李 リョウ 04520

新谷文夫 『図解IT経営』東洋経済新報社、2000

 

第一章 IT経営の本質とは何か

 

T ITとは?IT経営とは?

 

IT(インフォメーション・テクノロジー)の直訳は、情報技術である。

ここはITを「情報を○○するための技術と定義しておきたい。

この○○には、さまざまな言葉が入る。

IT(情報技術)=情報を提供、獲得、共有、格納、検索、識別、処理、加工、分析などする技術

 

IT(情報技術)を導入する本質は、経営効率の改善や企業の付加価値の向上を行うことにより、IT(経営)=IT活用して、顧客に差別化した商品やサービスを提供することである。これを顧客価値の創造という。そして、ITを導入することより、顧客にどのような価値を創造しうるのかを考えなければ、IT投資は経営資源の無駄遣いになることを強く認識する必要がある。

 

IT経営 五つのポイント

@ 「経営効率化」と「高付加価値化」はともに顧客価値の創造につながる。

A        情報には、「データ」、「ナレッジ」、「ノウハウ」の三つがある。

B        「情報技術で何かできるか」と「情報技術は何に役に立つか」は異なる。

C        「情報システムの導入」=「IT経営の実現」ではない。

D        「インターネット」は「顧客中心の経営」を加速する。

 

U IT経営の二つの側面、「経営効率化」と「高付加価値化」

  顕在ニーズと潜在ニーズに応じた顧客価値の創造を可能とするIT経営

 

経営効率化によって創造される顧客価値とは、「低価格の商品やサービスの提供」であり、「企業存続による安心感の提供」である。 

 

もう一つの側面である高付加価値化は、インターネットの急速な普及に伴い、現実のものとなりつつある。

1、「パッケージ商品・サービスの提供」である。

2、「ナレッジサービスの提供」である。

 

V 「データ」、「ナレッジ」、「ノウハウ」、「情報」 とは何かを理解する。

 

A.「データ」 定型化することによって、いわゆるデータベースに格納できるレベルの情報。キーワードをつけて検索することができる情報。映像、画像、音声などのマルチメディア情報。

B.「ナレッジ(知識)」 一つのまとまりをもった「意味」を有する情報。細分化、定型化することにより「生命力」が失われてしまう情報。細かい検索性を持たせて保存することはできないが、文章化し、誰にでも客観的に理解させることできる情報。

C.「ノウハウ(智恵)」 文章化することも困難な情報。本人が気がつかないことさえある情報。

 

W 「情報技術で何ができるか」ではなく、「情報技術が何に役に立つか」の違    い

顧客の心理と現実の金流や物流の市場を見据えた上でのビジネスモデルの進化である。情報技術が何に役に立つか、常に、市場ニーズの視点を持つことが重要である。

 

X 「情報システムの導入」をしても「IT経営の実現」にはならないケース!

           IT経営の変化
 

               

            

 

Y 「インターネット」が加速させる「顧客中心の経営」

@        情報バリアフリー革命 顧客は、これまで困難であった各種情報の入手を、インターネットにより、迅速かつ安価に行うことが可能となった。

A        草の根メディア革命 顧客は、これまで困難であった個人情報の発信を、インターネットにより、容易かつ安価に行うことが可能となった。

B        ナレッジ共有革命 顧客は、これまで困難であった他者との意見交換を、インターネットにより、適宜かつ安価に行うことが可能となった。

 

これら三つの革命は、確かに、顧客と企業の関係を変えつつある。

 

Z 氾濫する「英語キーワード」にふりまわされるな!

 

IT経営を推進できるのは、経営のプロとしてのユーザー企業であることを強く認識しよう!

IT経営でよく用いられる英語キーワードがときとして本質をみあやまらせる魔法の言葉になっているのではないかということだ。

 

[ イメージで理解する「IT経営」企業経営の八つの機能分類

@        企画機能 経営企画や事業企画など一部門では担えない企画業務を推進する機能

A        管理機能 計数管理や人事管理など一部門では担えない管理業務を推進する機能

B        研究機能 既存の事業分野における新商品・サービスの企画業務を推進する機能

C        開発機能 右記の企画に基づいて、商品・サービスの開発設計業務を推進する機能

D        調達機能 商品・サービスを構成する部材・部品の調達購買業務を推進する機能

E        生産機能 右記の部材・部品を用いて商品・サービスの生産業務を推進する機能

F        販売機能 販売促進や顧客営業により商品・サービスの販売活動推進する機能

G        広報機能 企業広報や広報企画など一部門では担えない広報業務推進する機能