9章 日本的経営論
【日本的経営】:経営の国際比較の上で、日本の企業に特有の社会的組織を中心とした経営管理制度。
*たんに「日本の」=「日本企業の経営」
*日本に固有な、特殊日本的な=「諸外国の企業には見られない、日本に固有な経営上の特徴を示すこと。」
⇒日本起業のグローバル化に伴い、国際的な視点で、普遍性が探求されるようになる。
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日本的経営論のはじまり
・主要な文献だけでも、140冊以上。
・記念碑的文献: J.C.アベグレン『日本の経営』(1958年) 〔⇒ボストン・コンサルティング・グループ東京支社を設立し、実践的な研究に専心。〕
⇒日本的経営論の捉え方:『日本的経営の制度化を考える』(1994年、若林政史著)より抜粋
 「日本的経営とは何かについて、いろいろな捉え方がある。しかし、現在のところ、体系的な説明はほとんどみあたらない。たいていは、一部の特色を捉えて、これが日本的経営だといっているような印象を受ける。その代表例が、日本的経営とは、終身雇用制、年功制、企業別組合という三種の神器論である。この説は、終戦直後、J.C.アベグレン氏が『日本の経営』において指摘して以来、40年にわたって神話として定着してきた。」

J.C.アベグレン『日本の経営』
“The Japanese Factory-Aspects of its Social Organization ”, 1958.
@特定の企業に入れば定年まで勤続する終身的雇用制度
A年功と学歴を基準とする年功賃金制
B年功昇進制
C個人の決定責任を回避して集団で決定する集団主義
D福利厚生施設の充実
E企業別労働組合  などの諸制度によって特徴づけられる。

J.C.アベグレン『日本の経営』
“The Japanese Factory-Aspects of its Social Organization ”, 1958.
これらの諸制度を貫く「日本的経営の統一概念」とは…?
1.経営家族主義? 2.集団主義? 3.人間主義?

(1)経営家族主義
日本の伝統的な社会の特色 ⇒家族主義
 「アメリカの大会社の比較的に非人格的な、かつ合理化された生産方式と組織制度に比べて、日本の会社は、その諸関係において『家族的』である。」
 ⇒「雇用契約の範囲をこえた、従業員と会社との間の義務と責任の相互交換の関係」
 ⇒経営者の温情主義理念のこと。
日本的経営の歴史的源流 
⇒江戸時代の商家制度
⇒明治大正期の財閥中心の同族経営(間宏氏)

(2)集団主義
欧米の企業の経営管理制度が個人主義の心理特性の上にきずかれているのに対し、
⇒日本の「終身雇用制度」は、日本人特有の集団主義の心理特性の上に編成されたもの。
⇒欧米人は、集団にたいして特定の職務、権限と責任において参加するのに対し、
⇒日本人は集団に対して全人的な関係を結び、集団的忠誠心が強く、集団への連帯責任感をもつ。
⇒解雇されないかわりに企業内の人事異動や緊急の職務変化に際しても、「無限定な義務」を負う。(岩田竜子氏)

(3)人間主義
日本的経営哲学の最も優れた古典とされる『日暮硯』に記録される恩田杢の経営思想に依拠。
日本の終身雇用制は、労働力を商品とみなす欧米の労働力商品説にかわって、労働力と労働力の所有者である人間を区別しないで、従業員を人間として扱い、誘因(インセンティブ)と貢献のバランスを長期的にとることによって、従業員の全人的欲求を満たし、企業への協働的意思を確保する制度であるとする。