トヨタ自動車 堤工場   19941110

資料:『トヨタ会社概況』9411

 

7012月完成、2階建

従業員:5800

生産車種:ビスタ、カムリ、カルディナ、コロナ、ウィンダム、セプター

生産台数:1700台/日

本工場における最初の工程から終わりまでの時間:20時間

部品点数:約3000

 

第1ライン:ビスタ、カムリ、カルディナ、コロナ、ウィンダム

 ラインの長さ:1150

 ストップひも:ラインに沿って頭上にある。作業が遅れたときは作業員はいつでもこのひもを引いてラインを止めることができる。

 あんどん:ストップした工程を表わす数字が点灯する。班長などが応援に来る

 

第2ライン:カムリ、ウィンダム、セプター

 ドアレス方式:最終組立の前に前部ドアをはずしておく

 貼り紙方式:ラインを流れてくる車のボンネットは開けられている。そのボンネットに貼り紙が下がっていて、個々の車に組み付けるべき部品が表示されている。車の仕様は生産計画の段階で決められてコンピューターに入れられ、そのデータに基づいて各車の貼り紙が印刷作成される。

 提案制度:93年は93万件の提案があり、99%が採用された。

 同期台車:ねじ締めの道具などを載せた台車がラインの側に置いてあり、組み立てるべき車が近づくと、この台車を自動的に押して同時に作業者に近付いてくる。

 かんばん:部品箱の中に1枚ずつ入っている紙。ビニールシートに包まれている。部品はかんばんの指示に従って生産、納入される。

 

エンジンは別の工場で生産されて、その日の組立順序に従って納入される。

 この工場ではエンジンにトランスアクスルなどを組み付けてから組立ラインに送る。

 

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Q&A

 

1.                      従来のトヨタ生産方式と九州工場らRAV4のラインとの違い

   :分割ラインと在庫ゼロ

 トヨタ生産方式の2つの柱:JITと自働化

  現場では変化している。JITはラインの分割とは関係ない

 実際のラインのストップ:8時間作業のなかで1520分ある。

分割ラインの理由:

 1)長いラインなら1か所が止まれば全体が止まるが、それが避けられる。

 2)作業者が組の中での責任感や仕事の達成感を感じられる。

 

自動化率

 九州のほうがRAV4のラインよりも自動化率が高い。

 RAV4のラインの溶接工程の自動化率は70%。手作業の溶接がある。

 自動化率を高くすると、不況期に機械の稼働率が下がってムダが出る。

  例:2台のロボットで10000台生産していたあとで生産量が5000台になったとき。

  例:バブル期にはボルトの位置決めをするロボットを入れたことがあった。

    今は位置決めを手でやって、ねじ締めは機械で行なっている。

 

在庫ゼロについて

 バッファーは自然にできる。

 1520分のライン停止は1回当たり12分の停止。

  1台分のバッファーがあれば吸収できる。これは在庫というほどではない。

 現場の運用が成り立たないことはできない。

 実際の部品在庫:1時間分、8時間分、12時間分もある。

  *元町工場のプレス工場の材料在庫は4日分あった。(1117日)

 

2.           提案制度

 提案された意見の採用率は90%。

 採択されるのはコストダウンや利益になるものだけではない。

  精神的な意味が大きい。一人一人が自分の仕事に改善意欲をもつ。

  欧米人にはわかりにくい。

  事務部門の場合は、資料の保管をわかり易くするとか。大したことない。

 

3.           BR(ビジネス・リフォーム)活動 

 事務部門の各部署から20%の人員を引き抜いたうえ、10%の人員の作業分に当たる時短を強制的にすすめた。従来の70%の人員で従来の業務を処理する(『日経ビジネス』6月20日)。

  引き抜かれた20%の人はその部署を効率化する方法を考える。

パブリック・コミュニケーション部では、

 60人のうちはじめ67人を抜いた。今は15人抜いている。

  抜かれた人は今後、同じ部署に戻れるか?

 来客受付を、従来は紙の書類で処理していたが、OA化した。

 

4.           労働者

女性の作業員:全工場で3年前から。現在350人。

 広瀬工場(電子制御装置など)が最も多い。

外国人労働者:

 トヨタの正社員にはない。海外の工場からの研修で働いていることはある。

期間工(アルバイト):今はゼロ。かつては冬だけの期間工がいた。

 

5.           生産計画: 各車種の生産量と生産順序

 月間で決める。ある程度変更可能。3日前なら変更できる。

 生産量: 販売店からの注文を生産側と調整する。

  完成車の在庫はない。注文のあった車のみ。

 販売店は数か月先の販売目標をもとに注文する。販売店に在庫はある。

 

6.           部品の生産計画

 エンジン:車両と同じ。上郷工場と明日工場で製造。

 部品メーカー: 毎月予定量を内示。かんばんで発注。

  両者の整合性を高める努力をしている。結果的には一致。

 

7.           部品の外注

 外製率70%、内製率30%。

 部品は部品メーカーと共同開発する(デザイン・イン)。

  アメリカでは設計図を渡すだけで、両者の話し合いが無い。

 外注のメリット: 各部品メーカーに関連する専門技術。

  例:UVカットガラス。提案はトヨタがするが、製造のノウハウはガラスメーカーにある。

 

8.           生産計画が遅れた場合

 残業で吸収。今は1時間。

 勤務時間:8時から5時、夜9時から朝6時

 

9.           リコール

 

10.         景気、他社との比較

 7月から前年比の売り上げが伸びた。しかし前年は悪すぎた。トヨタは人員削減をしない。

 日産はまだ赤字がある。

 ホンダは海外生産を追求し、逆輸入車ではトップ。

 三菱はRV40%に。

End