インターネット威力。震災の電子メールに10万通の激励

読売新聞ニュース速報 1996年2月2日、10:29

 阪神大震災の翌日、被災地の高校教論がインターネットで世界に向けて発信した一通の電子メールが、約10万通の激励と約70トンの文房具となって返ってきた。

 神戸市立神戸西高校(当時)の教諭、浅井徹氏(45)は、外務省の外郭団体「国際協力推進協会APICNET事務局」が企画したプログラムで、米国の高校生と「銃規制」や「エイズ」についてパソコン通信で意見交換、国情や考え方の違いを直接学ぶ授業をしていた。
 大震災にみまわれた1996年1月17日、兵庫県明石市内の自宅にいた浅井もガレージが崩壊するなど被災した。しかし日ごろから授業で活用していたノートパソコンは偶然、蒲団の上に落ちて無事だった。
 余震が続く中、米国の高校に現状を伝えようとしたが、神戸市内のアクセスポイントはダウン。別のポイントから東京のAPICNET事務局に電子メールを送り、24時間後の18日早朝、事務局が加えた阪神高速道路の倒壊写真などとともに世界中にメッセージが発信された。“The earthquake damage to the city is so tremendous.”(地震の打撃はすさまじい)
 メールと衝撃的な写真を見て、数時間後から「義援金の募金活動を始めた」「救援物資を送りたい」といった電子メールが続々と届き、一週間で届いたメールは約800通。激励の手紙約5000通や寄せ書き、絵、写真など数1000点も郵送されてきた。
 メールを発信した国は米国、ドイツ、イスラエル、スウェーデンなど11か国。国内からも、東京都北区立赤羽台西小や同区立浮間中などから激励のメールがあった。
 最終的にはメールや手紙類が約10万通、ノートや鉛筆など文房具類が70トンにも達した。浅井教論は、その後赴任した兵庫市立摩耶兵庫高校の文化祭で、段ボール十数箱分のメールや折りづるなどを展示。生徒たちは改めてパソコン通信の威力を実感した。

 社会科の授業にインターネットを活用し、「災害が発生したとき高校生として何ができるか」などのテーマでアメリカ、カナダ、オーストラリアの高校生との意見交換をさせている。
 以上のことについて、大阪市内で開かれている日教組の教育研究全国集会で二日、浅井は報告した。報告では、インターネットを使って在籍校以外の授業を受講したり、在宅のまま学習ができる「バーチャルスクール(仮想学校)」構想も提言。「15年、20年後には学校はこう変わっていくというビジョンを持ち、教師も変わっていかなければ」と訴えた。

(現在の資料にするため、表現を一部変更)


佐野真一郎、伊藤博文、山本孝一「インターネットの大衆化」『豊橋創造大学短期大学部研究紀要』第14号、1997年、51頁を参照。



http://wwwint2.int.komazawa-u.ac.jp/~kobamasa/