2001.05.21[文献資料を読む]

角筆文献

角筆資料研究室(広島大学)

参考資料

小林芳規編『角筆のみちびく世界』日本古代・中世への照明《中公新書909》1989年1月刊、定価680円

上記資料に基づいて解説する。

  1. 角筆文献の時代
  2. 角筆文献の源流「中国」

     

  3. 角筆文献の広がり
  4. 角筆を実際に使用した人たち

    小野篁(802〜852)の書いた「かくひち」の恋文

    平安朝文学『篁物語』(実録風の短編物語)に、

    この男、いとをしきさまを見て、すこし馴れゆくまゝに、顔を見え物語などもして、文のてンといふものを取らせたりけるを、見れば、かくひちして、一首をなん、書きたりける。

      中に行く吉野の河はあせなゝん 妹背の山を越えて見るべく

    (ふたりの間を隔てているものが無くなってほしい、あなたを見ることができるように……)

        平安日記文学『蜻蛉日記』(藤原倫寧の女)巻下,天禄三年(972)八月に、

    白い紙に、もののさきにして、書きたり

    たじまのやくゝひのあとを今日みれば 雪の白浜白くては見し

    平安朝文学『源氏物語』の「つまじるし」

    例の、大将、左大弁、式部大輔、左中弁などばかりして、御師の大内記を召して、『史記』の難き巻々、寮試受けむに、博士のかへさふべきふしぶしを引き出でて、一わたり読ませたてまつりたまふに、至らぬ句もなく、かたがたに通はし読みたまへるさま、爪じるし残らず、あさましきまでありがたければ、 「さるべきにこそおはしけれ」 と、誰も誰も、涙落としたまふ。大将は、まして、 「故大臣おはせましかば」 と、聞こえ出でて泣きたまふ。

    角筆とはどのようなものか

     色糸の装飾  『長秋記』に「角筆 紫と白と黄色の糸組を以て緒と為す」《読み下し文》

     形状について 『後深草院御記』建治二年(1276)六月二十五日皇太子読書始の儀に、「長さ五寸九分、紫・白の糸紐を付く」

  5. 角筆によることばの世界

角筆の文字表記

 神田喜一郎博士旧蔵(京都国立博物館所蔵)『白氏文集』巻第四・李夫人に、

   小川広巳氏蔵『伊勢物語』(伝爲相筆・鎌倉時代写)

「みずいじん」「花ざかり」、句切れ符号。

角筆の持つ俗語性