グローバル経営論-日本企業の多国籍企業化-
1.なぜ海外へ進出するのか
①プル要因とプッシュ要因
②日本企業の多国籍企業化
2.グローバル経営の問題点
①グローバル化と現地化
②現地化をめぐるジレンマ
3.国際人的資源管理
①海外駐在員の養成
②現地採用従業員の人的資源管理
グローバル化の背景 (図提示)
【比較優位】⇒【情報ネットワーク化】‐『時間の制約』の克服、『空間の制約』の克服、『組織の制約』の克服へ
多国籍企業間競争の新展開 (図提示)
【ボーダーレス化】【業際化】【合併・買収】
【規模の経済】【範囲の経済】【連結の経済】
なぜ海外へ進出するのか
【プッシュ要因】=海外への移転・進出を促進させる。
【プル要因】=相手国が外資を誘致・受容する。
【海外日系企業の経営活動形態】
1.合弁企業(ジョイント・ベンチャー)
2.現地法人(子会社)の設立
⇒日本の本社との関係の調整 (子会社の所有と管理、振替価格設定)
⇒国際的なマーケティングや研究開発をどう展開するのか
⇒生産体制の移転と現地調達をどう進めるか
⇒日本から駐在員をどの程度送るか
⇒現地でどの部門の従業員を採用するか
日本企業の多国籍化
【多国籍企業:Multinational Corporation: MNC】
1950年代まで アメリカの巨大企業による西ヨーロッパ、中南米への進出に特徴
1970年代 アメリカが、ニクソン・ショック後のドル安と株価の低迷、石油危機(1973)の到来を背景に、他の専心諸国の製品を受け入れる市場になる。
⇒【パックス・アメリカーナの終焉】
【日本企業の海外進出】
1960年代 アジア諸国を中心にスタート
⇒駐在員事務所、輸出品の営業・販売拠点の設置
1970年代後半 輸出を急増
1980年代 対米輸出:毎年100億ドル強の経常黒字の累積
⇒『集中豪雨的輸出』
【日本企業の海外進出】
1985年 プラザ合意: アメリカの膨大な貿易赤字を立て直すための金融政策。
⇒結果として円高進行
⇒日本の輸出産業は大きな打撃
↓
*日米政府間の経済摩擦と円高の進行の中で・・・
↓
【各企業の海外移転】
(日本企業にとって気の進まない経営行動)
1980年代後半 バブル経済の最盛期⇒ジャパン・マネーが世界各都市のビル買収などに向かう。
1989年 海外直接投資額(フロー):合計658億9000万ドルに
グローバル経営の問題点①
【グローバル化:地球規模への拡大】
企業が複数の国で業務を遂行するだけでなく、より広範囲に発展するというグローバル志向がその理想。
①本社が世界各地の事業単位を統括的に管理する場合。
②本社の各事業部門がそれぞれ個別に各国に拠点を設ける場合。
⇒『各国の事業単位が現地の条件や状況に適応した形で経営活動を推進すること』
⇒【ローカル志向:『現地化』】
グローバル経営の問題点②
【現地化をめぐるジレンマ】
①日本企業の多国籍企業化への過程が急速かつ大規模であったため、他の先進諸国に比して国際経営の経験が浅いこと。
②他の国々との経営摩擦を回避するために、また急激な円高に対応するために、気の進まない半ば強制的に海外移転を強行した時期があり、現地化は移転後に要請される課題となった点。(現地化を巡る施策が後追い的になり、受動的な対応)
③現地化の内容や程度が地域によって異なるため、ある地域での経験が他の地域において効果を発揮することができなかったこと。
現地化が抱える問題点
① 進出先の制度、慣行と現地化の関係・行政と企業の関係、・商習慣、労使関係、・財務・労働など企業経営の諸点に関する法的規制
②価値観の違いをともなうコミュニケーション・ギャップ⇒文化摩擦
日本型経営移転仮説(1980年代)
=日本から大規模な海外移転が続いた頃、現地化がまだ安易な問題でしかなかった。
=何もない真空地帯のような空間に、日本企業が誇示するJIT方式が適用されたと主張しているに過ぎない。
【第1段階】情報収集のための駐在員事務所を開設。
【第2段階】支店や営業拠点が設置され、各地の営業拠点を通して販売活動が拡大される
【第3段階】生産設備を現地に建設し、日本の工場における生産システムを移転する。(特にJIT方式)⇒第3段階への移行が現地化であると考える立場
日本型経営移転仮説②
【モノ・ヒト・カネ】の順序で日本から海外へ経営諸資源が移動することを指して現地化と呼ぶ立場。
【モノ】:製品輸出から生産設備への移転へ
【ヒト】:現地労働者の採用から管理者・経営者の登用へ
【カネ】:日本本社による投資から現地での資金調達の増大へ
⇒上記3点より、現地での独立性を満たすことが現地化の指標とされる。
グローバル経営の4類型モデル (図参照)
国際人的資源管理
①海外駐在員の養成
=一部の金融機関を除いて海外駐在員候補者を計画的に養成している企業は多くないのが現実。
・異文化適応能力
・職務遂行能力=国際的業務遂行能力
②現地採用従業員の人的資源管理
=進出先で雇用される従業員(現地社員)
・採用方法、配置、賃金決定、能力開発、昇給、昇進などの管理の方法の開発
1.均等な雇用機会の原則(人種、性、年齢などの属性による差別の排除)
2.現地従業員の査定・考課の方法
3.職務と職位に関すること。
国によっては、職能別労働組合の伝統をもつなど。