2003年5月書評
評者:飯田(5期生)
吉原俊彦[2002]『情報ゼロ円。』宣伝会議。
ISBN4883350606
35×54=1890文字
私たちは自分が知りたい情報を得るときどうしているだろうか?テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット等、様々な情報収集手段がある。現在は、それらを使い、無料で情報を手に入れることができる時代である。私たちはこれらの情報収集機能をうまく使いこなし、自分が知りたい情報に対する比重にあった手段を使いこなす必要があります。その中で、雑誌は、ターゲットに合わせて、各誌の編集長、編集者、携わる人すべての叡智が発揮され、宣伝や流通、あらゆる人がかかわって、ターゲットに届けられます。そこには、ビジネスの仕組み、消費の原点があると同時に雑誌自体が、情報を伝えていく手段としての役割も担っています。そんな雑誌のパワーを書いているのが、本書である。
本書では、色々な雑誌を例としてだしている。たとえば、ファッション雑誌『non・no』である。ご存知の方も多いだろう。『non・no』は、2001年で、30周年をむかえました。では、なぜ、読者にこうまでも、支持されているのだろうか。その答えが、第7章に書いてある。雑誌を作るにあたって大切なのは、雑誌自体が年を取らないことだと。とても、納得することができる。雑誌が年を取ると、タ−ゲットが定まらない。ターゲットが定まらないということは、安定した読者を得ることはできない。『non・no』は、ターゲットを変えずに本をつくっている。そして、毎年卒業生を送り出し、新入生を向えている。そして、『an・an』等に流れて行く。本書はものをつくるときのターゲットの絞り込みの大切さを身近なものを例として使い教えてくれています。
また、雑誌を読んでいると目に付くのが広告である。なぜ、広告が載っているのか、疑問に思ったことはみなさんないだろうか?みなさんは、ご存知だろう。広告費を出版社がもらい、そして、商品を宣伝するからだと。その通りである。第2章には、雑誌の収益について書かれている。雑誌の二大収益は"販売"と"広告"であると。販売力というのは低下する可能性が常にあり、安定しません。一方、広告収入というのは、ある程度決まってくる。広告主は商品を生活者に雑誌の力を用いて、商品ブランド価値投資をしているのである。私は、雑誌が広告を載せて上げているものだと勘違いしていました。これほど雑誌にとって広告が重要だとはみなさんも知らなかったのではないだろうか。では、4媒体、テレビ、ラジオ、新聞、そして雑誌。このメディアにおけるポジショニングが第3章に書いてある。ここには、"お金を払わなくてもいいテレビとラジオ"、"新聞は取る"、"雑誌は買う"と分類しています。4媒体のうち、雑誌メディアだけが唯一、個人がお金出して買う、個人のアクションが必要なメディアである。雑誌は、マス・コミュニケーションに対して、ターゲット・コミュニケーションを演出している。まさに、『non・no』がいい例である。では、雑誌における広告の最大の特性は何なのだろうか?このことが、第4章に書いてある。ここで面白いのが、ファッション誌の例である。あなたはファッション誌を購入し、何回読むだろうか?ここでは、6回というかなり正確な数字をだし、生活者までの広告の到達度をグラフでわかりやすく説明している。そして、第11章で、雑誌の機能をまとめています。雑誌の機能は、第一に、読者と広告主の商品の世界観、価値観が適合すれば、メッセージは深く届いていく。第二にランディングした雑誌が、広告を通じて商品をブランド化仕上げてくれる可能性がある。第三に、二次消費者としてのターゲットを引っ張り込める。雑誌のパワーがここにあらわれています。
現在、私たちの生活には、多くの情報が氾濫している。その多くの情報収集手段の中で、雑誌は見事にポジションを確立しました。本書を読んでいろいろな雑誌を見てみて下さい。何故、この雑誌はこの広告をいれているのか?など。
疑問に思うその答えが、そして、明確な雑誌の意図、狙っているターゲット層、いろいろなことがはっきりわかってくるでしょう。また違った雑誌のおもしろさが、あらたに見えてくるでしょう。そして最後に、本書は雑誌を通じて"モノ"をつくることにおいて大切なことを教えてくれます。それは、ひとりひとりが本当に強い個人になることです。個人、ひとりひとりが団結して"モノ"をつくると、とてもすばらしいものができます。本書はそのことを改めて伝えてくれています。