1999.10.20
「複合辞」と「連語」そして「条件句」
−室町時代文献資料にみる「条件句」表現形式−
なれば
○朝腹のこと{
なれば}、吐却すれども、痰より外は別に吐き出さなんだところで<『伊曽保物語』4頁>*輕い原因・理由を表す置換可能語は、「によつて、ところで」。○朝腹のことなる{ニヨツテ}、吐却すれども、
○朝腹のことなる{トコロデ}、吐却すれども、
○天下おさまりめでたいおりから{
なれば}、此處に牛馬の市をたてさせられて御ざる。<虎明本「牛馬」一167頁>ござれば
○我は兵法の上手で{
ござれば}、とかく相手に甚だしい二つ三つの疵を付けまらした。<『懺悔録』26頁>○誠に、天下治まり、目出度い御代で{
御ざれば}、我らごときの民百姓迄も、足手息災に、毎年/\御年貢を納ると申は、近頃めでたい事で御ざる。<虎寛本「三人夫」上170頁>*舞台用語としての独白体表現○一人めしつかはるゝ下人で{
ござれば}、申たり共くだされまひとぞんじて、かすんで竹生島へまいつてござる。<虎明本「ぬら/\」一397頁>*中世口語の会話文に使用した例。ほどに
○検校の坊、平家の由来が聞きたい{
ほどに}、あらあら略してお語りあれ。<天草版『平家物語』巻一・一5頁>○ここはとっとおもしろいところでござる{
ほどに}、本々に節をつけて語りまらせう。<天草版『平家物語』巻四・一二250頁>程に
○きやううちまいりと云に付て、都の様子がきゝたひ{
程に}、此度はゆるす。<虎明本「じせんせき」一361頁>呈に
あいだ
間、
○多聞の御福を、清水にて給はらふずる{
間}、急いで清水へ参候へとの御夢想にて候。<虎明本「びしやもん」一30頁>ところで
○さりながら後生を扶かる為にお水を授かるより外別の道が無い{
ところで}、誰とてもゼンチヨの者共は後生を扶かること曽て罷ならぬ。<『懺悔録』9頁>○わらはもいやではなけれ共、あれがはなさぬ{
ところで}、せう事がおりないよなふ。<虎清本「さるさとう」33頁>*原因・理由表現○さりながら身共もむつかしひ事じや{
所で}、そらに覚ぬ。<虎明本「はうちやう聟」一579頁>*原因・理由表現に付て(につけて&につきて)
○きやううちまいりと云{
に付て}、都の様子がきゝたひ程に、此度はゆるす。<虎明本「じせんせき」一361頁>○先度都へ参らは、同道なされうとおほせられた{
に付て}、さそひにまいつた。<虎明本「ふたり大名」一448頁>によりて
によつて
○「女は智恵浅う、無遠慮な{
によつて}、他に漏らいて仇となるぞ」<『伊曽保物語』20頁>○幼い者どもがけさからあまりに慕ひまらする{
によつて}とかうすかしまらするうちにおそなはつてござる。<天草版『平家物語』巻三・八160頁>によて
により
○今日吉日にて有{
により}、みよしのよりむこ殿の御出にて候間、申付はやと存る。<虎明本「猿聟」一645頁>*語り中の表現に依て
がゆゑに
が故に
ゆゑに
○かやうにしんじてまいる{
ゆへに}、たがひに仕合もよふてうれしゆ御ざる。<虎明本「連歌毘沙門」一15頁>故に
○われふくべの神ともいはれし{
故に}、はちたゝきどもしんして、あゆみをはこぶ心ざしやさしければ、すがたをおがませんため、是まで出たるぞとよ。<虎明本「はちたたき」一207頁>*文章語表現から舞台用語の改まった口調口語表現化。ゆゑ
故、
をもちて
をもつて
を以て
まま
○ムコワカ√めでたかりける、時とかや[割注]√一さし舞有、しうとあまりまいがみぢかく候{
まゝ}さゆうへまはりて御まい候へといふとき<虎明本「ひつしき聟」一575頁>*文章語表現。さかいに
○とかくそのお奉行キリシタンのことをうちくぢつてからはそのまま上(かみ)罷り上(のぼ)られてござる{
さかいに}、何もえ致しまらせいで今までこの分に罷り居るが<『懺悔録』14頁>さかい
て(で)、
○√さらはさかいへいて、さかなをとつてこひ √又いづみのさかいと仰せらるゝ{
で}、又おこつた、あいたやなふ<虎明本「しびり」二183頁>
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課題]「条件句」表現形式語の上接語・下接語の種類との関係についてMAIN MENU