時事会計No.

ITバブルの崩壊と「のれん代」の巨額の評価損(減損)

:JDSユニフェーズとAOLのケース

日経01年7月27日

〃 02年1月8日

 

Key words:買い入れのれん、ITバブル、企業結合会計、無形資産会計、FASB新基準

 

北米企業の巨額(5兆5千億円)の「のれん代」の評価損(減損)の計上が相次いで報じられている。最初は、JDSユニフェーズのケースであり、のれん代の巨額の評価損(減損)5兆5千億円(440億ドル)が特別損失に計上されたことが報じられている(日経01年7月27日)。FASBはのれん代の償却(最大40年、通常20年均等償却)から評価損(減損)の計上へと会計基準を変えたことがその背景にあるが、それにしても巨額の損失である。さらに、その背景にはITブーム時の高額の買収額がある。こうした買収絡みの巨額の特別損失は他の企業にもでているが、特にJDSをさらに上回る巨額の損失(600億ドル)が報じられたAOLのケースがある(02年1月8日夕刊)。AOLはタイム・ワーナーを史上最高の1,830億ドル(@125円換算で22兆8千7百億円)で買収したが、今日、そのつけが巨額の減損として出てきたわけである。いずれも景気拡大期に積極的なM&Aで肥大化した資産を圧縮する必要に迫られているわけだ。

 

〈関連記事〉これに関連して、M&A新会計基準につきFASBのジェンキンス会長へのインタビュー記事がのっている(8月17日)。そこでの重要な点は、M&A会計におけるパーチェス方の一本化と、(それと引き換えに)のれん代の償却を廃止して減損方式のみにした会計基準(SFAS No.141,142)への変更の理由である。すなわち、ジェンキンス氏はそれを端的に「のれん代償却はとても恣意的なもので、それ自体にはほとんど情報価値がない」と述べている。のれん代の償却を廃止したのは、これ以外にもハイテク業界からの政治的圧力があった点も否定していないが、この「情報価値がない」という見方が特に重要である。→理論的課題を参照。

〈さらなる学習〉要するに、買い入れのれんの償却は廃止され、必要な場合は評価損(減損)を計上する方式(an impairment-only approach)に変更されたわけだが、このFASBの「企業結合」(No.141)および「のれん及びその他の無形資産」(No.142)の新基準は、ウエブサイト(http://accounting.rutgers.edu/raw/fasb/summary/)からそのサマリーが容易に得られる。わずか4ページほどで、しかも英文は読みやすい(Statementそのものが一般に英文として読みやすい)ので原文での学習も試みられたい。→資料にその冒頭部分を紹介。

〈理論的課題〉実証研究と会計基準:ジェンキンス会長の発言にもみられるように、パーチェス法の一本化と、(それと引き換えに)のれん代の償却を廃止して減損方式のみにした会計基準(SFAS No.141,142)への変更は、企業価値とのかかわりで会計基準が決まる1つの典型的なケースとみることができる。つまり、償却から減損への計算論的根拠づけによる変更ではなく、企業価値(株価)への有用性という外的論理、およびその背後にある業界からの陳情を受けた議会の圧力といった外的要請がその重要な会計基準の変更に作用しているわけだ。ここに実証研究と会計基準のかかわり、およぶその理論のあり方にかかわる問題がある。(拙稿「時価会計と資本利益計算の変容」(200110月)の「10 理論のあり方:プロフェッション性および実証研究」、「11 実証研究と会計基準」を参照。ペーパーはホームページに掲載中)。

(以上、2002年1月)

〈FASB資料〉

Summary of Statement No. 141 Business Combinations (Issued 6/01)This Statement addresses financial accounting and reporting for business combinations and supersedes APB Opinion No. 16, Business Combinations, and FASB Statement No. 38, Accounting for Preacquisition Contingencies of Purchased Enterprises. All business combinations in the scope of this Statement are to be accounted for using one method, the purchase method.

Summary of Statement No.142 Goodwill and Other Intangible Assets (Issued 6/01)This Statement addresses financial accounting and reporting for acquired goodwill and other intangible assets and supersedes APB Opinion No. 17, Intangible Assets. It addresses how intangible assets that are acquired individually or with a group of other assets (but not those acquired in a business combination) should be accounted for in financial statements upon their acquisition. This Statement also addresses how goodwill and other intangible assets should be accounted for after they have been initially recognized in the financial statements.