2003年12月書評
評者:中川(6期生)
山田昌弘 [1999]『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書。
(ISBN4480058184)
(35×28=980文字)
「パラサイト・シングル」、普段耳にしない言葉である。しかし、これが最近増えているのだと言う。本書を読んで、私の知人でもそのような状態に分類される人が多くいることに気づく。こんなに身近にあるが、意識しない問題。本書は、その本質を見定め、また批判している。
まず、パラサイト・シングルとは何なのだろうか。それは、学卒後も親と同居し、基礎的生活を親に依存している未婚者のことを指している。想像に難くないが、彼らは豊かである。この豊かさの質について、著者は三つの点で恵まれていると指摘する。それは経済的、人間関係、自己実現である。親と生活を共にすると、これらの点で自立している若者より高い満足度を得ることができるのだ。
ならばなぜ近年、パラサイトする若者が増えたのだろうか。私は家事を「しなくていいから」や、「一人暮らしをすると金がかかるから」などが原因ではないかと考えたが、実際はもっと深いところにあるらしい。親の子に対する家継承意識や、日本の年功序列という賃金体系、企業の福利厚生費の削減などがある。これを放置しておくわけにはいけない。なぜなら、経済に与える影響が大きいのだという。彼らは懐が潤っていて、多くの高級商品の需要を生み出すから経済にとってプラスになるのではないか、という見解が一般的ではないだろうか。しかし、著者はそうは言わない。なぜなら、仮にパラサイトしている人が、一人暮らしを始めたとする。そうした場合、親と共同で使用していた住まいや、家具、電化製品、車などを新しく買わなくてはいけなくなる。言い換えると、その分の需要が、パラサイトしていることによって消滅していると言うのである。これは、彼らの数は一千万人と言うことから考えれば、大・大・大問題であるということに気づかされる。
著者は、解決策をいろいろと考案していたが、私は自然な社会の流れでこれは解決すると思う。現在、一部の企業で年功賃金の廃止、成果給導入に着手している。これは、若者の賃金上昇、年配の賃金低下をもたらす。つまりパラサイトされる母体が弱くなり、寄生する側が力を付ける。よって否が応にも自立は促されるのではないか。他人事ではないこの問題をあなたも考えてほしい。