時事会計No.

ストックオプションとM&A会計

:グローバリズムと会計問題

日経01年8月20日

Key words: ストックオプションの費用計上、のれん代の償却問題、会計基準の国際的統一化、IASB、FASB

 

 国際会計基準理事会(IASB)がストックオプション(自社株購入権)やM&A会計についてより厳格な会計基準にする方針を打ち出したというのがこの記事である(8月20日記事 )。この2つの会計は株価への影響が大きいので特に緊急性が高いと位置づけられている理由も重要なところだが、もっと注目するべきは、その解説記事での機関投資家への配慮という点である。

 それにふれる前に、若干解説しておくと、ストックオプションの会計問題とは要するに権利の支給が人件費となるか否かである。これまでは人件費として処理されていなかったが、IASBはそれを人経費に計上することを検討しているわけである。一方、のれんの償却については、すでに別の機会(時事会計No.2)でふれているので詳しくは省略するが、要するにのれんの時価評価損失(減損)を計上するということである。いずれも、従来よりも利益が減少することになるので、その意味でより厳格な規準といえる。

重要な点はその背景であり、ここに機関投資家が登場する。すなわち、国際投資をおこなっている機関投資家にとって、国際投資であるがゆえに、比較の規準つまり会計基準を統一しておきたいわけである。それに配慮したIASBが国際会計基準の統一化を担っているというわけである。ここに、機関投資家資本主義(インベスター・キャピタリズム)と会計基準の統一化という局面が浮かび上がってくる。

 

〈関連記事〉これに関連して、IASBのトウイディー議長へのインタビュー記事がでているのも注目される(9月27日)。そこでは、おなじくストックオプションとのれん代の償却の2つの会計問題が議論されている。ストックオプションについては、費用計上されると米企業の純利益を平均9%減少(通信企業は18%、ハイテク企業は32%減少)させるので、米国の産業界では反対が根強いとのことであるがなんとか2003年末までに結論を出したいとし、またのれん代の償却問題では、FASBの減損テストに甘い点があると発言しているのが、それぞれ注目されよう。

 より注目されるところは、IASBでの日本の役割についてである。南アフリカの例をひいて「日本の専門性は何か。前向きな姿勢を我々は歓迎する」と言っている点が注目される。では、はたして彼らに歓迎される日本の専門性とは何であろうか。そこでの文脈からは理論的貢献というよりは、まずは実務的専門性というようにも読みとれるが。

〈さらなる学習その1〉ストックオプションについては、株価の長期低迷で権利行使ができないケースが増えているとの11月5日の記事がでている。ストックオプション経営が「曲がり角」を迎えているというわけだ。こうしたストックオプションそのものの問題点を指摘した記事はけっこう多い。例えば「ストックオプションの罪」と題した「大機小機」の記事(9月28日)がある。

〈さらなる学習その2〉さらに、ここでの学習とかかわって「グローバリズムと会計問題」という点についても考えておかねばならない。この点に関して『文明の衝突と21世紀の日本』(ハンチントン/鈴木訳、集英社新書、2000年)を1つの有益な参考図書としてあげておこう。

例えば、「唯一の超大国の指導者として、アメリカの官僚たちはきわめて自然に、まるで世界が一極システムであるかのように考え、行動する傾向にある。アメリカの力とアメリカの美徳を鼻にかけ、自国を慈悲深い親切な支配者だと考えている。そして、他の国々に、アメリカの原則、週間、制度の普遍的な正当性について説教をたれ、他のすべての国もそれを採用すべきだとして押しつけようとする」(43頁);「エコノミストの発言力が強い日本の知的社会では、経済人を中心にバランスを失した『グローバリズム』論によって歪んだ世界観に陥っている日本人が多い現状を考えれば、『文明の衝突』論は、きわめて健全なバランス効果をもつはずである」(202頁、中西輝政の解題より)。

バランスを失したグローバリズム論に陥っているのは経済人のみならず、大学人にもけっこう多いのである。(こうしたグローバリズムの問題点については、拙稿「時価会計と資本利益計算の変容」(200110月)の「9 会計規制の国際動向:調和化から統一化へ」を参照されたい。ペーパーはホームページに掲載中)。

(以上、200111月)