1995.08.20発信


北海道のパワ−エネルギ−栄養食品『根昆布』


萩原義雄

根昆布との出会いは、古くて新しい気がする。というのも日本最北端の島花の浮き島礼文島1周(周囲70キロ走行可能距離65キロ)を私が走るようになって11年が過ぎた。この島の産物はウニと昆布が取り分け知られている。ウニは昆布を主食にして育つ。いわば、昆布がなければウニも採れないという関係にある。その昆布なのだが、以外と知られてないのである。礼文島では天然物の昆布は貴重なのである。養殖物もロ−プに移植しているが、俄然色合いそして形なにより質がちがうことはいうまでもない。この昆布昔からなぜか利尻昆布と言う名のもとで世に送り出されてきている。昆布漁はまぎりという道具で巻き取るようにして採取する漁法と鎌で刈る採取法が行われている。
朝いちばんで採取した昆布は、一家総出で浜の敷石に干される。この干す時に昆布を根から切り取る作業がある。晴れ渡った夏の朝6時ごろ東海岸の漁場を走っていると必ずその光景に出会う。そして根昆布と出会った。敷石に座ってはさみで作業する古老に声を掛けたのがそもそものはじまりであった。古老は言う。高血圧の薬になるよと、そして好きなだけ持っていきなさいと私に差し出してくれたのが縁であった。これを噛みながら走るのだ。以外と活ける。口の中で噛み続けているとうすい塩味の香ばしさが甘くねっとりた味加減に変化する。これがなんともいえないのだ。そして、腹にもたれないときている。これをここ数年ウエストバッグに容れて走るようになった。西海岸に入ると食品などを求める店屋がめっきり少なくなる。こうした大自然の中で根昆布と付き合うようになった。
前置きが長くなってしまったが、この根昆布100グラム詰めにして千歳空港の売店でも1000円で手に入る代物だ。買う時は礼文昆布でなく利尻昆布……。北海道を走りにきた折にでも土産として購入したらいい。がさばらず、重くなく持ち運びに便利ときている。これを自然の水に二三個落として「昆布水」として呑むのも効果がある。一晩つけたものを給水のドリンクとしても利用する。これもねっとりした甘みのある味わいが加味され、エネルギ−補給にはもってこいの補給食品なのだ。一度試みてみては如何……。
ところで、この礼文の根昆布の栄養バランスについて触れておくことにしたい。


















 
水分 10.0
たんぱく質 8.0
脂質 2.0
糖質 54.3
繊維質 5.4
灰分 20.3
カルシウム 760
リン 240
2.4
ナトリウム 2700
カリウム 5300
レチノ−ル
カロチン 900
A効力 500
ビタミンB1 0.80
ビタミンB2 0.35
ナイアシン 2.0
ビタミンC 15
食品担当分 0.1

 

 このなかで、ヨ−ド(ヨウ素)が甲状腺ホルモンの分泌をうながして新陳代謝をよくする働きがあることと、鉄分が貧血予防に効能を発揮することが知られている。

また、明治製菓の栄養管理者藤沢いづみさんいわく、ランナ−の補給食として谷川真理さんは酢昆布を利用しているとのこと。この昆布こそは走るランナ−にとって海の自然が与え賜うた恵みある食品だと私は思っている。土地の古老は「黄金色の昆布」と呼ぶ。
 

昆布の歴史

昆布は和名「がごめ」。本邦で最初に記述された文献資料は『続日本紀』(797年)である。奈良平安時代を通じて朝廷献上物産品として木簡などに記載されたものやらが見いだされている。戦国時代は保存食として使用され、加藤清政が熊本城の石垣の石を運ぶのにこの昆布のぬめりを利用した話説が知られている。江戸時代には関西でさまざまに加工されるようになり、一般庶民の食卓調理品としてのぼるようになったのは昭和になってからのことであるところが意外と知られていないところでもある。
 
 
 
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