2003年12月書評
評者:高田(6期生)
石井 淳蔵『ブランド 価値の創造』岩波新書。
ISBN:4004306345
25×40=1000字
マルクスは『資本論』で、社会の富は「膨大な商品の集積」として現れる、と認識した。しかしマルクスが現代という時代を見れば、社会の富は「膨大なブランドの集積」として現れる、と書いたのではないか、という書き出しで本書は始まる。私はブランドと聞くとまず高級なイメージが出てくるが、本書を読むと、例えば無印良品もブランドであり、洗剤や歯磨き粉を作っている花王やライオンなどもブランドだということに気づかされる。そう考えると身の回りにある服や電化製品、日用雑貨にいたってもブランド品ばかりで、私たちのまわりはさまざまなブランド品であふれていることがわかる。本書の最大のテーマは「ブランドが消費欲望にも製作者の思いにも還元されることなく、なぜ価値をもつのか」というもので、その説明を六つの章にわけ具体的な会社を例に挙げて説明している。
まず著者はブランドと製品と商品はビジネスの実践上、はっきり違ったものとして理解できると述べ、三つをこう定義している。商品とは、製品とブランドという二重の性格をもったものである。そのうち製品とは、その機能・性能・効能等、技術や製法に密接に関係した物理的実態である。そしてブランドとは商品の名前である、としている。
本題であるブランドについては、三つの特徴にわけ説明している。ブランドはまず、ひとつの統一性をもった宇宙を確立しながらもその外部に出会うたびになお変容する可能性を示すものとして、ふたつ目の特徴として、ブランドはペグに向けての無限の運動を強いられるのだが、その道において統一性を失うことなくその価値を深め領分を拡張できる可能性をもったものとして、三つ目として、ブランドはたんなる商品名ではなく、時間と空間を超越し、しかも共同幻想にとどまらぬ価値をもったものとして、その基本的性格を理解できるというふうに説明している。
本書は私がいままで読んだ本のなかでかなり興味をひかれるもので、とてもおもしろい本だった。難しい言葉が多く、頭の中がぐちゃぐちゃになることもあったが、章のはじめや終わり、新しく話をはじめるときにはいままでのまとめがあり、頭を整理して読むことができた。本書を通して特に印象に残ったことは、買い物をする際に自分がなぜブランド品を選んでしまうのか、といったような商品を購入する際に無意識に働く消費者の心理であった。その心理を詳しく述べており、まさにその通りだったと気づかされることが多かった。