10章 賃金管理論ー 年俸制 −
年俸制とは、1年を単位として、『業績』と『職務遂行能力』に基いて支給される賃金制度。
年俸額の決定に際して、考慮に入れるべき要素:
1.前年の仕事上の実績、2.職務遂行能力、3.社内で果たす役割、4.会社の期待度など
年俸制導入の目的
個人の【業績】&【能力】=【賃金】に結びつけること。
1.労働に報いる対価を支払う。
2.組織構成員のモチベーションを高める。
3.組織の活性化につなげる。
〔現実には〕個人の業績や能力が的確に把握されねばならない。(⇒業績が明確になる「職位」「職種」に適用されやすい。
日本型年俸制=総合決定給
@ 年功給相当部分=【年齢】【勤続年数】を評価★年功賃金制とは異なる。 ⇒(業績・能力・意欲は内包しない。)
A 職務給相当部分=実際の職務を評価 ★「難易度」「責任の重さ」「学歴の有無」「管理の責任」など。
B 職能給相当部分=職務を遂行する能力を評価
【職能給制度】の導入がポイント
1970年代初頭 『年功賃金から職能給への移行』が指摘される。
【職能給化導入の4段階】
〔第1段階〕年功給相当分を『基本給』とし、『基本給』部分の配分を大きくとる。
〔第2段階〕個人間格差を受け入れる人事考課制度の意識を高める。
〔第3段階〕年功給=『基本給』部分を縮小していく。
〔第4段階〕年功給部分を廃止。⇒実力主義オンリーへ
★人事考課 (merit rating)とは…
組織に所属する従業員個々人を対象として、その広義の能力や勤務ぶりのうち、勤務記録や生産記録などの客観的なデータに示されない部分や、試験等で適用できない部分について、一定の評価要素と評価基準に従って、判断・査定することを中心として、人事管理に必要な情報収集を行うための手続きないし制度をいう。
@適切処遇(昇進・昇格・昇給・賞与の査定)
A有効活用(異動・配置・職務変更)
B教育・訓練や能力開発(ニーズの発見など)
などの基礎資料となる個人情報を得ることが目的。
人事考課:従業員評価の要素
対象となる従業員の【職種】【職務の性格】【組織内の位置・階層】によって異なるが…
『成績考課』=職務の遂行度・達成度、創造性、指導性、
『職務態度考課』=規律・協調性、積極性、責任性
『能力考課』=実務知識・専門知識、理解力、計画力、企画力、表現力、渉外力、指導力、管理力
『業績考課』=業務遂行の挑戦度・達成度など
【職能給制度】の評価方法
@ 目標管理
従業員が自己申告制度を通じて、目標を申告。1年後の結果によって、達成度、業績、意欲、熱意、目標を達成する顕在的・潜在的能力、リーダーシップなどが評価される。
A 職能資格制度
全ての従業員を何らかの職能資格のなかに格付ける。(P.172, 表10-1参照)
日本における年俸制導入の現実
日本における年俸制導入は必ずしも年俸制にこだわったものでなく、成果・業績主義人事制度を導入するにあたって、前年収入を下回る可能性を暗に強める意味合いで使用されている場合が多い。
(例1)設計上、成果がなければ前年と同じとしている企業が多い。
(例2)『年俸制』浸透度の低さ
今後の期待理論(図参照)
低成長期の報酬制度のポイント
内的報酬とは、個人が会社に対して働けば働くほど、業績に応じて受け取ることのできる報酬
外的報酬とは、個人の業績に関わらず、会社側のシステムによって支払われる報酬
基本路線として、成果・業績主義は今後も多くの企業に何らかの制度を伴って導入されるであろう。
1.低成長時代の対応として、一律的な平等主義を排除する必要があること。
2.集団的決定から個別決定へ。
3.制度・しくみ・規定などの枠組の広がり
今後の賃金制度
重要なことは、自国・自社最適の人事システムを構築していく冷静な視点と深い思慮にもとづいた決断を行うこと。
それは、欧米直輸入型の制度ではない。
日本的経営の特色と文化を生かした日本型賃金制度の創造である。