2007.05.01更新
04の講義内容
「東アジア漢文文化圏」における現在の学術研究レベルと成果
―その研究領域の一般活用と手続き―
0,「東アジア」……中国を中心に見て、そこからの東である琉球・朝鮮半島・日本地域。これに越南を加えるとすると「東南アジア」となる。
※參考文献『東アジア文化圏の形成』(山川出版社、二〇〇〇年刊)
「漢字文化圏」から「漢文文化圏」へ(時空を超えた書記言語の世界=筆談義)
宗教を核とした文化圏…キリスト教文化圏、イスラム教文化圏、ヒンドゥー教文化圏、仏教文化圏
「漢文文化圏」…冊封関係、漢文文化、儒教、律令、仏教
※
萬國一覧圖(文化六年己巳夏六月 備中倉鋪 古屋野意春元鄰製;香山樓社中藏版)
1,「変体漢文」→義経「
腰越状」
本文翻刻(往来古状消息「候体文」)・吏吐文(朝鮮)・元朝、蒙古式漢文、吏讀文、女書(湖南省江永県地域)など
「候文」をもっと読もう!…認識の欠落からの脱却をめざす
「文字」→カタカナ・ひらがな(日本)、
チュノム(ベトナム)、西夏文字、契丹文字、女真文字、ハングル=諺文(
オンモン)(韓国)
混種文字で文章化→和漢混淆文
※明代『剪灯新話』→朝鮮『金?新話』、ベトナム『傳奇漫録』、日本『伽婢子』(浅井了意)
※『敦煌願文集』願文範本(花園大学禪文化研究所刊)
2,佛典(漢譯佛典)資料から見た東アジア文化圏
敦煌文書・トルファン文書→マイクロフィルムや影印資料
『佛説廣本太歳經』
3,東アジア漢文文化圏の交流
開放期と閉鎖期
※参考文献…『古代アジアの文化交流』(井上秀雄編・溪水社刊)
日本の文字と韓国・朝鮮の文字との間にみられる類似と相違とは、それぞれが中国文化に対応する姿を端的に示している。またそのことが日本や韓国・朝鮮の文化を性格づけてきたのである。ところが日本の学界では、文化表現のもっとも重要な手段である文字についての研究がとどこおっていると思われる。たとえあっても、その多くが言語学的な研究の素材とみられ、文字そのものの研究が十分でなかったといえよう。その原因の一半は、欧米での文字が表音文字で、音韻を表示するだけのものであったためであろう。 また、日本や韓国・朝鮮では、中国で創作された漢字を忠実に借用してきたとする先入観が強い。そのため、同一文字で表現される場合、中国・朝鮮・韓国・日本でそれぞれ異なった内容を示すことが少なくないにもかかわらず、その内容を検討することなく、字義にとらわれてしまうことが多い。文字と実体とが相違することは異質の文化を受容する際にしばしば起こる現象である。日本や韓国・朝鮮での漢字使用は、固有名詞を別としても、必ずしも中国の原義によらない場合が多い。日本や韓国・朝鮮で漢字を使用する人たちには、「慕華思想」が強く、漢字のもつ原義や中国での使用例を理想型と考える場合が多い。そのため、漢字・漢文による表現が、日本や韓国・朝鮮の実情を伝えることより、漢字。漢文の使用を通じ、中国の規範で自分たちの文化現象を律しようとする傾向が強い。また、借用の文字は本来の意味に用いられるが、一部の類似を拡大して異質な文化現象をさすこともある。そのうえ、中国では漢字・漢文が時代とともに変化する。それは単に漢字の発音だけでなく、その意味もまた時代とともに変化する。この漢字を受容する韓国・朝鮮や日本では、さきに受容した古い漢字意味や発音が残り、それを受け継いで変質させたものも残存する。そこに新しい発音や意味内容の変化した漢字が流入し、複雑に混合しながら借用されるのである。同じく漢字に傾倒する学者でも、その関心の所在によっては、新旧いずれかの漢字に力点がおかれる。そのため、同一の事柄を記録する場合に、異なった漢字・漢文で表記することもおこる。〔211頁六行目〜212頁四行目抜粋〕
倭寇の出没
4,東アジア漢文文化圏の學藝
中国書
陶弘景『本草經集註』(典藥寮テキスト)
蘇敬『新修本草』
和 書
※出版と醫學
A天文學(陰陽道)
B「通事」という職の人たち
『薩琉軍記』
C漢文の物語文献
僧景戒『日本霊異記』仮借文字の利用→ベトナム語訳『日本霊異記』(グエン・ティ・オワインさん)
→アラビア語の『カリーラとディムナ』