最近の経済白書における不況要因をめぐる議論
96年度半ばごろから、好循環のリンクが次第につながってきたと見られる。…96年度下期には民間需要主導による自律回復循環が見られるようになった。
消費税率引上げ等が、このところつながってきた所得から消費へのリンクに影響を及ぼす可能性はないとはいえないが、雇用情勢の改善のプラス面がマイナス影響を相殺することが期待され、個人消費の腰折れにつながるものではないと考えられる。
消費の緩やかな回復傾向は維持されるものと考えられる。
(不良債権の現状)
96年末の預金取扱金融機関の不良債権額は29.2兆円。96年3月末より5.6兆円減。102
金融機関のバランスシート上は不良債権処理は進捗している…。
会計処理上は、金融機関の不良債権は償却が進んでおり、個別銀行についても大胆なリストラを含む抜本的な再建策がとられるなど、改善が進んでいる…
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1997年度に入って、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減に加え、消費税率引上げ、特別減税の終了等の影響や、更に秋以降の金融機関破たんによる金融システムへの信頼低下等の影響もあり、景気は停滞状態となった。
駆け込み需要とその反動減は〔政府の〕当初の予測を上回るものであった
景気動向が昨年の政府の予想以上に厳しくなった三つの要因
第一は、消費税引上げによる駆け込み需要の反動減および消費税率引上げ、特別減税の終了等の影響が長引いた。
(不良債権問題)
97年は、戦後初めて大手の金融機関が破たんした年。
〔破たんの要因は、〕97年の景気の減速や不良債権問題等を背景に、経営の悪化していた金融機関に対する株式市場や短期金融市場の信任が低下したこと。
〔日銀の〕低金利が維持されているうちに、思い切った経営改善、不良債権処理などを進めないと、…問題は再燃する。116
〔低金利が〕逆に銀行経営の「危機感」を後退させてしまった可能性は否定できない。133
しかし構造調整の遅れは、金利以外の要因に起因する面が大きく、低金利を主因とみなすことは適当ではない。134
「デフレスパイラル」に陥る状況にはない。91
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不良債権問題の進捗状況 第1章第1節10項内
今後の景気動向や資産価格の動向によっては、不良債権が増加する可能性はあるが、大手行に関しては…不良債権問題はほぼ峠を越えたものと考えられる。
景気が改善に向かうに伴って、需給要因は改善しデフレスパイラル懸念は一頃より後退した。
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植草一秀(野村総研)
『週刊東洋経済』1998年8月5日
〔経済の循環の〕エンジンになる消費、あるいは個人所得に9兆円の負担増というミサイルを命中させて、日本経済号を撃墜させた9
〔1997年版経済白書では〕 消費税引き上げの個人消費への影響については数行の分析で終わった7
大型増税で個人の可処分所得を大きく引き下げると、景気の悪化、株価下落により、水面下に眠っていた金融問題〔不良債権問題〕が再び火を吹くおそれがあると言ってきた7
1997年2月のNHKの日曜討論で日本の不良債権は100兆円あると言ったが、企画庁のOBが「情緒的な話」と言われた。
竹中平蔵
『エコノミスト』1998年8月10日
〔1997年12月以降〕消費性向が下がった要因は所得要因、つまり増税によるものではなくて、〔消費者の漠然とした不安という〕他の要因によるものだ。
増税したから景気が悪くなったという一部の短絡した議論があるが、そうではない。10
〔1998年版〕白書のこの分析は適切だ。