時事会計No.

EBITDAへの不信

:実質利益と会計基準

 

 02年7月12日 日経金融新聞

 

Key words: 実質ベース(プロフォーマ)の業績、財務指標、投資尺度、フリー・キャッシュフロー

 

 このところの会計不信を象徴しているのがEBITDA(イービッダー)への不信である。EBITDAとは純利益に支払金利、税金、各種の償却費を足し戻す実質利益の一種である。一番の問題点は、企業が株高を演出するために悪用しているという不信感であり、実際、ワールドコム粉飾決算のケースでもEBITDAによるかさ上げを狙ったものであることが指摘されている。日経金融新聞7月12日では、このEBITDAと株価との相関性がPER(株価収益率)との比較で出ているが、その実証分析によれば前者の相関性はみられない。それに対しPERの方は相関性が高く、ここにきてその再評価の動きがでている。

 それにしてもEBITDAやプロフォーマ利益などの“実質利益”が決算公表されることを思うと、会計基準とは何だったのかをあらためて考えさせられてしまう。厳格な会計基準によって公表される財務諸表をよそに、それをいわば(企業寄りに)加工した実質利益が公表され、それが投資決定情報として利用される。どうせ加工されるなら、極端に言えば、できるだけ(加工されていない)なまのデータを出せばよい(データベース開示)。そのデータを会計ルールによって高度に加工したものを、さらにそれも企業に都合のよいように再加工されているのである。

 確かに会計ルールにまだ国際的統一ルールはない。EBITDAの加工には、減価償却、税金、金利など各国制度や会計基準の違いを反映するものであるかもしれないが、それなら会計ルールの影響を受けることが少ないキャッシュフロー計算書をもっと利用すればよい。実際、フリーキャッシュフローを用いた財務指標あるいは投資尺度が用いられている。

 

〈関連事項〉日経7月2日では「広がるEBITDA敬遠」と報じている。そこではEBITDAを使って決算説明する企業には投資しない、という投資家側の方針が伝えられている。ワールドコムと同じくEBITDAを使っていたAOLなど他の企業の株価も売り圧力が高まって値を下げている。

〈関連学習〉「利益は意見、キャッシュフローは現実」といった言葉に象徴されるように、キャッシュフローは利益計算のように会計方法に左右されない、これが1つの強みである。それだけでなく、「勘定合って銭足らず」という言葉に象徴されるように、たとえ利益があってもキャッシュが赤字では配当もできないし、さらには黒字倒産ということさえ起こりうる。企業経営にとって重要なことは、利益をあげることはむろんだが、それが営業によるキャッシュフローの増大につながっているかということである。より具体的に言えば、企業が自由に使えるキャッシュフロー(フリー・キャッシュフロー)をどれだけ稼いだか、これが重要である。そして、その稼いだフリー・キャッシュフローをどう使っているか、その使途が経営者の手腕として注目されるわけだ。

フリー・キャッシュフローとは何を「フリー」と考えるかによって異なるが、一般には営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたもので、その使い道として例えば投資の拡大、有利子負債の圧縮、配当の増額、自社株買い、などがあげられる。要は、稼いだフリー・キャッシュフローをどれだけ株主に還元しているかということである。その典型的な指標として2つあげておこう。1つは@1株あたりキャッシュフロー(営業キャッシュフロー/発行済株式総数)、もう1つはAキャッシュフロー・ベースの配当性向(現金配当額/営業キャッシュフロー)である。前者の分子が利益であったのが1株あたり利益であり、後者の分母が利益であったのが配当性向である。いずれも利益が営業キャッシュフローに置き換えられているわけで、@1株あたりいくらの利益を稼いだか→1株あたりいくらの営業キャッシュフローを稼いだか、A利益からどれだけ配当をおこなっているか→営業キャッシュフローからどれだけ配当をおこなっているか、ということである。さらに、営業キャッシュフローをフリー・キャッシュフローに置き換えてもよいだろう。

このように、利益(インカム)からキャッシュフローを重視する経営は「キャッシュフロー革命」といった言葉に象徴的にあらわれている。キャッシュフロー計算書がわが国でもようやく基本財務表となった今日、それを単にこれまでの損益計算書、貸借対照表に1つ追加されたものとしてではなく、より積極的な活用が望まれる。

(以上、2002年7月)