日本経済論特講

1123日〜1130

経済学研究科 経済学専攻 314106 高橋良太

 

米倉誠一郎 『経営革命の構造』 岩波書店 2003

第四章       日本型組織革命の進展

 

第一節       高度経済成長と大型設備投資

 

敗戦後の日本

     1950年…敗戦で国富の4分の1を失い国民は混乱→1968年には世界第二位の経済大国。

戦前と戦後の質的変化

     大躍進の背景…鉄鋼業、造船業、自動車などの高付加価値産業の著しい発展による。

クライシス・マネジメントとしての傾斜生産

     資源の一点集中全面展開…重油の輸入→鉄鋼業に集中投下→石炭業→鉄鋼業→石炭業→二つの基幹産業を資源の傾斜配分によって再建。

痛みを自覚した強固な意志

     鉄鋼業再建のために…GHQに石油の輸入を吉田茂が懇請した→国民に耐え忍ぶことを強制、基幹産業として鉄鋼業が選択された。

資源・設備・資金・欠乏からの発展

     浅田氏…日本には鉱石も石炭もないから鉄は輸入し、日本は軽工業でいくべきだ。

     その後…日本の鉄鋼業は世界の頂点に。

日本製鉄と川崎重工の分割

     戦後日本の鉄鋼業における重要な出来事…日本製鉄の分割と川崎製鉄の独立と一貫化への進出。

西山弥太郎の工場建設計画

     西山弥太郎率いる川崎製鉄が銑鋼一貫製鉄所の建設計画→一斉に非難。

     帝国大工学部卒業→川崎製鉄を率いて銑鋼一貫工場を建設→カーネギーのように規模の経済を達成するために新しい大型機械の必要性確信

     投資額163億円。のち273億円に(192p

市場の効率性を重視した川崎製鉄の分離独立案

     GHQの目的…戦中の統制経済・独占資本の排除→日本経済の市場の復活。

     川崎製鉄の分離独立案は…市場の効率性を重視し↑のような変化に対応しようとしたものであった。

平炉メーカーから銑鋼一貫メーカーへ

     軍需がなくなり…国際競争力を付けなければならない→銑鋼一貫製鉄所が必要になった→西山弥太郎の川崎製鉄の独立。

西山のビジネス・モデル―三つの革新性 190

     競争的寡占構造…川鉄の千葉工場建設による一貫生産参入→一貫メーカー6社による寡占的な競争形態を生み出した。

     最新鋭設備…千葉工場自体がイノベーティブな工場→コンパクトで効率的な工場。

     オーバー・ボロウィング…他人資本の活用による設備投資の推進

     →メインバンク成立。第一銀行

戦後日本の設備導入の特色

     ↑とは…最新の技術革新に裏付けられた新規の大型工場を借入金によって建設。

     ↑によって…利益なき拡大を前提とした、同質的過当競争を日本中に蔓延させた。

 

第二節       ニクソン・ショックと石油ショックによる主役交代

 

西山パラダイムと日本型特質

     ↑とは…借入金を中心とした調達資本を最新の大型設備に投下→圧倒的な国際競争力。

     メインバンク制によって…持ち合い株により敵対的買収を避けながら借入金比率を著しく上げることを可能にした。cf.長期雇用、定期採用等も一般化。

「袋だたきの日本」

     ニクソン・ショック…ドルと円の交換の一時停止、10%の輸入課徴金、(賃金物価の90日間の凍結、各種減税)→ターゲットは日本。

     1973年には…石油ショック→日本は深刻な経済危機。

一つの時代が終わった

     繊維業…自主規制で減量、かつ輸入課徴金→利益なく立ち行かない。

     鉄鋼業…輸入課徴金→鉄鋼の需要減にどれほど影響するか計り知れない。

     自動車産業…輸入課徴金→小売価格が10パーセント上昇→対米輸出に大きな影響。

     家電業界…小売値の凍結、輸入課徴金→対米輸出をストップ。

円切り上げに対する悲観論と楽観論

     悲観論…造船、機械・プラント輸出、繊維。

     楽観論…自動車、家電→「低価格・高品質製品」の時代に。

石油ショックのパニック

     ↑によって…資源小国日本はパニック→深刻なインフレーション→戦後最大の危機。

高エネルギー消費部門の停滞と主役の交代

     労働集約的な繊維産業やエネルギー多消費型の鉄鋼・造船・石油化学→中間的な加工組立型機械や輸送機とくに自動車産業が有利に。

 

第三節       ポスト・フォーディズムとしてのカンバン方式

 

予想外に豊かになった日本

     不況下でも…新製品の開発や新販売戦略を採用し、拡大再生産の道を探求→日本は豊かに。

大野耐一とトヨタ生産方式

     トヨタ生産方式…多種少量で安く作ることのできる方法。

ジャスト・イン・タイムと自働化

     ジャスト・イン・タイム…必要なだけ、必要なときに、生産ラインのわきに到着。

     自働化…狭義には異常があれば現場作業者が自主的判断で機械を止め、広義には全従業員を巻き込んだ品質改善運動のことである。

ジャスト・イン・タイム方式の三つの経営革新

1)        多品種少量生産…部品在庫を持たない→コスト上昇を最小化しながら多品種生産を可能とした。

2)        開発リードタイムの圧縮…新商品開発チームに設計段階から部品供給業者を参加→製品開発・製造プロセスを大幅にスピードアップ。

3)        中間組織…系列生産として有名になるアッセンブラーとサプライヤーの関係。

     ↑から…組織の利点を相互に浸透させながら、安くて高品質の製品を調達・生産するモデル。競争を通じた価格の透明性は業者を変えるスイッチング・コストを安くした。

     トヨタは…重要部品30%だけ内製化し、他は系列企業に外注。

     日本企業は…本体はリーンとし、市場の効率性と組織の安定性を同時共存させながら、より多様な製品をより安く、より速く開発→自動車、家電、機械工業等で圧倒的な競争力。