2003書評(第4回)
評者:望月(5期生)
森永卓郎[2002]『日本経済50の疑問』講談社現代新書
ISBN4061495976
35×27=945

 不況だといわれている現在、一体何が問題であるのか。なぜ不況から抜け出すことができないのか。不況だということは誰でも分かっていることであるが、この質問をされて自信を持って答えられる人ははるかに少ない。私自身も実感はないが、なんとなく曖昧な不安があるのが現在のホンネである。就職活動をするにあたり、不安が実感に変わる前に経済の本当の姿について知ろうと思ったことが、本書を読むきっかけとなった。
 本書は、経済に関する素朴な疑問50個について答える形で書かれている。まず、景気は下がるところまで下がれば自然に上がるとされてきた。しかしこれはバブル崩壊後から現在までの経済状況が実証づけているように、底なし沼のように無限に落ちていくものである。まずこの考えを頭に入れる必要がある。では不況の時代になぜ、「ディズニーシーは大盛況であるか。」「エルメスやルイヴィトンなど高級ブランドを買う人が多いのか。」などの疑問が挙げられる。これらの商品はファンが多くカルトの世界に近い。値下げをする必要がないため、デフレの時にはとくにこの業界は無敵である。一方大型家電ショップでは、値下げ競争が繰り広げられている。個人消費においては、この二極分化が進んでいるのが現状だという。
 不況から脱出するためには経済政策が鍵を握っている。構造改革として現首相が行った政策はどんな機能をはたしたのか。また、構造改革がもたらす最大の痛みは失業ではないと言う。実は問題はそのあとにあるのだ。再就職はできるが、転職により給料が半分以下に下がることが避けられない。これは景気回復したところ変わらず、永久に続く痛みとなるのである。この問題のように、直接的に私たちに関わってくる深刻な問題点もあるのだ。
 本書の様々な問題の中で一番怖いと感じたのが、多くのエコノミストや有力者がこの不況というどさくさにまぎれてお金持ちの有利な社会に変えようとしていることだ。貧富の差がどんどん開くということである。そんな未来にしないためにも、まず本当の経済状態を知る必要があると感じた。本書は、日本経済を知るための入門とも言うべき本である。