2003年12月書評
評者:飯田(五期生)
佐藤 修[2003]『パーソナルブランド』日経BP企画(ISBN4931466931)
(35×31=1085文字)
過去、日本の社会では、「個」を捨てざるを得なかった時代であった。「滅私奉公」的に会社に尽くし、わき目もふらずに働くことが美徳とされた結果、昇進や昇給といったことでしか自己表現を満たせなかったというのが、これまでの日本のビジネスマン社会であった。しかし、現在、そのような風潮はなくなろうとしている。では、道標をなくした私たちはどうすればいいのだろうか?筆者が強調して、私たちに訴えかけていることは、「人間は自分の好きなことをやっているとき、もっとも能力を発揮することができる。」ということである。つまり、タイトルにもなっているが、「パーソナルブランド」を自分自身の力で作り上げていくということ大事になっていくのである。そのためには、自分の能力を大いに発揮することが、未来の自分にプラスに働くということである。
本書は、五つの章から形成されている。ここから、「パーソナルブランド」を形成していく上での四つのキーワードが見出すことができる。自分自身の仕事や暮らし方のスタイルを表現した「パーソナルブランド」のすすめと、その確立に向けての一手法である「自立型キャリアデベロプメント」、パーソナルブランドを考えるための共通言語である「コンピテンシー」、パーソナルブランドを築く上で考えておかなければならない「ワークライフバランス」である。わかりやすい文章構成になっているため、理解しやすい。また、過去、現在の人材、企業状況を混ぜながら、自分の力で生きていくにはどうすると「パーソナルブランド」を築くことができるのかがよくわかる。私が本書を読んで一番共感したことは、「自分が大切にしたいものを「尺度」にして、それとキャリアをどうマッチさせて自己表現をはかっていくかということ」ということである。簡単そうで簡単なことではない。見落としやすいものなので、心に深く刻まなければならないことだと私は思う。
本書の表紙には青をバックにシロのTシャツがぶら下げてある。最初は、みんな「シロ」なのである。そのシロのTシャツを企業によって色をつけられていくのか。企業の「ユニフォーム」を着るだけの人間になってさえすれば良いのか。そんなことある訳ない。難しいことだが、自分で自分が塗りたい色を塗っていくのが自分の、自分だけのオリジナルのTシャツ、「パーソナルブランド」になるのである。そのことを、本書を読み終えて、表紙をもう一度見たときに私は感じた。作り上げるには、ほんの少し、意識を変えさえすればいいのである。本書は、そのことを伝えている。