2003年7月書評(第2回)
評者:榎本(5期生)
日野佳恵子「クチコミュニティ・マーケティング」朝日新聞社。
ISBN4022577738
35×70=2184字

 「あのお店とてもいいらしいよ」とか「こんなに美味しいものはじめて」と聞くと行ってみたくなる。人は、クチコミに弱い。ましてや友達や知人から聞くとますます試したくなる。私の場合、その情報を教えてくれた人が女性であったらもっと試したくなる。日頃購入したりしているもの、食事する所などは、ほとんどクチコミに頼っているといってもいいくらいだ。人々が長く使いたい物や初めての試みはまず、人からの情報を得るのではないか。現代は、情報の流動化の影響で、流行もすぐ変化する。溢れる情報から消費者は、インターネットやテレビCM、看板や新聞、雑誌よりも知り合いから直接聞いたものつまり、クチコミではないだろうか。本書でも「クチコミと宣伝広告のどちらを信じますか?」という、主婦2000人を対象にしたアンケートの結果を見ると83%がクチコミ、17%が宣伝広告となった。本当に欲しいもの以外はいくら宣伝されても心が惹かれないそうだ。著者は、「もうクチコミでしか物は売れない」と言う、クチコミで成功を遂げた会社「HERSTORY」の女社長である。本書では、女性ネットワークを活用したビジネスは全国初の会社「HERSTORY」の成功の経緯を含めた、会社をクチコミで伸ばす方法とはなにか。女性を味方につけた会社はなぜ強いのか書かれている。
 まず、本書の題であるクチコミュニィマーケティングとは何か。「クチコミ」「コミュニティ」を合わせたもので著者が自ら作った言葉であり、偶発的に起こると考えられてきたクチコミを、コミュニティという「場」で意図的に起こすというものである。このことから著者は、本当にいいものしか売れない時代だからこそ、消費者生活者とともに成長を遂げる、つまり生活者の意見を商品に生かして提供したいと考えたのである。また、家庭のあらゆるものに購買決定権を持っているのは8割女性であり、女性を味方につける事がビジネスを成功する秘訣の一つであると本書に書いてある。しかし、女性を制すれば成功するとは、簡単そうだが、作るのはほぼ男性で女性が好む物を作るこの目標は難しいように思える。女性の好む物はやはり女性でしか分からないのではないか。この課題は、会社の努力次第でしかないだろう。本書に登場する「HERSTORY」の設立者である著者は、結婚や出産で退職したビジネスセンスを持った主婦をターゲットに会員を集めた。「HERSTORY」は、クチコミュニティマーケティングを主力に、企業のコンサルティング・WEBビジネス・広告宣伝などに女性ネットワークを活用する会社だ。今や10万人以上に及ぶ会員も始めは、新聞にユニークな広告を載せ、300人。会員を増やそうと設立当初は、会員を集めコミュニティの場を作った。この場をある物事に対して本書では「シーダー」と呼ばれる共感者を集めクチコミュニティの場を作り、徐々にシーダーを増やしていくことに成功した。シーダーを増やす事がこのクチコミには必要なのだ。また、シーダーの活躍している姿をネットなり、会報誌に載せ、会員にやる気を起こさせたのだ。私もやる気が出る仕事が出来る環境に整えてくれる企業は共感が持てる。仕事の方では、他社との違いを探した所、女性の専門職経験者が居た事、主婦モニターや座談会が実施出来る事と女性経営者であることの三点を見つけ仕事に活かした。宣伝広告の仕事であれば新商品はまず、HP上で主婦にアンケートを実施する。直接消費者の声が聞けるとあって、多くの仕事が舞い込んできたという。また、雑誌やイベント、専門職講座を通じ、関心のある人をそれぞれの仕事に分担させた。顧客に対してはお互いの利益に繋がるものを提供し、お互いの会社を見直すことによって自家発電型の会社を目指せるようになった。営業も変わっていて、本書では名刺や会社案内には手は抜いてはいけないと筆者は言う。デジタル化の時代手紙は手書きにするとか、名刺はお金をかけてまで個性的にすること書いてあるが、当たり前だと私は思ってしまった。しかし、本書では当たり前のことが出来ないことが当たり前になってしまったと、筆者は嘆く。人手間かけるだけで印象はみちがえるほど変わるのだと。あとは、インターネット上で戦略的に出来るかどうかであり、以上が「HERSTORY」のクチコミュニティマーケティングである。
 本書を読み、私は「HERSTORY」に興味を持ち、HPにアクセスを試みた。トップページから「ご意見ネット」「アンケート」がまず目に飛び込んできた。アンケートがトップページにあると他のHPは全く違う印象を受ける。これもアンケートをまずやってみようと起こさせるものなのであろう。新しい物好きの女性は、アンケートでいち早くその商品に触れ、改善され自分たちでもっと良い商品に仕上げると誰もが感動し、欲しくなるのではないだろうか。私が主婦になって育児が終わったら是非「HERSTORY」の会員になって商品開発のモニターになろうと思う。もし、クチコミなどあてにしないと思っている人がいたらこの本を読ませたらその考えも変わるはずだ。本書でいう、常に違う発想を持ち、消費者側の視点で、少しの手間を掛ければ成功を導くという考えを持つべきだ。そして会社に愛情を持つ。また本書はクチコミ実践編が書かれているので経営者の人も本通りにとは言わないがクチコミビジネスに挑戦しても面白いかもしれない。