時事会計No.

アメリカの決算発表と「実質ベース」利益

: プロフォーマ数値の乱用とSECの警告

日経01年9月3日

Key words: 財務業績報告、プロファーマ、FASB,IASB

 

アメリカ市場では多くの企業がリストラ損失などの一時的な費用を除く独自の実質ベースの利益を決算発表している。日経01年9月3日の記事では、デルコンピュータ、デュポン、ヤフーの事例がでている。会計基準に基づかない各社各様の独自の判断で「実質利益」が報告されるので、悪用されると投資家に誤解を与えるおそれがある。特に、経済が落ち込んでくると、リストラ損失などが除かれて、企業に都合のより利益が市場に流される。実質利益の悪用というわけだ。そこで、SECもFASBも黙って見ておれず、動き出したというのがこの記事である。

 

〈関連記事〉@「実質ベース利益」乱用に警告(12月6日):12月4日にアメリカSECが決算発表のさいに「実質ベース」の数値を安易に使わないように警告。A米同時テロ被害額、「特別損失計上」を認めず(10月3日):FASBの緊急課題特別委員会(EITF)がこの方針を決定した。しかし、「実質ベース」の決算発表では企業は独自の判断で公表することになりそう。

〈さらなる学習〉財務業績報告のあり方にかかわる問題である。IASBは2001年8月に今後検討する9つの議題を公表したが、そのなかに(保険会計、企業結合、株式報酬制度とともに)業績報告が主要な議題の1つとして取り上げられている(来年度中には公開草案が出る予定)。また、FASBもこの8月17日に企業の財務報告に関するアジェンダ・プロジェクトを提案している。この問題はG4+1の特別レポート『財務業績の報告』(1998年)およびポジション・ペーパー(1999年)で議論されているが、その将来方向は要するに財務業績報告の多元化方向である。

これに関連して、わが国でも日立が本業と金融を分けたB/SとP/Lを開示しているのは興味ぶかい(日経11月4日の「『本業』『金融』分けて開示」)。トヨタ、ホンダ、日産、日立などのケースは今後、「本業」と「金融」を分けて開示するケースとしてさらに他の企業にも広がることが予想される。

〈理論的課題〉財務業績報告の多元化方向にあって伝統的な原価・実現の枠組みによる成果計算がどのような位置づけになるのか。(拙著『時価会計の基本問題』第9章参照)

(以上、200112月)