2003秋書評
評者:榎本(5期性)
佐藤 昂「2003」『いつからファーストフードを食べてきたか』日経BP社。
ISBN4822243605
35×29=1205文字
ファーストフードをいつから食べてきたと言われたら、小さい頃からと答える人が多いのではないか。ファーストフードは早くて安い、上手いが三拍子揃って誰でも気軽に利用できる。どの地域に行ってもあるのが当たり前である現在。しかし、ファースフードがこんなにも便利で普及するようになった裏には数多くの歴史がある。本書は、ファーストフードが日本で大人気になった経緯と高度成長期時のファーストフード、バブル時代後のファーストフード、そして現代のファーストフードの時代においての人々の生活にファーストフードはどう関わり変化と遂げているかかが分かる一冊である。著者は高度成長期にマクドナルドに入社し、マーケティング部長という経験を活かし、日本KFCに転じ代表取締役を経て現在は日本KFCの顧問している人物である。日本の二大ファーストフード会社のマクドナルドとKFCと通じて日本の外食産業の経緯も本書では紹介され、私たちの馴染み深い会社が次々と紹介され面白い本となっている。日本にファーストフードという言葉が浸透してきたのは、1970年代のことである。1971年日本経済成長の中、日本万国博覧会が開かれアメリカ大使館の飲食施設にケンタッキーフライドチキンが出店し、当時は近代的なレストラン経営のノウハウを全面的に導入した斬新なサービスは衝撃を浴びた。それから、翌年マクドナルド、ミスタードーナツがアメリカから日本に上陸した。忙しい主婦の味方、注文するとすぐ品物が出てくるというのが受け、日本中にアメリカからの外食産業が発達した。その中で、日本で唯一誕生したモスバーガーは今でもアメリカ外食産業の人気に劣らず上位を維持している。1970年代半ばに車社会の発達により家族で利用できるファミリーレストランが誕生した。その代表がデニーズジャパンとすかいらーくである。最近では今までにない雰囲気や新しい体験が出来るスターバックスコーヒーが人気である。これから、ファーストフードはどうなるのか。著者は、米国型外食産業が発達すると考える一方、イタリアで始まった伝統料理の推奨によりスローフードが広まる。また、コンビニの普及で外食のようにブランドとして差別化された商品を高品質で提供できるものが予想される。不況のなかストレス社会やデフレが続き、消費者は以前よりもブランド志向が強いと私は思う。これからは時代の流れに日々変化を遂げる外食産業が発展するのではないか。美味しいのが当たり前でプラスサービスや雰囲気が評価となるのではないか。本書でも外食に求める条件として健康と安心、また納得できる価格そして、サービスと雰囲気が良いものであると述べられ、同感した。当たり前となったファーストフードこれ以上の変化に目が離せない。新しい食文化はファーストフードの無くしては語れないだろう。