2003年書評(第4回)
評者:山口(5期生)
小松俊明[2003]『成功する人材がしていること』アスペクト。
ISBN4757209606
22×41=898字
「これからの時代に求められる人材として、自らの価値を高めたいと考えている人が注目すべきポイントとは何か。それは国籍を超えて通用する人材になることである。」国際化で騒がれる世の中で一見聞き慣れてきた言葉だが、著者が発すると説得力がある。それは著者が国内の大手企業と、国内外問わない外資系企業と、共に経験しているからであろう。
本書は、グローバルな現場にいる人を含めた実例を12の成功パターンにまとめ分析している。またそこに人材評価メモの一端を掲載し、より流れを分かりやすくしている。著者は住友商事に在籍経験があり、現在は外資系ヘッドハンティング会社「TMPワールドワイド」で働くヘッドハンター・小松俊明氏である。「仕事は早くて雑でいい」など古風な経済論者が聞いたら怒りそうだが、大胆だが根拠に基づいた欧米的な発想が多い。
では本書の成功パターンのうち○つを紹介しよう。一つは「社内の人脈を転職に生かした」例である。社内人脈が豊富でその影響力も大きい女性ならではの考えで、社内の人脈をレファランスチェックや360度評価に活用し転職した話。成功する人材の人脈活用の事例である。次に「高収入に潜むリスクを見極める」という話である。提示する年収より、各社が最初に下す自分への評価に注目していた為、高騰する年収提示に対しても冷静な判断をし、「高年収ゆえに自分に対する期待が必要以上に高くなり、短期間で理不尽な結果を求められる」という罠にはまらなかった話。「成功する人材が企業を選んだポイント」の事例である。最後に「良い質問ができる人材」である。「良い質問をできる者は、聞き上手であり話を発展させ信頼関係を築ける。その裏で必要な情報を会得することもできる」成功する人材の必須能力だとまで言う。
著者は最後に言う「成功する人材には幾つものパターンがある。しかし個人に与えられた自由が一つあり、それは成功か否かは自らの人生を『幸せ』と思うかどうかで決まる」と。本書は『幸せ』と思える転職をする者を増やすための成功事例集なのであろう。