第10章 企業結合の諸形態
【市場】⇒【個々の企業の出合う場】
企業は市場の中で活動し、競争し、取引する。
【市場経済の特徴】 ⇒ 各企業が自由に相手を選び、対等の立場で取引する。

企業間関係の在り方
=それぞれが自律している企業間の関係は、一定の距離をおく。
【企業内部での関係】=指揮命令(支配・従属)関係
【他企業との関係】=取引関係
           =競争関係
⇒企業が『目標』と『戦略』に応じて【多様な形で結合】

T 市場経済における企業結合の必要性 text p.223-224
〔1〕企業の境界と取引費用
 【企業の境界問題】=【ドメインの設定】
 *1つの企業がどれだけの範囲の事業を 社内で行うかの決定
⇒【単位あたりの生産費用】が基準
【企業の規模拡大】⇒【生産費用の削減】⇒【企業の規模拡大】(循環)

企業間関係が【水平統合】から 【垂直統合】へ進むロジック(論理)
『水平統合』
(同じモノを生産する企業の水平的統合)
  ⇒規模の経済を追求(生産規模拡大)
  ⇒規模拡大に伴って、内部に分業を生み出す
  ⇒『生産工程前後の垂直的な関係の生成』
  ⇒垂直的関係の誕生
『垂直(的)統合』へ

★【取引費用の概念】1 =Transaction Cost
=情報の収集・解析、取引相手との交渉・契約手続き、取引相手の監視や変更などの費用(主にこれらの取引にかかる時間も含む)
★取引に際して発生するコスト
 ◎取引相手をみつけるための探索コスト
 ◎情報コスト ◎契約成立までの交渉に関わるコスト
 ◎契約を結ぶコスト ◎契約内容どおり遂行するための実行コスト
 ◎監視(するための)コスト など。

★【取引費用の概念】2 =Transaction Cost
・取引コストの概念は、伝統的な経済理論ではほとんど無視されてきた。
・Coase, R. H.(コース)<1991年ノーベル経済学賞:「企業の本質」「社会的費用の問題」>, Arrow, K.(アロー)、Williamson, O. H.(ウィリアムソン)などの研究者のもとで【取引コストの経済学】の立場が花開いた。 ⇒『新制度学派』
・【取引】を経済分析の基礎単位とする。

【資産の特殊性】 企業のもつ資産が特殊であること
=資産の特殊性によって生まれる取引費用は垂直統合の大きな理由づけ。 
 (取引を阻害するという脅しのリスクを常にかかえることになるから)
【例】1926年 GMがフィッシャー車体と合併  
・1919年から、10年間の長期契約のもとで、GMはフィッシャーの密閉型金属車体の全てを購入していた。
・フィッシャーとの『利害対立』が解決できない。  
・GMはフィッシャー買収に踏み切る  【重要な目的】フィッシャーの高度技術者という人材を入手

〔2〕垂直統合のデメリット
多くの企業が、垂直統合だけに依存しない理由
@ 生産の最小効率規模(MES)による効率性
A 経営資源の大きく異なる事業の統合は不経済
B競争の圧力が低下する。緊張関係がなくなると、効率性を追求するインセンティブが弱まる。

U 企業結合の諸形態の類型化
【企業間関係の側面】
@水平的関係(競合関係)=同一産業における企業間関係。利害は対立。
 〔共同関係の動機〕
 1.利害対立を排除する目的
   (カルテル、トラストなど)
 2.利害対立外の局面で相互的利益の獲得を目的
   規模の経済性・結合の経済性

A垂直的関係(取引関係)
=原材料や部品の生産から最終製品の販売に至るまでの分業関係が企業間で形成。
 ⇒【下請関係】
 ⇒【系列取引】
 ⇒【アウトソーシング】

B多角的関係(統合的関係)
  =企業間の活動の関連度が低く、戦略的に多角化といわれる状況。
*日本の戦前の財閥、企業集団(ワンセット主義)
〔共同関係の動機〕
  1.リスクの分散 
  2.シナジー効果(範囲の経済性による相乗効果)
    =共通生産要素の存在:技術・ノウハウ・ブランド
      (情報的経営資源)

U 企業結合の諸形態の類型化
【企業結合の統治構造】@
=企業間関係のコーポレート・ガバナンス

@ 構成員の間で、どのように決定権が配分されるか
 ・どの企業が主導権を握るのか
 ・どんな順番で主導権を交代するのか
 ・平等に決定権をもつためには、どうしたら良いか
A どのような関係まで決定するのか(決定の幅)
 ・この企業間関係は、どのビジネスまで関わるか

【企業結合の統治構造】A
《決定権》の源泉=制度上の財産権、人的・情報 的経営資源の偏在や交換
@共同決定(参加)型結合:結合の参加者全てが対 等関係。原則として、全て共同で決定。
A委任ー被委任型結合:強いリーダーシップ企業が 存在する結合企業関係。
B支配ー従属型結合:特定のメンバーの意思が重要。

U 企業結合の諸形態の類型化
【結合企業強化の機構】
@黙約的関係=下請制、異業種交流、企業集団
A協定的関係=業務提携、再販制、カルテル
B契約的関係=合弁事業、専売店制、 フランチャイズ・チェーン
C所有的関係=持株会社、親子会社、 コンツェルン

U 企業結合の諸形態の類型化
【結合企業強化の機構】
@黙約的関係=関係の明文化されず、信頼関係  に基く。結合からの離脱にペナルティはない。
A協定的関係=契約の一種。時間的限定性あり。         契約内容はかなり限定的。
B契約的関係=時間的限定性を伴い、契約内容          もやや限定的。
C所有的関係=包括的で、全面的な意思の行使が可能。決定の範囲、時間的継続性は無限定。