礼文島の産業(漁業)
一礼文島の産業現況
礼文島で採れる魚・貝類と言えば一般的に知られているのは、ウニ・昆布であろう。確かにウニ・昆布も採れるが、それほど多く採れるものではない。多分、ウニ・昆布などは、高額な値段で取引されているので、そのような思い違いをしてしまうのであろう。又、近年では昆布でも天然ものと養殖ものがあるので注意されたい。
ところで、実際に礼文島でよく水揚げされるのは、グラフ(表A)の通りである。ざっと見て、礼文島にて多く水揚げされるものは、ホッケ・タラ・イカ・タコなどである。又、五十八年ごろから、にしんが、再び採れだしたことも、注目すべき点であろう。また、単純でごくわずかであるが、気がついた点を後に述べておいたので参考にして欲しい。
資料などで調べていくうちに、ある結論に達した。(推量ではあるが…)それは天候(台風など)による直接的な影響ではないものの、その年の冬に流氷が接岸するかしないかによってその年の水産物の水揚げ量が左右されるのだということです。(特に、ウニや昆布は非常に関係あると思う)
*流氷はアムール川でつくられ、そして流れてきたもので、冬、一月から二月にかけて礼文島に接岸し春、四月ごろに昆布などの海草類をまきこみながら去っていく。流氷はいわゆる海の掃除屋ともいわれ、岩床にあるものすべてをきれいにかきとってしまうのである。新しい海草類の胞子が着床しそれが成育するためには最低でも三、四、五年かかるのである。このことが自然界における生き物のいとなみのなかではなくてはならないことを礼文島の水産業に携わる人達はみな知っているのである。が、それが不漁の原因そのものであり、彼等の生活に関わる問題でもある。それに気付いた礼文島の水産業に携わる人達は昆布を養殖することを始めた。ところが、養殖昆布は天然昆布よりも質が劣っているので商品価値が天然昆布よりも低く取り扱われてしまい、これもまた礼文島の水産業に携わる人達にとっては頭の痛い問題である。いままで昆布は礼文島内の水産額の三割弱を占めていたそうである。(『海の黄金草、香深昆布』より)つまり、昆布がそのような重要な存在ともなると礼文島の水産業に携わる人達の生活に関わる問題だけではなく、今後の礼文島の産業(水産、観光、など)の発展に悪影響を及ぼすのではないだろうか?と私は不安に思うのである。
実際、後に示してある★グラフ(表B)を見ても判るが年々、天然昆布の採れる量が減少してきており、養殖昆布のほうは横這い状態である。しかし、昆布の総数から見ると昭和五十九年から平成二年迄は天然昆布が大部分を占めていたが、平成三年になると天然物と養殖物の比率は半々になってしまっている。この状態を放っておいたら、今までに築いてきた香深昆布の評価を下げることになるので、何か天然昆布を保護する対策を投じてほしいものだ。
上の文章を書いていて気が付いたのだが、昆布は全水産漁獲量の中では少ないほうではあるが水産額では三割を占めるとなると、礼文の昆布は全国的に価値のあるものなのである。
☆グラフ(表A)
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57
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58
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59
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60
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61
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62
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63
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元
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2
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3
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にしん さけ、ます たら すけそうだら ほっけ さんま かれい さめ いかなご いか たこ ウニ えび 毛がに なまこ あわび いがい こんぶ その他
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0 0 934 62 2654 5 529 127 630 617 1054 1142 30 0 0 7 0 175 0
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105 77 1175 65 1679 3 506 192 0 846 762 144 37 0 0 13 0 145 0
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432 462 2108 335 2021 5 628 311 171 448 1067 142 22 8 107 7 0 127 24
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373 297 1823 285 1572 4 587 166 60 247 755 122 37 0 181 0 36 289 8
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557 151 971 603 1411 1 441 183 120 44 738 136 56 0 203 0 81 667 16
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677 291 1393 444 2910 4 345 251 198 800 809 146 41 0 176 0 86 155 11
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485 166 1375 375 3437 7 340 159 376 484 702 148 32 0 157 0 94 177 12
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314 227 673 263 3145 4 211 44 338 489 790 116 48 4 132 0 28 238 10
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60 190 518 1158 5428 16 224 35 1079 1024 844 100 22 2 121 0 74 70 14
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349 347 789 1758 7059 5 426 35 1190 744 766 57 23 1 116 0 25 88 9
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(単位は、トン)
@資料は、宗谷支庁水産課調及び礼文町勢要覧から
@天然昆布と養殖昆布の量は次の通り
★グラフ(表B)
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59
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60
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61
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62
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63
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1
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2
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3
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天然こんぶ
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91
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237
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577
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135
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141
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189
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53
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46
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養殖こんぶ
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24
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52
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100
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20
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36
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49
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17
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42
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@
(単位は、トン)@礼文町勢要覧から
〓グラフから読取れること。
@すけそうだらが、平成二年から多く採れるようになった。
Aさめは、昭和六二年をさかいにだんだん採れなくなってきた。
Bウニは、規制されているせいかもしれないが、だんだんと採れなくなってきている。規制されているだけではなく、昆布の不漁(その理由はCで説明済み)による減少が、原因になっているのである。(ウニは昆布などの海草類を食べて生きているのである)また、昆布の不漁時には昆布の替りに虎杖(いたどり)の葉を沢山(たくさん)集めそれを束にして海中に投じ、ウニのエサとした。
C昆布もウニと同様に採れなくなってきたからか、平成二年からある程度の量に限定されているようだ。
Dあわびが、六〇年から採れなくなってきた。その理由は、五十九年と六十年の二年続いて流氷が接岸したからである。(礼文町勢要覧から)また、同じ理由が、Cにも言える。
二礼文島の産業昔と今
昔、安政六年(一八五九年)利尻、礼文で、鰊が約
1,486トン水揚げされたそうです。(1990版礼文島企画観光課発行)また、ナマコは、礼文だけで約二一.七トンを生産したそうです。最近また、鰊が採れるようになったというので、今後どのようになるのか楽しみだ。ところが、鰊が採れるようになったといっても、ごく僅かで昔とは規模が違う。鰊御殿がたくさんあった時代のように戻るのは一体、いつになるのだろうか?
三礼文島の産業からみた将来像
この二三年、景気が良いお陰で観光客が来島し、観光業がますます発展しているのがわかる。それは、港のホテルや、フェリーターミナルを見ると一目瞭然である。また、それに便乗して、水産業も観光客の土産物として、ウニ、昆布などの水産物を一夜漬や香深昆布として加工し販売したり、東京などに出荷したり、観光客むけのウニ丼の具として使ったりと、ウニや昆布を中心にますます発展するだろう。また、あわび育成センターの建設など『育てる』漁業をすすめているようだ。ただ、心配なのは、あまりウニや昆布が第二、第三のレブンアツモリソウにならなければよいのだが…
★つけたし★
「ウニ丼は、値段は高いけれど、こんなものか…ぐらいの存在でしかなかった。」(石井君談)
ウニ丼を食べたことのない人には失礼だが、色は写真通りではあったけれど期待したほどの味ではなかった。時期遅れであったせいかもしれないが…しかしウニが食べたいと思い礼文島に来る人もいるかもしれない?、それだけ魅力のあるものなのであろうウニと言う生き物は。
(文責:谷口憲彦)