2003年12月書評(第4回)
評者:福永(6期生)
宮崎学[2002]『地下経済』青春出版社。
ISBN4-413-04038-4
40×24=960字

 まずこの衝撃的な作品の私の率直な感想は、"新鮮"ということだった。それはどういうわけなのかというと、まず、著者の特徴として京都伏見のヤクザの組長の息子として生まれていたということだ。言わば、裏世界を生きてきた人間だ。そして、題名の通り「地下経済」に通じた著者が、世の中の目に見えないところで汚い取引がされているということを著者なりの表現・文体で我々読者に知らしめている作品なのだ。具体的な流れを示しておこう。
 始まりは、不正を行った企業に対する一般論を覆して、商売においてはどの企業も正しい事だけ行っているわけではないと述べ、バブル期の銀行の悪行を暴露することへと繋がる。ここで、著者は、銀行の行ってきた手口をヤクザよりもえげつないと語っている。次に、政治家たちのいやらしさを指摘し、自分たちの利権の事しか考えていないと言う。そこで、郵政民営化や道路公団民営化などの裏構造などを挙げ、そのいやらしさを教え込んでいる。そしてそれから延々と政界・官僚についての裏の思惑、事情などを暴いていっている。そして最後に語っている事が面白い。ヤクザの三大行動パターンを「脅す」「ゴネる」「居直る」と紹介した上で、「いうこと聞かんとミサイル打ち込むぞ」とイラクを脅し、「お前とこの国は人権を守りよらん」と中国にゴネる、そして、「お前とこに返すカネなんぞない」と日本に居直る国があると言う。もちろん、アメリカであるが、著者はヤクザと同じ事をしていると言っている。自分たちの利益のためには平気で他国を潰すような真似を平気でやるとし、アメリカが世界各国に押し付けている「グローバルスタンダード」とやらも、単なる「アメリカンスタンダード」だとまで言っている。そして、次々とアメリカの悪行を語り本文を終えている。
 この作品を最初に"新鮮"な感じを受けるものだったと言ったのは、普段から読むような、お堅い経済本には書かれて無いような事が綴られているからだ。たまにはこのような"異端的"な作品を読んでみるのも痛快かもしれない。ただ、この本に影響されすぎてしまうと世の中が嫌になってしまうような気がしてならない。ご用心を。