2003.05.21〜2003.05.27更新
ホトトギス【不如帰】とカッコウ【郭公】
萩原 義雄
ホトトギス【不如帰】時鳥・子規・夕告鳥・
ホトトギスの鳴き声」http://www9.big.or.jp/~mishii/bird/hototogisu.html
  聞きなし「テッペンカケタカ」「トッキョキョキャキョク」
  大槻文彦編『大言海ホトトギス【不如帰】(名)霍公・郭公・時鳥〔郭公の字を用ゐれど、こは、かっこうどりなり、啼く聲を名とす、歌に「己が名を名のる」と詠める多し〕(一){攀禽類の鳥の名。山中の樹に棲み、夏の初より、晝夜を分かず啼きて、秋に至りて止む。其聲、叫ぶが如し。形、ひよどり(鵯)より痩せて長く、頭は、K褐に淡褐の斑あり、背は、淡青にして、背後、肩、翅、皆、K褐なり、喉は淡青にして、黄褐の横斑あり、胸、腹、色、淡くして、Kき横斑あり、尾、Kくして白斑あり、是れ雄なり。雌は、頭、額、深K褐にして青を帯び、Kき横斑あり、肩、翼、Kく、喉、胸、淡褐にして、腹、白く、胸より腹まで、Kき横斑あり、卵を鶯の巣の中に産みて、鶯をして養はしむと云ふ。異名、くきら。くつてどり。しづこどり。しづとり。しでたをさ。しでのたをさ。たうたどり。たそがれどり。たなかどり。たまさかどり。たまむかへどり。たをさ。たをさどり。ときつとり。ぬばたまどり。ももこゑどり。やまほととぎす。ゆふかげどり。よただどり。よぶこどり。杜鵑。子規。杜宇。蜀魄。不如歸去。 倭名抄、十八16羽族名「〓〓、保度度木須、今之郭公也」 字鏡、66「郭公鳥、保止止支須」 萬葉集、十八、17「あかときに、名のりなくなる、保登等藝須、いやめづらしく、思ほゆるかも」 同、九22長歌「鶯の、かひこの中に、霍公(ほととぎす)、ひとり生れて」 枕草子、三、第廿三段「夕暮の程に、ほととぎすの名のり渡るも」 江談抄、三、雜事「郭公爲鶯子事、云云、樹蔭造巣生子、漸生長、云云、ほととぎすと鳴去了」 今鏡、第十、打聞「子のやうやうおとなしくなりて、ほととぎすと啼きければ、云云、或人よめる、親のおやぞ、今はゆかしき、ほととぎす、はや鶯の、こはねなりけり」(二)百合科の山草。莖の高さ二三尺、葉は百合の葉に似て、廣し。又、笹の葉にも似たり。蕾は筆の如く、秋、開く、淡紫色にして、六出あり、中より一蘂出でて、又、花の形をなす。萼毎に小紫點多く、杜鵑の羽の斑に似て、しぼり染の如し。杜鵑草。油點草。 大和本草、七、花草類「ほととぎす、葉は紫萼(さぎそう)に似て短小なり、すぢ多し」〔4-0346・3〕
 
 小学館『日本国語大辞典』第二版
 
カッコウ【郭公】
大槻文彦編『大言海かッこう-どり【郭公布穀】(名)〔鳴く聲を名とす、多武峰少將物語、郭公「山路を知る、鳥を我が身に、なしてしが、君かくこふ(斯戀(かくこふ)にかけたり)と、鳴きて告ぐべく」漢名の郭公(クワクコウ)も鳴聲にて、暗合なり、荊楚歳時記「有鳥曰穫穀、其名自呼」爾雅、釋鳥、、註「穫穀」雅、釋鳥「、云々、今之布穀也、江東呼爲郭公」〕古名、ふふどり。ほほどり。渡鳥(わたりどり)なり。形、甚だ杜鵑に似て、大なるもの、夏時、山林に多し。かっこどり。かんこどり。かっぽうどり。ほうほうどり。つつどり。(何れも、鳴聲なり) 和漢三才圖會、四十三、林禽「加豆古宇鳥、疑此郭公、状似杜鵑、而帶微赤色、腹白而無K斑耳、偽爲杜鵑之、仲夏後有聲、秋後聲止、其聲大而圓亮、如加豆古宇、毎棲山林、不人家」(節文) 〔0387-3〕
かッこ-どり【郭公鳥】(名)前條に同じ。
 
小学館『日本国語大辞典』第二版
 
 
異名分類抄』に、
秘蔵 くきら 「としのはにきゝふりわたる聲なれと猶めつらしく鳴くきらかな 遍昭 今按、後撰口訣云、苦歸樂(くきら)とは萬葉に「あらち山越行こしのうねのはらをりもくるしと苦歸樂なく、と云々、さる歌萬葉にある事なし如何
八雲 時の鳥 千五百番歌合に「うくひすの入ぬるあとの雲路より待ちつる時の鳥もなくなり」
 してのたをさ 袖中抄云、してのたをさとはしつのたをさといふなり、ほとゝきすは勸農の鳥とて、過時不熟と鳴といへり、略奥義抄童蒙抄綺語抄共にしてのたをさとは郭公ををいふといへり
 うなゐこ  拾遺集躬恒 「ほとゝきすをちかへりなけうなゐ子かうちたれかみのさみたれの頃 童蒙抄に、郭公は四手の山を越て來るほとは、童にてあるなれは、かくよめるといへり、かなひても聞かすと云々、顯昭云、わらはにて來るといふ事はうちたれがみの歌に付ていひ出し事也云々
能因
とけをしほ  くつぬひ 古説に郭公沓ぬひにて有けるか死て鳥となれりといふ事有後撰口訣に委
もしほ 常詞鳥           もしほ 百聲鳥 曉筆記同し
   よたゝ鳥             玉迎鳥
   五露鳥              田歌鳥
   早苗鳥              草つく鳥
   賤鳥               たそかれ鳥
   いもせ鳥             玉さか鳥
   鏡暮鳥              うつた鳥
   さくめ鳥             めつら鳥
   さくも鳥             夕かけ鳥
篠目  夏雪鳥           篠目  卯月鳥
   おもはへ鳥            夜とこ鳥 曉筆記同し
   あやめ鳥             まうけ鳥
   夜め鳥  曉筆記同し       夕かけ鳥
   むは玉鳥             あやなし鳥 曉筆記同し
   くつて鳥 綺語抄にくつてたはらんとなくとよめり
   あみ鳥  曉筆記 是は萬葉十九に「ほとゝきすきけともあかす網取にとりてなつけはかれすなくかに、此歌よりいふ歟
 ○人きゝ鳥 人きゝ鳥の寫誤歟        ○たなか鳥
 ○しろ鳥 是は藻鹽に所謂賤鳥の同名寫誤歟  ○まめやか鳥
 ○たまさか鳥                ○うたひ鳥
已上曉筆記に見えたり
 ○三月すこ鳥  定家卿説、正二三を通して、四月來鳴故、三月すこ鳥といふ「なきふるす聲そひさしき我宿のかきねにつたふみつきすこ鳥 已上後撰口訣
 ○らんる鳥  是は倭名鈔襤縷鳥(ほとゝぎす)今之郭公也とあり、此字音をいふのみ歟、後撰口訣に、らんるはかはきぬの名也、此鳥冬木の中にすみたる時、毛のむく/\としたるかかはきぬのことし云々、曉筆記の説も同し
 ○無常鳥  後撰口訣に見ゆ、此鳥無常をすゝむといへり云々
 ○こひし鳥 前に同し、昔のつまをこふと云々
藏玉
 橘鳥
 ○いにしへをこふる鳥  萬葉集第二「いにしえをこふる鳥かも弓弦葉の三井のうへよりなきわたる見ゆ
 ○時つ鳥  堀川次郎  俊頼「時つ鳥なかね雲ゐにとゞろきて星のはやしにうつもれぬらむ