*個人企業の限界
@ 資本金の規模が小規模とならざるをえないこと。
A 出資者の無限責任制により負債の規模に限界があること。
B 使用総資本の小規模性によって利益機会が小さいこと。
⇔個人企業が個人企業であり続けるかぎり、追加資本調達はただ1人の出資者の拠出によって賄われる。
⇔個人企業の獲得した利益に規定されざるを得ない。
第3章 少数出資者の企業
T少数集団企業の特質
【個人企業】 = 単独の出資者
【集団企業】 = 複数の出資者
【少数集団企業】
@〔経済形態〕人的集団企業⇒〔法律形態〕合名会社
A〔経済形態〕混合的集団企業⇒〔法律形態〕合資会社
*企業家 & 投資家 (See p.57)
【企業家】 = 自ら出資するとともに、企業の支配・経営に直接携わる人のこと。
= 【機能資本家】
【投資家】 = 企業に対する出資はするものの、その出資に基いて企業の基本的な意思決定に加わることはない。
= 【無機能資本家】
少数集団企業の特質
⇒2種類の出資者の存在
個人企業:単独の出資者 =企業家(=【機能資本家】)
集団企業:複数の出資者 =企業家(=【機能資本家】)
=投資家(=【無機能資本家】)
少数集団企業の特質
〔経済形態〕人的集団企業⇒出資者全てが【企業家】⇒〔法律形態〕合名会社
〔経済形態〕混合的集団企業⇒【企業家と投資家の両方から構成】⇒〔法律形態〕合資会社
経済形態としての少数集団企業
個人企業の限界を克服するための唯一の方法⇒【出資者の複数化】
⇔個人企業の事業主が、自分の他に共同出資者を受け入れた時、形態転化する。
⇒【制度的発展の所産】
人的集団企業 = 【合名会社】
・同族、血縁者、友人、知人など人的関係にある特定少数出資者の結合による経営体
・『収益性』が経営原理
・『所有』と『経営』は完全に合一(所有経営者)
・『所有』と『作業』の分離(従業員を雇用)
【特徴】
@企業債務は、連帯して「無限責任」
A合議制=意思決定は出資者全員の合議による。
無限責任会社@ (Leveraged Effect =Unfairness)
(例)
・資本金1000万円の無限責任会社。
・100名の株主が、10万円ずつ出資した。
・99名の株主の個人財産は、それぞれ2万円。
・残り1名の株主の個人財産は、1000万円。
⇒「この会社が倒産した・・・・・・」⇒?
無限責任会社A (Leveraged Effect =Unfairness)
〔倒産処理〕
・会社の資産を全て処分してもなお足りない
・返済金が、500万円残った。
------
・個人財産2万円の株主99名が、個人財産を処分して、198万円。
・残りの302万円は、金持ちの株主、1人で負担。
⇒『持ち株の多寡に関わらず降りかかる』
無限責任会社B (Leveraged Effect =Unfairness)
〔結果〕
◎ 財産持ちの出資者にとって、無限責任会社への出資は、不利。
◎ 財産の少ない出資者(=無いモノは出せない人々)に、有利な出資制度。
⇔「無限責任会社」に対する出資のリスクを見積もる時、事業それ自体のリスクだけでなく、他の株主達の個人的な財産状態までも考慮すべき。
合名会社の限界
【要因】
@ 企業環境の変化 ⇒生産の複雑化・高度化
A 所要資本の増大(客観的要請)
⇔『解決方法』・・・・出資者数の増加
【合名会社の限界】
@資本拡大の限界
A合議制の限界
合名会社の限界:克服の手段
@ 『資本集中の増大』 と
A 『経営機能の統一的遂行』 の実現の必要性
-------
@出資のみを行って、経営に関与しない出資者
(出資の対価を受け取るだけの責任の軽い出資者)
=【無機能資本】=【持分出資者】の導入
=『合議に加わらない』&『経営に発言権なし』
A経営は、少数の無限責任を負う出資者だけで実施。
混合的集団企業 = 合資会社
【合名会社の制度的発展の所産】⇒【合資会社】
・企業家と投資家からなる企業
・『所有』と『経営』が一部分離〔有限責任の出資者のみ〕
=『支配出資者』と『無機能出資者』の混在化
・出資者〔企業家と投資家〕の関係は、人的信頼関係による結びつき
合資会社の限界:克服の手段
【依然として 資本拡大の限界が生じる】
WHY?
・出資が『市場性』を持たないために、譲渡が難しい。
=経営方針に異議がある場合、自分の持分を第3者に譲渡することにより資金を回収。
=(ところが)新たな資金の提供者を見つけるのは至難。
⇒結局、支配出資者(企業家)を信頼できる関係にある者が持分出資者(投資家)となる。
⇔【持分出資者の範囲が限定される】
法律形態:合名会社〔人的会社〕
・【合名会社】の設立=定款を作成
⇒設立を登記する「公簿に記載する手続」
・会社の社員〔出資者〕は、出資比率に応じて会社に対する権利【社員権】を持ち、義務を負う。
・社員は、大きさの異なる持分を各人が一個ずつ持つことになる。【持分単一主義】
・経営(業務執行)の意思決定は、持分の大きさに無関係で、持分一個につき一票となり、出資者の頭数による過半数の多数決でなされるのが原則。
*持分単一主義の例
A氏が300万円、B氏が200万円の出資で合名会社を設立した場合。
------
・会社の利益分配や会社の残与財産について、A氏は5分の3、B氏は5分の2の持分を持つ。
・経営(業務執行)の意思決定は持分の大きさに関係なく、持分一個につき一票で、出資者の頭数による過半数の多数決でなされるのが原則。
法律形態: 合名会社(人的会社)
【法の趣旨】 小企業を経営しようとする小人数規模の事業主のために準備された会社形態
【法的】 営利社団法人
【性格】 組合的
=構成する社員の個性が強く残存
・全社員=【無限責任】
*合名会社:無限責任の例
A氏が300万円、B氏が200万円を出資した合名会社の事業のために、Y氏から1000万円借りた。
------
・倒産したときには会社債権者Y氏は、A,B両氏の個人財産まで差し押さえることができる。
・但し、会社債権者Y氏が、社員A氏に1000万円の借金返済を求めたときには、まず会社財産から処分して支払うから待ってくれといえる。
〔*この点、【組合】の場合は、組合財産と組合員の個人財産は明確な区別がないので、そのような抗弁はできない。〕
法律形態: 合資会社(人的会社)
【法の趣旨】 出資者を拡大するために準備された会社形態
【法的】 営利社団法人
【性格】 会社の債権者に対して社員(出資者)の責任が軽減されることを認める。
【有限責任社員】と【無限責任社員】の混在
*2001年分の会社形態と資本金別企業数
民法上の【組合】という概念@
【個人企業】が少し発展して、二人以上の者が出資をして、共同経営する形で事業が行われるとき、民法上の【組合】(英語でPARTNERSHIP)となる。
【組合】は、二人以上で活動する団体。
法律上、団体には社団と組合があることになる。
【社団】は団体としての組織・機構を備え、団体の独立性が強いのに対し、【組合】はむしろ各構成員の個性が重視され、団体の独立性が弱いものをいう。
民法上の【組合】という概念A
【社団】は団体と構成員の社員関係によって成立している。
【組合】は構成員相互間の契約関係で結ばれている。
契約は個人と個人の間で結ばれる法律行為。
*【労働組合】は、社団であり、民法上の組合とは異なる。
商法上の【匿名組合】:商法535条
〔535条〕 匿名組合とは当事者のうち一方(出資者)が、相手方の経営する商売上の事業(営業)に対して現金やそれ以外の財産を出資し、相手はその代わりにその事業でもうけた利益を出資者である一方に分配するという約束のことをいい、その約束をしたときから法律上の効力が生じる。
〔536条〕 @匿名組合員(出資者)が営業者に出した出資は営業者の財産となる。
A匿名組合員は営業者がした営業上の行為によって、直接第三者にたいして権利をもったり、義務をおわせられたりしない。
*匿名組合の実例:角川出版事業振興基金信託