][67]
唱歌の殿上人あまたさぶらふ。
[玉かづら][81]
須磨の御移ろひのほどに、対の上の御方に、みな人々聞こえわたしたまひしほどより、そなたにさぶらふ。
[玉かづら][119]
中宮のおはします町は、かやうの人も住みぬべく、のどやかなれど、さてさぶらふ人の列にや聞きなされむ」と思して、「すこし埋れたれど、丑寅の町の西の対、文殿にてあるを、他方へ移して」と思す。
[玉かづら][126]
中将の君にも、「かかる人を尋ね出でたるを、用意して睦びとぶらへ」とのたまひければ、こなたに参うでたまひて、「人数ならずとも、かかる者さぶらふと、まづ召し寄すべくなむはべりける。
[はつね][138]
さぶらふ人々も、若やかにすぐれたるを、姫君の御方にと選らせたまひて、すこし大人びたるかぎり、なかなかよしよししく、装束ありさまよりはじめて、めやすくもてつけて、ここかしこに群れゐつつ、歯固めの祝して、餅鏡をさへ取り寄せて、千年の蔭にしるき、年の内の祝ごとどもして、そぼれあへるに、大臣の君さしのぞきたまへれば、懐手ひきなほしつつ、「いとはしたなきわざかな」とわびあへり。
[こてふ][166]
明け暮れにつけても、かやうのはかなき御遊びしげく、心をやりて過ぐしたまへば、さぶらふ人もおのづから、もの思ひなき心地してなむ、こなたかなたにも聞こえかはしたまふ。
[こてふ][171]
内の大殿の中将の、このさぶらふみるこをぞ、もとより見知りたまへりける伝へにてはべりける。
[とこなつ][235]
こと繁くのみありて、とぶらひ参うでずや」とのたまへば、例のいと舌疾にて、「かくてさぶらふは、何のもの思ひかはべらむ。
[とこなつ][241]
下仕見知りて、「北の対にさぶらふ童なりけり」とて、御文取り入る。
[みゆき][293]
『尚侍宮仕する人なくては、かの所の政しどけなく、女官なども、公事を仕うまつるにたづきなく、事乱るるやうになむありけるを、ただ今上にさぶらふ古老の典侍二人、またさるべき人々、さまざまに申さするを、はかばかしう選ばせたまはむ尋ねに、たぐふべき人なむなき。
[みゆき][301]
「今宵も御供にさぶらふべきを、うちつけに騒がしくもやとてなむ。
[みゆき][314]
中将も、「天の磐戸さし籠りたまひなんや、めやすく」とて立ちぬれば、ほろほろと泣きて、「この君たちさへ、みなすげなくしたまふに、ただ御前の御心のあはれにおはしませば、さぶらふなり」とて、いとかやすく、いそしく、下臈童べなどの仕うまつりたらぬ雑役をも、立ち走りやすくまどひ歩きつつ、心ざしを尽くして宮仕し歩きて、「尚侍におのれを申しなしたまへ」と責めきこゆれば、あさましういかに思ひて言ふことならむ、と思すに、ものも言はれたまはず。
[藤ばかま][322]
さばかり見どころある御あはひどもにて、をかしきさまなることのわづらはしき、はた、必ず出で来なんかし」と思ふに、ただならず胸塞がる心地すれど、つれなくすくよかにて、「人に聞かすまじとはべりつることを聞こえさせんに、いかがはべるべき」と気色だてば、近くさぶらふ人も、すこし退きつつ、御几帳の背後などにそばみあへり。
[藤ばかま][323]
なにがしも御供にさぶらふべくなん思ひたまふる」と聞こえたまへば、「たぐひたまはんもことごとしきやうにやはべらん。
[まきばしら][361]
近き年ごろとなりては、御仲も隔りがちにてならはしたまへれど、やむごとなう立ち並ぶ方なくてならひたまへれば、今は限りと見たまふに、さぶらふ人々もいみじう悲しと思ふ。
[まきばしら][362]
さこそはあべかめれ、とかねて思ひつることなれど、さし当りて今日を限りと思へば、さぶらふ人々もほろほろと泣きあへり。
[まきばしら][375]
さぶらふ人々ぞ、「大臣の、心あわたたしきほどならで、まれまれの御参りなれば、御心ゆかせたまふばかり、聴許ありてをまかでさせたまへ、と聞こえさせたまひしかば、今宵はあまりすがすがしうや」と聞こえたるを、いとつらしと思ひて、「さばかり聞こえしものを、さも心にかなはぬ世かな」とうち嘆きてゐたまへり。
[梅がえ][397]
いづ方にも、御前にさぶらふ人あまたならず。
[梅がえ][407]
いにしへの上なき際の御手どもの、世に名を残したまへるたぐひのも、いと多くさぶらふ。
[梅がえ][410]
女房二三人ばかり、墨などすらせたまひて、ゆゑある古き集の歌など、いかにぞやなど選り出でたまふに、口惜しからぬかぎりさぶらふ。
[梅がえ][413]
今日は、また、手のことどものたまひ暮らし、さまざまの継紙の本ども選り出でさせたまへるついでに、御子の侍従して、宮にさぶらふ本ども取りに遣はす。
[藤のうら葉][437]
女御の御ありさまなどよりも、華やかにめでたくあらまほしければ、北の方、さぶらふ人々などは、心よからず思ひ言ふもあれど、何の苦しきことかはあらむ。
[藤のうら葉][441]
まだいとあえかなるほどもうしろめたきに、さぶらふ人とても、若々しきのみこそ多かれ。
[藤のうら葉][444]
いまめかしう、並びなきことをば、さらにもいはず、心にくくよしある御けはひを、はかなき事につけても、あらまほしうもてなしきこえたまへれば、殿上人なども、めづらしきいどみ所にて、とりどりにさぶらふ人々も心をかけたる、女房の用意ありさまさへ、いみじくととのへなしたまへり。
[藤のうら葉][454]
唱歌の殿上人、御階にさぶらふ中に、弁少将の声すぐれたり。
[わかな上][26]
限りなき人と聞こゆれど、今の世のやうとては、みなほがらかに、あるべかしくて、世の中を御心と過ぐしたまひつべきもおはしますべかめるを、姫宮は、あさましくおぼつかなく心もとなくのみ見えさせたまふに、さぶらふ人々は、仕うまつる限りこそはべらめ。
[わかな上][26]
おほかたの御心おきてに従ひきこえて、さかしき下人もなびきさぶらふこそ、たよりあることにはべらめ。
[わかな上][37]
宮の権亮、院の殿上にもさぶらふを御使にて、姫宮の御方に参らすべくのたまはせつれど、かかる言ぞ中にありける。
[わかな上][59]
さこそつれなく紛らはしたまへど、さぶらふ人々も、「思はずなる世なりや。
[わかな上][61]
風うち吹きたる夜のけはひ冷やかにて、ふとも寝入られたまはぬを、近くさぶらふ人々あやしとや聞かむと、うちも身じろきたまはぬも、なほいと苦しげなり。
[わかな上][103]
御乳母など、心知らぬはとみに召さで、さぶらふ中に品心すぐれたるかぎりを選りて、仕うまつらせたまふ。
[わかな下][150]
ここなる猫どもことに劣らずかし」とのたまへば、「これは、さるわきまへ心もをさをさはべらぬものなれど、その中にも心賢きは、おのづから魂はべらむかし」など聞こえて、「まさるどもさぶらふめるを、これはしばし賜はりあづからむ」と申したまふ。
[わかな下][175]
冬の夜の月は、人に違ひてめでたまふ御心なれば、おもしろき夜の雪の光に、をりにあひたる手ども弾きたまひつつ、さぶらふ人々も、すこしこの方にほのめきたるに、御琴どもとりどりに弾かせて、遊びなどしたまふ。
[わかな下][207]
御修法の阿闍梨たち、夜居などにても、近くさぶらふ限りのやむごとなき僧などは、いとかく思しまどへる御けはひを聞くに、いといみじく心苦しければ、心を起こして祈りきこゆ。
[わかな下][214]
近くさぶらふ按察の君も、時々通ふ源中将せめて呼び出ださせければ、下りたる間に、ただ、この侍従ばかり近くはさぶらふなりけり。
[わかな下][224]
我にもあらで入りたまへれば、「日ごろはいささか隙見えたまへるを、にはかになんかくおはします」とて、さぶらふかぎりは、我も後れたてまつらじとまどふさまども限りなし。
[わかな下][243]
さぶらふ人々の中に、かの中納言の手に似たる手して書きたるか、とまで思し寄れど、言葉づかひきらきらと紛ふべくもあらぬことどもあり。
[わかな下][249]
「よきやうとても、あまりひたおもむきにおほどかにあてなる人は、世のありさまも知らず、かつさぶらふ人に心おきたまふこともなくて、かくいとほしき御身のためも、人のためも、いみじきことにもあるかな」と、かの御ことの心苦しさも、え思ひ放たれたまはず。
[わかな下][273]
数ならぬ身にて、及びがたき御仲らひになまじひにゆるされたてまつりてさぶらふしるしには、長く世にはべりて、かひなき身のほども、すこし人と等しくなるけぢめをもや御覧ぜらるる、とこそ思うたまへつれ、いといみじくかくさへなりはべれば、深き心ざしをだに御覧じはてられずやなりはべりなむ、と思うたまふるになん、とまりがたき心地にも、え行きやるまじく思ひたまへらるる」など、かたみに泣きたまひて、とみにもえ渡りたまはねば、また、母北の方うしろめたく思して、「などか、まづ見えむとは思ひたまふまじき。
[かしは木][298]
帰り入らんに、道も昼ははしたなかるべしと急がせたまひて、御祈祷にさぶらふ中に、やむごとなう尊きかぎり召し入れて、御髪おろさせたまふ。
[かしは木][300]
さぶらふ人々も、いと言ふかひなうおぼゆれど、かうてもたひらかにだにおはしまさば、と念じつつ、御修法、また延べて、たゆみなく行はせなど、よろづにせさせたまふ。
[かしは木][312]
御乳母たちは、やむごとなくめやすきかぎりあまたさぶらふ。
[かしは木][318]
御前の木立いたうけぶりて、花は時を忘れぬけしきなるをながめつつ、もの悲しく、さぶらふ人々も鈍色にやつれつつ、さびしうつれづれなる昼つ方、前駆はなやかに追ふ音してここにとまりぬる人あり。
[よこ笛][344]
また、ことさらに心してなむさぶらふべきを、この御琴どもの調べ変へず待たせたまはんや。
[すゞむし][368]
心ならぬ人すこしもまじりぬれば、かたへの人苦しう、あはあはしき聞こえ出で来るわざなり」と、諫めたまひて、十余人ばかりのほどぞかたち異にてはさぶらふ。
[夕ぎり][386]
御前ことごとしからで、親しきかぎり五六人ばかり狩衣にてさぶらふ。
[夕ぎり][388]
心もそらにおぼえて、あなたの御消息通ふほど、すこし遠う隔たる隙に、例の少将の君など、さぶらふ人々に物語などしたまひて、「かう参り来馴れうけたまはることの、年ごろといふばかりになりにけるを、こよなうもの遠うもてなさせたまへる恨めしさなむ。
[夕ぎり][402]
何ごとにつけてもあり難うあはれなる御心ざまはほど経ぬれど、かかる方に頼みきこえては見劣りやしたまはむ、と思ふもあやふく」など、睦ましうさぶらふかぎりは、おのがどち思ひ乱る。
[夕ぎり][430]
さぶらふ人々も、よろづにもの悲しう思ひまどへり。
[夕ぎり][463]
いみじうあさましうつらしと、さぶらふ人をも、げにかかる世の人の心なれば、これよりまさる目をも見せつべかりけりと、頼もしき人もなくなりはてたまひぬる御身をかへすがへす悲しう思す。
[夕ぎり][473]
少将は、人々物語して、「時時さぶらふに、かかる御廉の前は、たづきなき心地しはべるを、今よりはよすがある心地して、常に参るべし。
[みのり][486]
さぶらふ人々も、いかにおはしまさむとするにかと思ひよるにも、まづかきくらし、あたらしう悲しき御ありさまと見たてまつる。
[みのり][492]
さぶらふ女房なども、あるかぎり、さらにもの覚えたるなし。
[みのり][493]
御加持にさぶらふ大徳たち読経の僧なども、みな声やめて出でぬなるを、さりとも、立ちとまりてものすべきもあらむ。
[みのり][494]
一日一夜忌むことの験こそは、むなしからずははべるなれ、まことに言ふかひなくなりはてさせたまひて後の御髪ばかりをやつさせたまひても、ことなるかの世の御光ともならせたまはざらんものから、目の前の悲しびのみまさるやうにて、いかがはべるべからむ」と申したまひて、御忌に籠りさぶらふべき心ざしありてまかでぬ僧、その人かの人など召して、さるべき事ども、この君ぞ行ひたまふ。
[まぼろし][512]
中将の君とてさぶらふは、まだ小さくより見たまひ馴れにしを、いと忍びつつ見たまひ過ぐさずやありけむ。
[まぼろし][532]
やうやうさるべき事ども、御心の中に思しつづけて、さぶらふ人々にも、ほどほどにつけて物賜ひなど、おどろおどろしく、今なん限りとしなしたまはねど、近くさぶらふ人々は、御本意遂げたまふべき気色と見たてまつるままに、年の暮れゆくも心細く悲しきこと限りなし。
[まぼろし][533]
いと、かからぬほどの事にてだに、過ぎにし人の跡と見るはあはれなるを、ましていとどかきくらし、それとも見分かれぬまで降りおつる御涙の水茎に流れそふを、人もあまり心弱しと見たてまつるべきがかたはらいたうはしたなければ、おしやりたまひて、死出の山越えにし人をしたふとて跡を見つつもなほまどふかなさぶらふ人々も、まほにはえひきひろげねど、それとほのぼの見ゆるに、心まどひどもおろかならず。
[まぼろし][534]
年ごろ久しく参り、朝廷にも仕うまつりて、御覧じ馴れたる御導師の、頭はやうやう色変りてさぶらふも、あはれに思さる。
[にほふ兵部卿][16]
上にも宮にも、さぶらふ女房の中にも容貌よくあてやかにめやすきは、みな移し渡させたまひつつ、院の内を心につけて、住みよくありよく思ふべくとのみ、わざとがましき御あつかひぐさに思されたまへり。
[こうばい][40]
いと若き上臈だつが、見えたてまつらじと思ふはしも、心にまかせてゐたれば、「さぶらふ人さへかくもてなすが、安からぬ」と腹立ちたまふ。
[たけ川][94]
正身の御心どもは、ことに軽々しく背きたまふにはあらねど、さぶらふ人々の中にくせぐせしき事も出で来などしつつ、かの中将の君の、さいへど人の兄にてのたまひしことかなひて、尚侍の君も、「むげにかく言ひ言ひのはていかならむ。
[はし姫][111]
後に生まれたまひし君をば、さぶらふ人々も、「いでや、をりふし心憂く」などうちつぶやきて、心に入れてもあつかひきこえざりけれど、限りのさまにて、何ごとも思しわかざりしほどながら、これをいと心苦しと思ひて、「ただ、この君をば形見に見たまひて、あはれと思せ」とばかり、ただ一言なむ宮に聞こえおきたまひければ、前の世の契りもつらきをりふしなれど、さるべきにこそはありけめと、今はと見えしまでいとあはれと思ひてうしろめたげにのたまひしを、と思し出でつつ、この君をしもいとかなしうしたてまつりたまふ。
[はし姫][133]
かくさぶらふよし聞こえよ。
[しゐがもと][166]
かの宮は、まいて、かやすきほどならぬ御身をさへ、ところせく思さるるを、かかるをりにだにと忍びかねたまひて、おもしろき花の枝を折らせたまひて、御供にさぶらふ上童のをかしきして奉りたまふ。
[しゐがもと][183]
野山のけしき、まして袖の時雨をもよほしがちに、ともすればあらそひ落つる木の葉の音も、水の響きも、涙の滝もひとつもののやうにくれまどひて、かうては、いかでか限りあらむ御命もしばしめぐらひたまはむ、とさぶらふ人々は心細く、いみじく慰めきこえつつ思ひまどふ。
[あげまき][218]
かくてさぶらふこれかれも、年ごろだに、何の頼もしげある木の本の隠ろへもはべらざりき。
[あげまき][261]
その夜も、かのしるべ誘ひたまへど、「冷泉院に必ずさぶらふべきことはべれば」とて、とまりたまひぬ。
[あげまき][269]
さぶらふかぎりの女房の容貌心ざま、いづれとなくわろびたるなく、めやすくとりどりにをかしき中に、あてにすぐれて目にとまるあれど、さらにさらに乱れそめじの心にて、いときすくにもてなしたまへり。
[あげまき][295]
世になくかしづききこえたまひて、さぶらふ人々も、かたほにすこし飽かぬところあるははしたなげなり。
[あげまき][308]
灯はこなたの南の間にともして、内は暗きに、几帳をひき上げて、すこしすべり入りて見たてまつりたまへば、老人ども二三人ぞさぶらふ。
[あげまき][309]
宿直人さぶらふべし」と聞こえたまへば、うしろめたけれど、さるやうこそは、と思して、すこし退きたまへり。
[あげまき][311]
この常不軽、そのわたりの里里、京まで歩きけるを、暁の嵐にわびて、阿闍梨のさぶらふあたりを尋ねて、中門のもとにゐて、いと尊くつく。
[さわらび][348]
この宿守に、かの鬚がちの宿直人などはさぶらふべければ、このわたりの近き御庄どもなどに、その事どもものたまひ預けなど、まめやかなる事どもをさへ定めおきたまふ。
[やどり木][364]
女一の宮を、世にたぐひなきものにかしづききこえさせたまふに、おほかたの世のおぼえこそ及ぶべうもあらね、内々の御ありさまはをさをさ劣らず、父大臣の御勢いかめしかりしなごりいたく衰へねば、ことに心もとなきことなどなくて、さぶらふ人々のなり姿よりはじめ、たゆみなく、時々につけつつ、ととのへ好み、いまめかしくゆゑゆゑしきさまにもてなしたまへり。
[やどり木][367]
暮れゆくままに、時雨をかしきほどにて、花の色も夕映えしたるを御覧じて、人召して、「ただ今、殿上には誰々か」と問はせたまふに、「中務の親王、上野の親王、中納言源朝臣さぶらふ」と奏す。
[やどり木][408]
かりそめの戯れ言をも言ひそめたまへる人の、け近くて見たてまつらばやとのみ思ひきこゆるにや、あながちに、世を背きたまへる宮の御方に、縁を尋ねつつ参り集まりてさぶらふも、あはれなることほどほどにつけつつ多かるべし。
[やどり木][417]
近くさぶらふ女房二人ばかりあれど、すずろなる男のうち入り来たるならばこそは、こはいかなることぞとも参り寄らめ、うとからず聞こえかはしたまふ御仲らひなめれば、さるやうこそはあらめ、と思ふに、かたはらいたければ、知らず顔にてやをら退きぬるぞ、いとほしきや。
[やどり木][427]
人々のけはひなどの、なつかしきほどに、萎えばみためりしをと、思ひやりたまひて、母宮の御方に参りたまひて、「よろしき設けの物どもやさぶらふ。
[やどり木][432]
さぶらふ人々も、すこしものの言ふかひありぬべく若やかなるはみなあたらし。
[やどり木][432]
やがて端に御褥さし出でさせたまひて、「いと悩ましきほどにてなん、え聞こえさせぬ」と、人して聞こえ出だしたまへるを聞くに、いみじくつらくて涙の落ちぬべきを、人目につつめば、強ひて紛らはして、「悩ませたまふをりは、知らぬ僧なども近く参り寄るを、医師などの列にても、御簾の内にはさぶらふまじくやは。
[やどり木][473]
廂の御車にて、廂なき糸毛三つ、黄金造り六つ、ただの檳榔毛二十、網代二つ、童下仕八人づつさぶらふに、また、御迎への出車どもに、本所の人々乗せてなんありける。
[あづま屋][20]
守、「このわたりに時々出で入りはすと聞けど、前には呼び出でぬ人の、何ごと言ひにかあらん」と、なま荒々しき気色なれど、「左近少将殿の御消息にてなむさぶらふ」と言はせたれば、会ひたり。
[あづま屋][44]
もの恥ぢもおどろおどろしからず、さまよう児めいたるものからかどなからず、近くさぶらふ人々にも、いとよく隠れてゐたまへり。
[あづま屋][44]
ほのかに見たてまつりける人のいみじきものに聞こゆめれど、宮の御ありさまには、え並びたまはじ」と言へば、御前にさぶらふ人々、「いさや、えこそ聞こえ定めね」と聞こえあへり。
[あづま屋][56]
かく人のものしたまへばとて、通ふ道の障子一間ばかりぞ開けたるを、右近とて、大輔がむすめのさぶらふ来て、格子下ろしてここに寄り来なり。
[あづま屋][58]
うしろやすくと、かへすがへす言ひおきつるものを」と、いとほしく思せど、いかが聞こえむ、さぶらふ人々もすこし若やかによろしきは見棄てたまふなく、あやしき人の御癖なれば。
[あづま屋][62]
移し馬ども牽き出だして、宿直にさぶらふ人、十人ばかりして参りたまふ。
[うき舟][98]
さぶらふ人の中にも、はかなうものをものたまひ触れんと思したちぬるかぎりは、あるまじき里まで尋ねさせたまふ御さまよからぬ御本性なるに、さばかり月日を経て思ししむめるあたりは、まして必ず見苦しきこと取り出でたまひてむ。
[うき舟][103]
ことにらうらうじきふしも見えねど、おぼえなきを、御目たててこの立文を見たまへば、げに、女の手にて、年あらたまりて何ごとかさぶらふ。
[うき舟][108]
かしこまりてさぶらふ。
[うき舟][141]
「いとよく用意してさぶらふ」と申さす。
[うき舟][175]
雑事ども仰せられつるついでに、かくておはしますほどに、夜半暁のことも、なにがしらかくてさぶらふと思ほして、宿直人わざとさしたてまつらせたまふこともなきを、このごろ聞こしめせば、女房の御もとに、知らぬ所の人々通ふやうになん聞こしめすことある、たいだいしきことなり、宿直にさぶらふ者どもは、その案内聞きたらん、知らではいかがさぶらふべき、と問はせたまひつるに、承らぬことなれば、なにがしは身の病重くはべりて、宿直仕うまつることは、月ごろ怠りてはべれば、案内もえ知りはんべらず、さるべき男どもは、懈怠なくもよほしさぶらはせはべるを、さのごとき非常の事のさぶらはむをば、いかでか承らぬやうははべらん、となん申させはべりつる。
[うき舟][182]
宮は、御馬にてすこし遠く立ちたまへるに、里びたる声したる犬どもの出で来てののしるもいと恐ろしく、人少なに、いとあやしき御歩きなれば、すずろならむ物の走り出で来たらむもいかさまにと、さぶらふかぎり心をぞまどはしける。
[かげろふ][222]
我なむえ信ずまじき」とのたまへば、いといとほしく、さればよ、とわづらはしくて、「おのづから聞こしめしけむ、もとより思すさまならで生ひ出でたまへりし人の、世離れたる御住まひの後は、いつとなくものをのみ思すめりしかど、たまさかにもかく渡りおはしますを、待ちきこえさせたまふに、もとよりの御身の嘆きをさへ慰めたまひつつ、心のどかなるさまにて、時々も見たてまつらせたまふべきやうに、いつしかとのみ、言に出でてはのたまはねど、思しわたるめりしを、その御本意かなふべきさまに承ることどもはべりしに、かくてさぶらふ人どもも、うれしきことに思ひたまへいそぎ、かの筑波山も、からうじて心ゆきたる気色にて、渡らせたまはんことを営み思ひたまへしに、心えぬ御消息はべりけるに、この宿直など仕うまつる者どもも、女房たちらうがはしかなりなど、いましめ仰せらるることなど申して、ものの心えず荒々しき田舎人どもの、あやしきさまにとりなしきこゆることどもはべりしを、その後久しう御消息などもはべらざりしに、心憂き身なりとのみ、いはけなかりしほどより思ひ知るを、人数にいかで見なさんとのみよろづにあつかひたまふ母君の、なかなかなることの人笑はれになりはてば、いかに思ひ嘆かんなどおもむけてなん、常に嘆きたまひし。
[かげろふ][244]
もとより数まへさせたまはざらむをも、かく親しくてさぶらふべきゆかりに寄せて、思しめし数まへさせたまはんこそ、うれしくははべるべけれ。
[てならひ][333]
「げにいとめづらかなる事かな」とて、近くさぶらふ人々みな寝入りたるを、恐ろしく思されて、おどろかさせたまふ。
[夢のうき橋][371]
みづから聞こえさすべきことも多かれど、今日明日過ぐしてさぶらふべし。
[夢のうき橋][372]
円座さし出でたれば、簾のもとについゐて、「かやうにてはさぶらふまじくこそは、僧都は、のたまひしか」と言ヘば、尼君ぞ答ヘなどしたまふ。