2003年12月書評
評者:北沢(5期生)
小松俊明[2003]「成功する人材がしていること」アスペクト
ISBN475209606
35×29=986字

 いきなりだが、皆さんにお尋ねしたい。ビジネスの世界において「成功する人材」とはどんな人だと思いますか?「英語がしゃべれる人」「柔軟な対応ができる人」、様々な意見が出ると思うが、業種によって求められている能力は多種多様なので、考えたところで答えを出すのは意外と難しいのではないでしょうか?だが、ご心配は無用。なぜならば、この本の著者はヘッドハンターであるからである。ヘッドハンターといえば、企業(または本人)からの以来を受けて、優秀な人材を他企業に引き抜く人、いわば転職のプロフェッショナルであり、優秀な人材を評価する鑑定眼を持っている人でもある。本書は、転職の現場において、ヘッドハンターの視点から、成功している人材は何をしているか(持っているか)について書かれたものだ。
では、その優れた鑑定眼を持つヘッドハンターからみて、「成功する人材」とは何をしているのか?
 著者はずばり指摘する、「成功する人材と言えるのは、企業のニーズに応えられる人」。企業の経営上の問題解決を実現できるかどうかに、成功する人材になれるかがかかっていると主張する。そのことを踏まえ、著者は外資系企業の話を中心に、転職に関する十二のビジネスストーリーを展開する。その話の中で、成功する人材は何をしているかについて書いている。例えば、コミュニケーション能力を磨く、部下を活用する上司になる、質問力を上げる…など。なるほど、確かに、これらのことを身につければ、たいていの企業のニーズには応えやすくなる。本書の中にある話は、人材が評価されていく過程を見る転職という立場なので、なぜそれが必要とされているのかがわかりやすい。
 本書を読み進めて行くとおわかりになるだろうと思うが、成功する人材は決して特別な存在ではない。逆に言えば、成功する人材は、成功パターンをつかめば誰にでもなれるということだ。しかし、著者は必ずしも、成功パターンを断定したりはしない。「彼らのビジネスストーリーの中で、自分は何に共感したか、自分だったらどのような判断をするか。そのような気持ちで読んでいただけたら、新しい発見があるだろう」と書いてあるように、自分の成功パターンは何かを見つけることを読者に薦めている。本書の例を通して、自分に足りないもの、または必要とされているものを見つけることができれば、成功する人材へ近づけるのではないか。