2003年12月書評
評者:近(6期生)
町田洋次[2000]『社会起業家』PHP新書。
ISBN4-569-61360-8
40×22=880字

 社会起業家とは、一言でいうと「医療、福祉、教育、環境、文化などの社会サービスを事業として行う人たち」である。単に社会的使命を持った事業を起業するだけでなく、行き詰まった社会的事業を活性化したり、また非営利組織をプロとして経営するなど、その活動のスタイルは様々である。日本の良い社会起業家を紹介しよう。老人向け緊急通報サービスを創った大村弘道さん、日本初のインターネット・ハイスクールを設立した日野公三さんなどである。社会起業家とは社会的価値を創造することによって、世の中を明るくする。
 成功する社会起業家に共通する資質として、5つの資質が挙げられている。@リーダーシップがあること。Aストーリー・テラーであること。B「人」のマネジメントができること。C理想家でありオポチュニスト(ご都合主義)であること。Dアライアンス(同盟)の構築者であること、である。具体的にどういったものであるか気になる方は、本書に目を通していただきたい。
 社会起業家とは非営利組織だ。非営利組織が社会的事業を活性化することを目的にしているといっても、敗者をつくるルールがないと緊張感がなくなり、組織全体が怠け者集団となって堕落してしまう。現在、当初の事業の使命が達成され、組織としての存在価値がなくなっている非営利組織の存在が問題となっている。そこで東京都は、@年俸制を導入する、A契約社員を増やし、社外取締役制を導入するなど、民間企業なみの競争原理を導入して経営の改善を図ろうとしている。
 本書を通じて、社会起業家の必要性を感じることができる。そして、世界の社会起業家たちが残した功績を学ぶこともできるだろう。大村さんや日野さんなどのように、良い社会を築くことを第一の目標とし、なおかつ黒字経営をすることができたら、これほど素晴らしいことはない。不景気のこの時代に、こういった社会起業家がたくさんあらわれることが、世の中を明るくする一つの道であることを実感できるだろう。