2003年5月書評
評者:廣田(5期生)
小松俊明[2003]『成功する人材がしていること』アスペクト。
ISBN4757209606
53×35=1855字

 自分は一人で何ができるのか?自分の価値とは何で、どのくらいあるのか?
それを正しくわかっている人が何人いるだろうか?もちろん私はわからない。それは社会に出て、企業の一員になれば、給与というカタチで明確に表れてしまう。あなたのこの一ヶ月の価値は30万、50万、100万という様に。(アルバイトで貰っている給与が今の自分の本当の価値だとは思いたくないが)人の価値はお金だけではないとは思うが、一番分かりやすいだろう。では、どうすれば自分の価値を高め、より高い給与を貰うことが出来るだろうか?それには、知っておかなくてはいけないポイントがいくつかある。その点を、この本はヘッドハンターの立場からビジネスマンをどのように評価をしているかについて書いてある。@今、企業はどういう人材を要求しているか。あるアパレル会社の社長は面接の時に、決まって「過去の上司で最悪だった人物を教えてくれないか?」と尋ねるそうだ。最も多い答えは「自分には最悪な上司などいなかった。」という答えだそうだ。私もこれに同感してしまった。しかし、この答えでは、質問の意図をわかっていないと判断されてしまう。誰にでも、相性や価値観が合わない人がいる。この質問でわかることは、『仕事に何を求めているか』という点。最悪な上司を話させることによって、その人の能力をうまく引き出す条件が読み取れる。もう一つは、『問題解決能力』があるかという点。最悪な上司を前にして、自分はどのように対策を取ってきたかという話をすることがこの質問に対する正しい答えなのである。私の父親が人事の仕事をしていた時に聞いたことがあった。「面接だけでその人の人間性までわかるのか」と。やはり答えは曖昧だった。初対面に加え、面接用の自分を何日も前から用意し、もってきた相手をこの人はこういう性格で、こういうビジョンをもっている、などと判断することは不可能に近い。だからこの社長の例のように、面接に心理戦のようなやり取りが出てくる。これは実におもしろい。予想もしない質問をして、窮地に追い込めば、その人の本性が出てくる。そこから人間性を判断しようというわけだ。危機的状況をいかに打開していくか。その『問題解決能力』が今、必要とされている。もう一つ重要なのは、『コミュニケーション能力』である。これだけ、緻密に人間性を探ろうとしている一方で、『相性』が採用する際の重要な判断基準になっているのもまた現実である。そこで相手のニーズを理解する力、自分のニーズを誤解なく伝達する力が必要である。これだけで相手に与える第一印象は変わる。そして、何より最近は変化の激しい時代である。当たり前だが、その変化についていけない人、変化を好まない人は評価が下がる。同じことをやり続けることも大事だが、変化に果敢にチャレンジしていく姿勢がもっと大事になってくる。A高収入の意味を理解しているか?給与が高いということは外資系企業の世界ではそれだけでリストラに遭いやすいことを意味するそうだ。高い給料ばかりに喜んでいると厳しい結果を招くだろう。転職したいと考える人の多くが高収入なのも興味深い話だ。それは会社の期待に応えられていないのだろう。人件費は減少傾向にあり、優秀な人材は欲しくても高い給料は払えないという企業が増えている。年収一千万を目指すなら、そのための具体的なキャリア・プランニングが必要となる。どの会社が、どのような仕事に対して一千万の報酬を支払っているかを知る事。その上でその仕事のスキルや経験が自分にあるかどうかを分析することが重要になってくる。
 どのような能力を身に付ければ、企業が自分を評価してくれるか。どうすれば、高収入を得られるのか。のポイントがわかっていれば、一つの企業に執拗にしばられることはないし、自分の思うままに仕事が出来て、不当な異動で正しいキャリアが積んでいけないということもなくなるだろう。そこには転職という選択肢もある。自分自身の将来的なビジョンをはっきりともっていないと正しいことか間違っていることかさえ分からないまま、会社に使われるだけになってしまう。そうなると、いざ、リストラや倒産となった時に一人では何も出来ないことに気付く。その時にはもう遅いのである。
 全ての情報を鵜呑みにしたわけではないが、ほとんどのケースが今まで知らなかったことだらけだったのでとても新鮮に感じた。このいくつかのケースに自分を当てはめて見ると、自分の足りない部分が分かるでしょう。