2002.01.24
大槻文彦編『大言海』10選
811004 高田祐子
あかがしら【赤頭】
能(のう)、歌舞伎、などに用いる赤く長き毛にて作る、多くは、赤熊(しやぐま)の毛にて作る。猩猩の演技などに被る。又、白熊(はぐま)にて作れるを、白頭(しろがしら)と云ひ、K熊(こぐま)なるを、K頭(くろがしら)と云ふ。延暦年中、田村麻呂が奥州蝦夷征討の時、磐井郡に居りし夷主惡路王が部屬を、赤頭と云ひき、韃靼人が入來りて、蝦夷と同棲して居たりしものか、など云ふ人あり。《吾妻鏡、「九、文治五年九月廿八日、田谷窟(たつこくのいはや)(平泉の西南)「是、田村麻呂将軍奉征夷之時、綸命賊主惡路王、丼、赤頭等、構寒之岩屋也》
http://accord.tripod.co.jp/BIGLOBE/nip16495.htm
金色の面「獅子口」に長い頭の毛、さらに金箔と藍色の対比により獅子の力強い様を強調している。写真の白頭の他に赤頭もある。
補遺:
髪の毛も鬼独特のヘアースタイルで、色によって位が決まっている。黒頭(くろがしら)は、用途が広く少年や妖精の役や男の亡霊などにも使う。赤頭(あかがしら)は、差毛(さしげ)と言って後ろに一握りの白い毛を加える。曲目によっては加えない物も有るが、鬼の他に神・天狗・妖怪・龍神・精などの役に使妖用する。
最後に白頭(しらがしら・はくとう)は老体を表し、話の後半にシテがかぶる後シテ専用の頭なのだ。老体の他に威厳・年功・霊力を強調したりと、位は最も高い。頭につけたり被ったりする鬘のことだ。
鬘(かつら)、姥鬘(うばかつら)、尉髪(じょうかみ)など 黒頭(くろがしら)、赤頭(あかがしら)など黒垂(くろだれ)、白垂(しろだれ)など 三つとも、毛の量は多く面を隠す様にかぶり、後の毛は腰より下まである。あかがしら【赤頭】水鳥ヒドリガモの異名。
あいどのづくり【相殿造】
~社の建築法の一種。相殿の二~を祀るために、二社を、一棟に連ねて造れるもの。《神造名目類襲抄、一、宮社「相殿造、二(ふたま)社とも云ふ」》建築は初期のものは素朴であり、時代とともに発達し変遷した。そしてそれぞれの文化の影響を受けまた仏教寺院のそれを取り入れたりして多様化した。その名称は、神明造・石間造(八棟造)・皇子造(春日造)・舎堂造(権見造)・相殿造(二間社)・禿倉(ほくら)造などと記されている。なお建築資材は元来
は木材であるが、後には石造・金銅制もあり、今ではコンクリート制のものまである。塗り方も本は素木(しらき)であったのが、朱塗や中には黒塗のものも現れた。
補遺:
相殿(あいどの):主祭神に対しひとつの社殿に2神以上対等に近い形で祭られる神(相殿神)。相殿造(あいどのつくり):相殿神を祭るため2殿以上を1つに併せて造った社殿。両肩から前に下げている毛は力毛(ちからげ)と呼んでいる。
この造は中世には武士の崇敬を承け「吾妻鏡」寿永元年(1182)・建久3年(1192)・貞永元年(1232)等に記載されている。
http://www.genbu.net/tisiki/sengen.htm
あかくちば【赤朽葉】
染色の名。朽葉色の、赤みを帶びたるもの 襲の色 目の色名。《弄花抄(牡丹花肖柏)赤くちばは、尋常(よのふね)のくちばの、赤き方に寄りたる色なり》11月の葉っぱたちは、紅と黄色だけでなく、光の加減、風の具合、それからこちらの気分でさまざまな色を見せてくれます。落葉が地面に張り付いてしっとりとなった後の色を、日本人は赤朽葉、黄朽葉、青朽葉、濃朽葉、薄朽葉など、様々な表現をしてきました。
色とは、人間の目が感知できる、ごく一部の波長の電磁波に過ぎません。虹の色も連続したスペクトルを示しますが、便宜上七色と表されます。人間が見分けられる色の数は約1000万だとか。虹の色を赤から紫まで七色で呼ぶのも自由、勝手気ままに心象で分類するのも自由。そこは皆様の感性次第。エバーグリーンよりも常磐緑、スノーホワイトではなく雪白、スカーレットより緋色の方がおしゃれだと思います。袷の着物の表地と裏地の配色を、昔から重色目と言いますが、四季折々の花鳥風月にちなんだ名前がつけられています。秋だと、紅葉、朽葉を始め、桔梗、女郎花、月草、九月菊など、日本人の美意識の高さが感じられます。こんな美しい日本語を、いつまでも大切にしたい。
補遺:
赤みを帯びた黄色。(旺文社国語辞典より)植物の葉が落ちて腐った色で、平安時代から用いられた色名だ。衣服の色としては広く用いられて、「朽葉四十八色」といわれるほどさまざまなバリエーションがあった。■黄朽葉(きくちば)、■赤朽葉(あかくちば)、■青朽葉(あおくちば)、濃朽葉(こきくちば)、薄朽葉(うすくちば)などがある。 http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Icho/9109/kasane-irome.htmlうなどん【鰻丼】
丼物の一。うなぎどんぶりの略。飯の上に鰻のかば焼きをのせてたれをかけたもの。うなどん。
私達が良く知っているうなぎ料理の数々。その中でも一番親しみやすいのがこちら。あつあつの御飯の上に、美味しそうなうなぎをのせたうな丼。
補遺:
どんぶりに盛った飯の上にうなぎのかば焼きをのせた食べ物。(旺文社国語辞典より)うな丼は、享保年間、当時江戸の芝居金方だった大久保今助が、故郷常陸太田に帰省途中の牛久沼で、丼飯の上に蒲焼の皿をかぶせ、渡し舟に持ち込み食したところ、大変美味であった。それが江戸中に広まったと言われている。以来牛久沼は、うな丼発祥の地として知られるところとなり、その伝統は、今日まで受け継がれている。http://www.ktv.co.jp/ARUARU/search/aruunagi/unagi3.htm
うのはな【卯花】
〔豆腐の空を嫌ひて、得の花と云ふ、梨を、ありのみと云ふと、同趣〕豆腐のから。きらず(雪花莱)の異名。豆腐のしぼりかす。おから。きらず。
うのはなあえ【卯の花和え】調味して煎ったおからで,魚や野菜を和えたもの。
[
材料]おから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120
gプロテイン・・・・・・・・・・・・・・・・・36
gにんじん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
g干し椎茸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3枚
ごぼう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
/2本鶏モモ肉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
gだし汁・・・・・・・・・・・・・・・・・・400
cc上白糖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ6
醤油・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ5
酒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ1
サラダ油・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
補遺:
万葉集には24首に登場する。その多くが、霍公鳥(ほととぎす)とセットで詠まれている。「卯の花の匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて」という歌を聞いたことがある。 http://www2b.biglobe.ne.jp/~shidashi/ohsu/unohana.htmlうばがい【姥貝】
あかがひの一種。縦の筋、最も細かくして、殻の一片短きもの。肉を乾して、食用とす。淡水魚類
ホッキ貝(北寄貝)
茨城県鹿島灘以北から、岩手、青森、北海道、サハリン(樺太)、オホーツク海沿岸に生息している。ホッキ貝は正式には「ウバ貝(姥貝)」であり、関東や東北、北海道でよく食べられ、ホッキ貝(北寄貝)と呼ばれており、その名が全国に広がった。近年は需要が多くなり、近種のアメリカウバ貝がカナダ方面から多く輸入されている。この輸入貝は、国内物に比べると、身の色の赤みが濃厚なものが多い。ホッキ貝は寿命がかなり長く
30年以上といわれている。正式名称の姥貝は、この寿命に由来していると言われている。ホッキ貝の生の時は、薄紫色だが、湯通しすると鮮やかな桃赤色になり、しこしことした歯 ざわりと特有の香りと甘味がなんともいえない。栄養的にも、良質のタンパク質やミネラル分が多く、コレストロールの低下や高血圧予防など申し分がない。食べ方は、生食で造りやすし種、酢味噌和え、焼物、ホッキ飯、汁の具、フライ、天麩羅等で賞味してほしい。補遺:
北寄貝(ほっきがい)」という通りの方がよく知られているが、標準名は「姥貝(うばがい)」。関東以西でも鮨種、刺身として名前が知られるようになったが、北海道や東北では昔から鮨種として重用されてきた。
http://www.nichirei.co.jp/n_town/fish_dic/fish03.htmlうぬぼれ【己惚】
己れ自ら、己れに心醉(ほ)れる。自ら好しと誇る。うぬぼれること。おのぼれ。自慢。《おのぼれるに同じ。》
【自惚れ・己惚れ】
自分をすぐれていると思う気持ち。「―が強い」(新辞林より)
自惚の強い
self-conceited.(EXCEED英和辞書より)補遺:
自分の力を過信し、得意になること。自分を愛し過ぎている状態。今と意味はあまり変わらずに使われている。うばう【奪】
強ひて取る。理不盡に取る。ぬすむ。掠め取る。竊《名義抄「掠、うばふ、かすむ」字鏡「簒、宇波不》うば・う【奪う】
(動五)
(
1)力ずくで他人のものを自分のものにする。強奪する。(
2)ある人のもっていた権利・地位を失わせる。また,とってかわる。「自由を―・う」「王位を―・う」(
3)ある人がもっていたものをなくす。失わせる。「命を―・う」(
4)肉体をおかす。「貞操を―・う」(
5)性質や成分などを取り去る。「エネルギーを―・う」(
6)心や注意などを強くひきつける。「景色に心が―・われる」(
7)競技などで,得点する。また,タイトルなどを獲得する。(新辞林より)⇔(対になる言葉)与える 〈子供を〉攫
(さら)う 〈財布を〉掠(かす)める 掠め取る ふんだくる 引ったくる 奪い取る 横取りする 〈持ち物を〉取り上げる 巻き上げる 吸い上げる 〈金品の〉略奪〈財産の〉奪略 奪取 強奪(ごうだつ) 暴奪 横奪 横領 剥奪(はくだつ) 没収 押収▽取り返す 取り戻す 奪還 奪回 回収奪う
[ひったくる] take〈a thing〉away 《from a person》; [盗む] rob 《a person of a thing》; [地位,権利,自由を] deprive 《a person of his rank, rights, liberty》; [人目を] dazzle《one's eyes》; [野球でヒットを] win 《five hits》. 奪い合う struggle 《for》. 奪い返す take back; recover. 心を奪われる be fascinated [charmed] 《by》; lose one's heart 《to a woman》(EXCEED英和辞書より).補遺:
むりに取り上げる。影響を及ぼす人の意志を無視して取り上げるうばくか【右幕下】
右近衛大将の居所。《吾妻鏡、二十二、建保六年三月十六日「御使入洛之時、任之刻故大将軍(頼朝)之例、可被任右、仍右幕下擬被慎申、云云」》古老伝云、当寺草創最初所被建立之楼門荒廃之間、依文覚上人之勧進、建久右幕下施入銭一万貫文、如旧造営之云々、金剛力士、大仏師康誉法眼注進云、二王作者
惣大仏師運慶金剛 東 運慶
力士 西 湛慶(南大門の条より)
鎌倉元の如く柳営たるべきか、他所たるべきや否やの事就中、鎌倉郡は、文治に
(3)右幕下始めて武館を構へ、承久に義時朝臣天下を併呑す。武家に於いては、尤も吉土と謂ふべきか。爰に禄多く権重く、驕を極め欲を恣にし、悪を積みて改めず。果たして滅亡せしめ了んぬ。縦ひ他所たりと雖も、近代覆車の轍を改めずば、傾危何の疑ひ有るべけんや。(中略)然らば居処の興廃は、政道の善悪に依るべし。是れ人凶は宅凶に非ざるの謂なり。但し、諸人若し遷移せんと欲せば、衆人の情に随ふべきか。(『建武式目』)補遺:
右幕下とは右大将のことであり、源頼朝・北条義時もそうだった。 http://homepage1.nifty.com/sira/baisyouron/baisyou17.htmlぬしぶろ【塗師風呂】
塗物を入れ置きて、乾かす室。塗師風呂(ぬしぶろ・回転風呂)
漆がたれてくるのを防ぐため、一定時間ごとに漆器を回転させながら乾燥させる。
補遺:
塗師風呂とは、杉板で作られた陰室のことで、内側に霧を吹いて適度な湿度を保ってくれる。
参考文献:『新辞林』
(松村 明・佐和隆光・養老孟司監修三省堂編修所 編) 三省堂『EXCEED英和辞典』『万葉集』『大辞林』[新装版](松村明 編)旺文社『国語辞典』