本社コラムニスト 田勢康弘

石は投げた人に向かう

『日本経済新聞』2005年4月18日


 なぜ、石を投げるのか。なぜ、他国の旗を燃やしたりするのか。世界貿易機関(WTO)に加盟し、国際社会の仲間入りしたはずの中国が、そんな愚劣なことをして何になるのか。中国から送られてくる直視できないような映像に、ほとんどの日本人は傷つき、怒りを抑えきれないでいる。他国の公館への妨害を防ぐのは、外交に関するウィーン条約で定めるもっとも基礎的な国際社会のルールである。これすら守れないようでは、来るべき北京五輪や上海万博の開催資格すら疑いたくなってくる。

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首相にも責務

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 中国に指摘されるまでもなく、われわれ日本人は、隣国との関係悪化には日本自身の責任もあることを自覚している。戦後、数年おきに計八回行われた天皇の靖国神社参拝が一九七五年の秋の例大祭を最後にまったく行われなくなった。その理由が七八年のA級戦犯の合祀(ごうし)にあることは関係者の回想録などからも疑うべくもない。その靖国に「A級戦犯も一般の英霊も区別しない」などという説明にもならないようなことで参拝し続ける小泉純一郎首相には、日中関係打開のために自ら動く重大な責務がある。

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