2010.06.09更新
総合教育研究部 日本語の教育実践報告
 
科目:「文学7〔日本のことば〕」(萩原義雄)
日時:2010年 6月04日(金)4−303教場 16:10〜18:00
08の講義内容 植物辞書(近 代植物辞書、牧野富太郎編『牧野日本植物図鑑』)
受講者数:すべての参加者: 50名
 
○「タンポポ【蒲公英】」について葉も食げることのできる野の植物であることを具体的に説明した。
 
1,@キク科の多年草。世界の温帯、亜寒帯に広く分布し、日当たりの良い山野、路傍に生える。 高さ一五〜三〇センチメートル。葉は根ぎわに放射状に群がって生え、長楕円状へら形で縁は不規則な羽状にせん裂する。春、次々と花茎を出し、先端にすべて 舌状花からなる径約三センチメートルの黄色、または白色の頭花を頂生する。果実には白い冠毛がかさ形につき風にのってとび散る。若葉は食べられる。漢方で は開花前にとって乾燥した葉を蒲公英(ほこうえい)といい、解熱・健胃薬などに用いる。日本にはエゾタンポポ、カントウタンポポ、カンサイタンポポなど約二〇種が自生し、セイヨウタンポポが帰化している。漢名、蒲公英。ふじな。たな。ぐじな。むじな。学名はTaraxacum 《季・春》《小学館『日本国語大辞典』参照》
 
2,タンポポは人里や野にありふれた草だが、『万葉集』や平安文学に記述はない。『本草和名(ほんぞうわみょう)』(918ころ)や『倭名類聚抄(わみょうる いじゅしょう)』(931〜938ころ)には、タンポポの漢名の蒲公英に、タナ(多奈、太奈)とフチナ(布知奈)の和名をあてる。タナは田菜で、タンポポ の名は、タナがタンに転じて、それに花後種子の冠毛(綿毛)がほほける意味のホホが加わり、生じたとする見方がある(『倭訓栞(わくんのしおり)』『大言海』)。これに対し、タナはハハコグサかタビラコとの説もある。タンポポの花茎を短く切り、両端を裂いて、水に浸(つ)けると、放射状に両端が反り返り、鼓(つづみ)の形に似る。柳田国男(やなぎたくにお)や中村浩(ひろし)は、そのツヅミグサから鼓を打つ音(タンポンポン)と結び付いて、タンポポの名が 成立したと説いた。タンポポの名は江戸時代の文献からみえ、いけ花にも使われた。『抛入花伝書(なげいればなでんしょ)』(1684)には、根を焦がさぬ もののなかに含め、花色に黄と白をあげる。また、江戸時代には種子を播(ま)き、葉をゆがいて、ひたし物や和(あ)え物、汁の実などにして食べた。セイヨ ウタンポポはフランスなどでは現在も野菜で、改良された品種がある。セイヨウタンポポは明治初期に札幌農学校のアメリカ人教師ブルックスが種子を導入し、それが北海道に広がった。さらに明治10年代には東京にもフランスから野菜として輸入された。中国では唐代にすでに催乳や健胃などの薬に使われている。タンポポの漢名の蒲公英は字音の似た僕公罌の転訛(てんか)とされ、罌(オウ)はケシで、発音が英の呉音のオウと同じく、傷つければ乳液が出ることもタンポポと共通する。ヨーロッパでは花や根を強肝、利尿、強壮などの薬用に、根を炒(い)って、粉にしたのをコーヒーの代用に使った。綿毛を、愛される・愛され ないと、交互に吹いて、どちらが残るかで恋を占う遊びがヨーロッパにはある。中国では綿毛を詰めて枕(まくら)をつくった。[湯浅浩史]《『日本百科全書』文化史参照》
3,関東地方から山梨県,静岡県の野原や道ばたなどにふつうにはえる多年草。春にのばす花茎は葉より短く,高さ15〜30cm。毛が密生するがのちになくなる。この類は一般に葉を食用とし,根を健胃剤に用いる。また春の日を受けて花は開き,夜や曇天のときは閉じる。都会地周辺では帰化種のセイヨウタンポポに置き代わって急速に減っている。[学名]Taraxacum platycarpum Dahlst.《『牧野植物日本圖鑑』参照》
 
 
授業後における学生の声
文学7 投稿者:sb0105 投稿日:2010年 6月 8日(火)15時46分53秒
彼の作った辞典は内容はもちろん、スケッチが写真のように、生きているかのように、とても上手であることに感動しました。
身近な植物を調べてみたくなりなした。
「タンポポ」がすべて食べられるとは知りませんでした。
私の実家では菊の生花を食べます。
授業の最後に聞いた「命」のお話おもしろかったです。
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文学7 投稿者:lk8002 投稿日:2010年 6月 5日(土)22時06分34秒
最近辞書のルーツをたどる授業が多いですが改めて興味を持ったことを根気よく作業していくことに驚きました。
「蒲公英」は食べれるというのは知っていましたが未だに食べてみたいという気にはなりません。自分は植物の知識については浅い方ですがこれを機に 常識程度は身につけたいと思いました。
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文学7 投稿者:gk0221 投稿日:2010年 6月 4日(金)22時22分32秒
いつかの某テレビ番組で、道にある色々な雑草を見つけ、その場で天ぷらにして食べてみるという企画を見た事があります!!
その時は絶対腹を壊すだろうなと思っていましたが今回の先生の話を聞き、食べられないこともないのだと知り、びっくりしました。
もちろん「タンポポ」も食べていました。
牧野富太郎は人生を捧げられるほど熱心になれるものを見つけられ、その上、功績を讃えられ、本当に素晴らしく、羨ましいです。
已上