2003年12月書評 
評者:中川(6期生)
小松俊明[2002]『「売れる人材」「売れない人材」の見分け方』PHP研究所。
(ISBN4569623743)
(35×26=910文字)

 近年、外資系企業の日本参入の活発化や、不況下でのリストラの影響などで転職の機会が増えている。そんな中、ヘッドハンターという職業が注目をあびてきた。著者は、現役の外資系ヘッドハンターである。その経験から、「売れる人材」「売れない人材」の判別の術を本書で紹介している。外資系で勤めているというところがミソで、私が現在の職場や労働市場に対しての常識的な認識との差異がおもしろい。
 上に述べた判別の術の中で特に印象深かったものが二つある。一つが、「体育会系はリストラの対象になる」というものだ。これは、常に変化する時代の流れの中で体育会系の持つ古い意識が企業の流れの邪魔になるのだと言う。もう一つは、「斬新なアイディアを出す人は転職で失敗する」。このことは、すばらしいことのように思えるが、著者はそれよりも企業が求める人材像を理解していることを示すほうがよいと述べる。これにより、採用のミスマッチを防ぐことができるのだ。この二つが、特に私が想像していたものと違っていた。時代の流れや、環境により現場は常に変化し続けているのだと言うことを思い知らされた。
 また、本書が論じる売れる人材とは、「人脈を大切にする」、「コミュニケーション力がある」、「時流を見極める」・・・、などさまざまある。いくつかあるなかで、大切なものは「人脈を大切にする」ではないだろうか。本書では、そのことについて多くの場面で触れられている。例えば、メンターを持つことや、優秀なヘッドハンターと日ごろからお付き合いすることなどを進めている。優秀な人材であっても、孤独な一匹狼では実力を発揮することはできないのであろう。
 本書は、売れる人材と売れない人材を比較できる構成になっているので読みやすい。内容としては、大企業に勤めている人向けで、学生には若干取っ付きにくいという印象を受けた。しかし、将来労働市場が今より流動化する、そんな中で転職によって、キャリアアップを実現したいという考えを持っているのならば本書は、ベストアドバイザーになるだろう。