2000年1月12日 水曜日更新
平成11年度 経営労務論の講義紹介
平成11年度「経営労務論」は中間試験を行いません。学期末試験のみです。
各回のテーマ|経営労務論の紹介|新聞記事の紹介|参考文献の紹介
●各回の授業テーマ(毎週更新!)
- 第1回〜4/16(木),4/20(月)
ガイダンス。基礎学力テストとアンケート。
- 第2回〜4/23(木),4/27(月)
経営労務論の課題。『経営労務論を学ぶと何が見えるのか?』
- 第3回〜5/06(木),5/10(月)
戦後の経済と経営、労働。『経営のシステムが優れていたから日本企業は強くなったのか?』
- 第4回〜5/13(木),5/17(月)
(雇用Part1)終身雇用論序説。『「終身雇用」とは何か?』
- 第5回〜5/20(木),5/24(月)
(雇用Part2)終身雇用の成立。『もともと「終身雇用」だったのか?』
- 第6回〜5/27(木),5/31(月)
(雇用Part3)終身雇用の実際。『実態はどれくらい「終身雇用」か?』
- 第7回〜6/03(木),6/07(月)
(雇用Part4)終身雇用の功罪。『「終身雇用」のいい点・悪い点』
- 第8回〜6/10(木),6/14(月)
(雇用Part5)日本型雇用システムの将来。『「終身雇用」の限界と可能性は?』
- 第9回〜6/17(木),6/24(月)
(賃金・昇進Part1)年功賃金とは。『年功賃金とは何なのか?』
- 第10回〜6/24(木),6/28(月)
(賃金・昇進Part2)年功賃金の歴史。『年功賃金はどう変わってきたのか?』
- 第11回〜7/01(木),7/05(月)
(賃金・昇進Part3)人事考課の仕組み。『どんな点が評価されているのか?』
- 第12回〜7/08(木),7/19(月)
(賃金・昇進Part4)異動と昇進。『サラリーマンはどういうキャリアをたどるのか』
- 第13回〜7/15(木),
(賃金・昇進Part5)【ビデオ鑑賞】「リストラ」に関する約30分のビデオを見てもらい、小レポートを書いてもらいます。
- 第14回〜9/16(木),9/20(月)
(組合Part1)労働組合の経験。『日本の組合は過去にどんな体験をしてきたのか?』
【ビデオ鑑賞】三池争議に関するビデオを見てもらい、小レポートを書いてもらいます。
- 第15回〜9/30(木),9/27(月)
(組合Part2) 労働組合の経験その2。『組合員の考え方・経営者の考え方』
【ビデオ鑑賞】国鉄の労働組合に関するビデオを見てもらい、小レポートを書いてもらいます。
- 第16回〜10/7(木),10/4(月)
(組合Part3)労働組合のしくみ。『労働組合の存立基盤とは何か?』
- 第17回〜10/14(木),10/18(月)
(組合Part4)日本の労働組合。『日本の労働組合はどんな特徴を持っているのか?』
- 第18回〜10/21(木),10/25(月)
(日本的経営)日本的経営の機能。『日本的経営労務の果たした役割は何か?』
- 10/28(木),11/1(月)は大学祭のため休講です。
- 第19回〜11/4(木),11/8(月)
(労働時間論)日本の労働時間。『日本の労働時間は国際的に見てどういう水準なのか?』
- 第20回〜11/11(木),11/15(月)
(論文の書き方)社会科学の論文作法。『よい論文とはどんな論文か?』
- 第21回〜11/18(木),11/22(月)
(女性労働Part1)日本の女性労働。『日本の女性労働の特徴は何か?』
- 第22回〜11/25(木),11/29(月)
(女性労働Part2)女性をとりまく労働問題。『なぜ女性労働問題なのか?』
- 第23回〜12/2(木),12/6(月)
(福利厚生論)日本の福利厚生。『日本企業の福利厚生はどんな特徴を持っているのか?』
- 第24回〜12/9(木),12/13(月)
(総括)1年間の総まとめとアンケート(質疑応答)。月曜の授業では30分間(Part13と同内容)のビデオ講義を含みます。
- 第25回〜1/13(木),1/17(月)
(2000年の労働問題)『今後、どんな問題を解決していく必要があるのか?』。
●経営労務論(月曜7限、木曜1限)の紹介
(1)講義のねらい〜この講義では、現代の日本企業とそこに働く労働者が抱える経営労務問題を
幅広く扱っていく。具体的には経営学と経営労務論、戦後日本経済と日本的経営論、経営労務
学説史、終身雇用、年功序列賃金、企業別組合制度、福利厚生制度、異動と昇進、人材形成、
日本的生産システム、ホワイトカラーの労働問題、女性労働問題、90年代の労働問題などの小
テーマを設けて講義していく。
学生には講義を受講することで企業と労働、社会について幅広い問題関心を持ってもらいたい。
(2)講義の内容・スケジュール〜講義は1コマ1テーマの原則。
各回毎に「日本は本当に終身雇用なのか?」といったように問題点を掲げ、その解説をする。
(3)履修上の注意点
・出席は取らないので、出席点はなし。
・私語は他の学生に迷惑になるので遠慮してもらいたい。
・携帯電話を持参しているものは必ず消音しておくこと!!
(4)成績評価の方法〜評価は学期末の試験のみによる。内容はA方式:@空欄補充問題(約60
点分)A論述問題1問(約40点分)の計100点、またはB方式:論述問題1問(100点)のいずれ
かを選択のこと。詳細は第20回の講義時間で説明済み。
(5)教科書〜テキストは津田眞澂『人事労務管理』ミネルヴァ書房、1993(定価3000円程度)を使用
(6)参考書〜参考図書としては、
労務学説史をわかりやすく説明したものとして
・渡辺峻『企業組織の労働と管理』中央経済社、1995(定価2600円程度)、
経営労務をより体系的に深く学習するのによい
・白井泰四郎『現代日本の労務管理第2版』東洋経済新報社、1992(定価3500円程度)など。
この他にも講義の中で適宜いろいろな文献を紹介していく。
(7)その他〜授業は講義の形式でおこなうが、図表やグラフを多用し、ただ聞いてノートを取る
だけでなく「頭をつかう」ような形にする。
●各講義で取り上げた新聞記事の紹介
第1回 「米失業率低下4.2% 3月、29年ぶりの低水準」
(日本経済新聞 99年4月3日土曜日付け)
第2回 「労災で年100万人以上死亡 ILOが警鐘 途上国で多発)
(日本経済新聞 99年4月12日月曜日付け夕刊)
第3回 「女性の社会参画進まず 管理職比率9% 家事負担重く 男女共同参画白書」
(日本経済新聞 99年4月23日金曜日付け)
第4回 「養命酒酒造 賃金下げず雇用延長 職種関係なく最長65歳まで 年金支給年齢引き上げに対応」
(日本経済新聞 99年4月10日土曜日付け夕刊)
第5回 「失業1年以上 最多70万人 正社員106万人減 再就職の厳しさ映す 2月時点総務庁調査」
(日本経済新聞 99年5月18日火曜日付け)
第6回 「伊藤忠グループ 事務職を一括採用 籍は派遣子会社 業務に応じ配置」
(日本経済新聞 99年5月14日金曜日付け)
第7回 「外国人労働者 受け入れ拡大8割が否定的 企画庁がモニター調査」
(日本経済新聞 99年5月10日月曜日付け)
第8回 「改正均等法下の就職戦線 女子大、求人増に戸惑い 門戸開放かポーズか 学生は見極め必要に」
(日本経済新聞 99年5月31日月曜日付け夕刊)
第9回 上に同じ
第10回 「シリーズ変革期の人材サービス 営業・販売の請負本格化 規制緩和を先取り」
(日本経済新聞 99年6月11日金曜日付け)
第11回 「パソナ 新卒にも給与格差 職能給に専門資格反映 最大で月3万円上乗せ」
(日本経済新聞 99年6月9日水曜日付け)
「NTT−ME 新卒の条件にマルチメディア資格」
(日本経済新聞 99年6月5日土曜日付け)
第12回 「人事考課制度のある企業 4分の1が結果公開 労働省調べ」
(日本経済新聞 99年6月26日土曜日付け)
第13回〜第15回はビデオ講義のため、新聞発表休み。
第16回 「障害者雇用で納付金 日航に代表訴訟通知 株主オンブズマンら」
(日本経済新聞 99年10月2日土曜日付け)
「社内窓口は相談しにくい? 医療相談大手ティーペック セクハラ相談外注請負」
(日本経済新聞 99年10月3日日曜日付け)
第17回 2つの労働組合の性質の違いを読みとろう!
「フォード暫定合意 新労働協約 労組優位の結果に」
(日本経済新聞 99年10月11日月曜日付け)
「冬のボーナス増額 トヨタ労組が再交渉断念 「業績改善は不透明」」
(日本経済新聞 99年10月10日日曜日付け)
第18回 なし
第19回 「転勤命令は「甘受すべき」(最高裁) 生活の論理、押され気味」
(日本経済新聞 99年10月14日木曜日付け夕刊)
第20回 「期限付き雇用浸透するが... 働く側、権利主張しにくく 企業、合理化の切り札」
(日本経済新聞 99年11月8日月曜日付け夕刊)
第21回 「23万人就職決まらず 内定率最低:大学生63.6% 短大生36.5% 理系・男子落ち込む」
(日本経済新聞 99年11月13日土曜日付け)
第22回 「総人件費 日本企業減5割 外資は増過半数 年俸制、外資で進む(産労総研調べ)」
(日本経済新聞 99年11月24日水曜日付け)
「丸子警報器賃金格差訴訟 29日にも和解 パート、正社員の75%」
(日本経済新聞 99年11月20日土曜日付け)
第23回 「週休2日は進んだけれど・・・ 増える一日の労働時間 仕事と家庭の両立厳しく」
(日本経済新聞 99年11月26日金曜日付け夕刊)
●講義に役立つ参考文献
・第2回 経営労務論の課題
○今田高俊・友枝敏雄編【1991】『社会学の基礎』有斐閣、特に第1章。
〜社会科学を考える際に必読の本。授業で扱った観察帰納法、仮説演繹法、意味解釈法を事例つきで詳しく説明している。
○白井泰四郎【1992】『現代日本の労務管理 第2版』東洋経済新報社、特に第1章。
〜人事管理と労務管理という学問の呼び名がどのような背景で生まれてきたのかを知るのに良い。探すときは「第2版」を。
○赤岡功・岸田民樹・中川多喜雄【1989】『経営労務論』有斐閣、特に第1章。
〜経営労務と労務管理という学問の呼び名がどのような背景で生まれてきたのかを知るのに良い。
・第3回 戦後の経済と経営、労働。
○三橋規宏・内田茂男編【1994】『昭和経済史 中・下』日本経済新聞社。
〜経営学を勉強するのなら、少なくとも戦後の日本の経済史・経営史について基礎的な知識をつけておいて欲しい。
・第4回 終身雇用論序説。
○アベグレン【1958】『日本の経営』ダイヤモンド社。
〜日本的経営論の火付け役。有名な本だが、古いので出版されていない。図書館で借りるしかない。
・第5回 終身雇用の成立。
○間宏【1989】『日本的経営の系譜』文眞堂。(初版は1963年日本能率協会版)
〜戦前の経営家族主義から戦後の経営福祉主義への流れが分かる。高度成長期以降の記述はない。
・第6回 終身雇用の実際。
○鹿嶋秀晃【1998】「低成長下の日本型長期雇用」九州大学大学院経済学会『経済論究』1998年7月、pp.43-58。
〜拙稿です。図表が多いのでそんなに難しくないと思います。図書館にあります。
・第7回 終身雇用の功罪。
○鹿嶋秀晃【1998】「日本型長期雇用の管理的意義」九州大学大学院経済学会『経済論究』1998年3月、pp.57-71。
〜同じく拙稿です。前のに比べるとやや難。同じく図書館にあります。
・第8回 日本型雇用システムの将来。
○日本経営者団体連盟【1995】『新時代の「日本的経営」』1995年5月17日。
〜経営者団体がバブル崩壊以降の日本的雇用の行方を考えた一冊。報告書形式ですが歴史的に重要な一冊。
・第9回 年功賃金とは何なのか
○小池和男【1999】『仕事の経済学(第2版)』東洋経済新報社、特に第4章。
〜第4章「報酬Pay−年功賃金か」では、日本と欧米のホワイトカラーの年齢別賃金の国際比較を行っている。
授業で扱ったよりさらに詳しい図表などが掲載されているので参照にするとよい。
なお、この本は同タイトルで1991年に発行されているが、99年5月に改訂されているので「第2版」を探そう。
・第10回 年功賃金の歴史
○鈴木良始【1994】『日本的生産システムと企業社会』北海道大学図書刊行会、特に第4章。
〜専門書なので読むのにすごく時間がかかると思うが、是非チャレンジしてもらいたい一冊。
職務給から職能資格給制度へと変化していった過程が詳細に分析されている。
・第11回 人事考課の仕組み
○久保淳志【1978】『能力をのばす人事考課のすすめ方』中央経済社。
〜もう20年以上も前に書かれた実務家向けの本であるが、人事考課の仕組みをわかりやすく解説している。
これを読むと、人事考課においては評価の側面だけでなく、能力開発の面があるのだということを理解できるでしょう。
○鈴木良始【1994】『日本的生産システムと企業社会』北海道大学図書刊行会、特に第4章。
〜前回の職能資格制度の部分とあわせて、現代日本の人事考課制度の抱える問題点を知ることが出来ると思います。
・第12回 異動と昇進
○八代充史【1995】『大企業ホワイトカラーのキャリア』日本労働研究機構。
〜「効率」と「動機づけ」の両立のために、異動と昇進という人事制度がどのように運用されているのかを読みとる
ことが出来ます。
・第16回 労働組合のしくみ
○日本労働研究機構【1998.12.24】『労働関係法規集 1999年版』日本労働研究機構、1200円。
〜労働法制をもっと詳しく知りたかったら、上のような法律集を実際に読んでみるとよいでしょう。
日本語は比較的わかりやすいのでに予備知識なしでも読めます。
ちなみにこの法規集は毎年発行されています。
他に、ビジネス書のコーナーに行けばもっと簡単に労働基準法などを解説したものもあります。
・第17回 日本の労働組合
○白井泰四郎【1996】『労使関係論』日本労働研究機構。
〜労働組合の日本的特徴を知るのに手頃な1冊である。前半の労使関係、労働運動の略史の部分も役に立つ。
テキストブックのシリーズの中の1冊なので読みやすいと思う。
・第19回 日本の労働時間
○森岡孝二【1995】『企業中心社会の時間構造』青木書店。
〜日本の長時間労働を知るのに最適の書。第3章には授業で扱った労調と毎勤の差についての詳しい紹介がある。
・第21回 日本の女性労働
○労働省女性局編【1999】『平成10年版 女性労働白書 働く女性の実情』21世紀職業財団。
〜女性労働の実情を知るのには必須の一冊。図表・グラフが多く理解しやすい。
卒業論文などで女性労働をテーマとする人は是非購入して手元においておくのがよい。1890円税込み。
・第22回 女性をとりまく労働問題
○基礎経済科学研究所【1995】『日本型企業社会と女性』青木書店。
〜授業で扱ったアファーマティブ・アクションとコンパラブル・ワースについては第4章が役立つ。
その他の章も味わい深い。
・第23回 日本の福利厚生
○高橋俊介【1996】『カフェテリアプラン』日経BP社。
〜カフェテリアプランの本場アメリカの話に始まり、日本の将来までが分かる手頃な1冊。価格も1000円と安い。