2003冬書評
黒澤隆次〈2003〉『中高年よ、農業に道あり!』文芸社
〈ISBN4−8355−6498−7〉
26×35=859字
評者:廣田(5期生)

 農業はあなたの就職先の候補に入りますか?正直21歳の私にはあまり考えられない。漠然とカントリーライフに憧れはあるが、農業をビジネスとして捉え、成功させていくのには自信がない。著者は50歳以上の人生は自分の時間として使うと以前から考えていたようで、52歳で会社を辞め、農業に転身した。著者は花のユリを栽培している。1番最初の就職で農業を考える人は少ないのかな?と思っていたが、本書は中高年代からの転職というケースで書かれている。著者は農業に夢を抱く人を冒頭で大きく4つに分けている。@カントリーライフ型A自給自足型B有機農業型Cビジネス型。著者はC番目である。作物を商品として考え、お客のニーズを考え、コスト・価格を考える。一般企業とどこが違うであろうか?まったく変わらない。ただ、大きく違う事は1つだけ。責任が全て自分自身にあるということ。言い換えれば、リスクが大きいと言うことである。本書には、主に、農業を始めるにあたっての注意点、必要事項、経験談が詳しく書かれている。特に、私が気になったのが、家族の問題。著者の場合は奥さんも同意してくれ、子供達も大きくなっていたので、あまり大きな問題はなかったようだが、家族の協力なしで、子供達も小さいともなれば、農業という選択をすることは難しいなと思った。家族の協力というのは必要不可欠だろうと強く思った。
 本書を通して著者が1番言いたかったことは、農業は難しいが、計画を立てて始めれば成功するということや農家の人達の暖かい協力ではなく、P125に書かれていた「育ちの悪いユリの蕾をビジネスと割り切って処分できないという話」なのかなと私は思った。サラリーマンにそのような気持ちが全くないと言っているのではない。自然に多く触れると、感受性が豊かになり、人間として大切なものを思い出させてくれるのではないだろうか?サラリーマンにもボツになった企画書を捨てられないというくらいの思い入れを持って仕事に取り組んでみてはどうだろうか?本書を読み終えたあと、暖かい気持ちになれた。農業も悪くはない。