礼文島の帰化植物
小山晃弘
帰化植物の定義
『帰化植物とは自然の営力によらず、人為的営力によって、意識的又は無意識的に移入された外来植物が野生の状態で見い出されるものをいう。』以上に述べたのが広く認められている帰化植物の定義であって、これによれば、ある植物が帰化植物と呼ばれるためには3つの条件が備っていなければならないことになる。その条件とは以下の3つである。
1・“人間がよそから持ちこんだ植物である”ということ。これは人間が、意識的に自分の生活に役立つ植物(アサ,イチビ,イネ,ムギ,フジバカマ,アサガオなど)を運んだ事を意味し、さらに、人間の身体や、明治以降の欧米諸国との交流のなかで貨物などに付着して日本に入ってきた無意識的に移入された植物や、有用植物の種子や苗に含まれて運ばれた目的物以外の種子や幼植物(この植物を随伴植物という)をも含む。この場合、自然の力(風,水流,鳥獣など)によって運ばれた植物は帰化植物とは呼ばない。
2・“野性の状態で見いだされる事”イネ,ムギ,ダリア,チューリップなどは帰化植物とは言えない。何故ならこれらの植物の生育には絶えざる人間の保護が必要で、もしこれらを放置しておけば消えてしまうからである。これに対し、アサ,イチビなどの、かつての栽培植物が、今日その用途が失われて、ほとんど、あるいは全く栽培されないにも関わらず、全国に野生化して残っている。(このような植物を野化植物といい、これらも植物の移入が意識的か無意識的か必ずしも明らかでないため、帰化植物の範疇に入る)
3・“外来植物であるということ”反論として「もともと国境は人間が勝手に決めたものであって、歴史の移り変わりとともに動くものであるから、自然物である植物には、なんの関係も無い。」といったものもあり、確かに北海道の植物が人力で本州に、奥羽地方の植物が人力で九州に広がった場合などでも本質的には帰化植物と変わりないが、これを帰化植物とは呼ばず、やはり、“よその国から”入ってきた植物を帰化植物という。
礼文島の帰化植物
ムラサキウマゴヤシ(和名)【Medicago sativa(学名)】 マメ科
多年草。葉は直立して高さ1b以上にも達し、ときに倒伏し、無毛または細毛を散生する。葉は3個の小葉よりなり、葉柄は長さ1〜2a、小葉の上部に数対のきょ歯がある。托葉は幅が狭く鋭くとがり、きょ歯を欠く。花は淡紫色の蝶形花で長さ8〜11_、数個から数10個集って付く。
がくは中部またはそれ以下まで深く5裂、裂片は細く狭い。果実(豆果)は
1,1/2〜3回らせん形に巻いて中央に穴を残し、扁平、径4〜6_、刺はなく、細長い網目状の脈がある。中に数個の種子がある。花期は夏。〔備考〕地中海沿岸原産。“飼料植物”として明治初年に日本に入った。田中芳夫氏の日本物産年表には、“赤頭草の種子購入を米人に託した。(明治7年)”とある。アルファルファ、またはル−サンの名で牧草として利用され、ときに路傍などに野生化している。すこぶる多形な種で、葉形、茎の立ちかたなど変りやすく、欧州には黄花の変種もある。
【Alfalfa,Lucerne,(英名)】
コウリンタンポポ(和名)【Hieracium aurantiacum(学名)】 キク科
多年草。しばしば地表に走出枝をのばす。花茎は直立し、高さは10〜50a、全面に立った剛毛が密生し、上部には有柄の星状毛と腺毛が混生している。大部分の葉は根ぎわに集っていて、ロゼットを作り、長い剛毛が生えている。頭花は茎頂に集って径1.5〜2.3a、舌状花のみよりなり、橙赤色、しぼんだ時は暗赤色となる。総包は高さ5〜8_、総包片は質がうすく、1列に並び、黒色の長毛を密生、短い腺毛が混じる。舌状花の舌片の先は深い5歯があり、冠毛は毛状白色。果実は円筒形、10脈がある。〔備考〕欧州原産。別名をエフデキクと言う。観賞用として、明治中期に日本に入ってきた。繁殖力が強く、北米に帰化して悪性の雑草と化している。北海道には戦後サハリンより侵入してきたらしく、今では奥羽や日光にまで入り込んでいる。
【Orange Hawkweed King Devil(英名)】
オオハンゴンソウ(和名)【Rudbeckia laciniata(学名)】 キク科
多年草。茎は高さ0.5〜3b、無毛で白っぽい。葉は互生してついており、下方のものは長柄があって羽状に5〜7裂、上方のものは無柄で3〜5裂しているか、又は分裂していない状態である。葉の上面は無毛で、下面には短毛がある。頭花は径5〜6aで、黄色の舌状花と緑黄色の筒状花よりなり、花床は半球形で総包片は葉状に2列に並んでいる。舌状花は10〜14個付き、後にやや下向きに垂れる。花床のりん片はへら形で先はややまるいか、又は直線形、背面上部に短毛を密生する。果実(そう果)は4稜があり、長さ5〜6_、扁平、冠毛はゆ着して冠状となり、少数の歯状の突起がある。花期は夏から秋にかけて。〔備考〕北米原産。明治中期に日本に入ってきた。現在日本各地に野生化しており、北海道、日光、長野県などには大群落が見られる。筒状花が緑黄色であるのと、花床のりん片の形は著しい特徴である。ほとんど舌状花のみよりなる変種ヤエザキオオハンゴンソウ、別名ハナガサギク(var.hortensis)も、しばしば野生化。
【Cut−leaf Coneflower(英名)】
マツヨイセンノウ(和名)【】