鈴木 淳也2005年6月14日
山口公太「マクドナルドのIT戦略」経林書房2001年
全体の流れ
マクドナルドのIT戦略は、おもに@QSC+Vの追求 A顧客満足100%達成B経営システムの構築C人材育成であり、これらの命題に対してITをうまく活用していった。
今回の課題
B経営システムの構築
ISP[1]…POSと結ばれ、売上げ、在庫管理から、発注の自動精算、アルバイトのスケージュール管
理、P&Lの作成などを行っている
POS(販売時点情報管理システム)の開発→日本マクドナルド独自の技術
POSの開発により「メイド・フォー・ユー[2]」が可能になる
2000年285店導入完了。2001年には1000店導入予定。2005年度末には全店舗で導入予定
現在、データウェアハウスが三つ存在する
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McAMSS[3]…マクドナルドが展開するエリアマーケット戦略のデータベース
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McDWH[4]…店舗・企業の売上げなどの情報データウェアハウス
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McDMS[5]…文書管理システム
将来的にはこの3つを統合し、セントラル・データウェアハウスを構築するのが目的である
McAMSSのコンセプト基本データ構成
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マーケット・プラニング・スタディ(Market Planning Study)
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顧客満足度調査(Customer Satisfaction Survey)
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地理情報システム「McGIS[6]」
McGISのデータ構造(推定)
1.
基本地図(ベースとなる地図)
2.
人口動態、所得調査データなどの行政資料
3.
交通量、駅の乗降客数、近隣の学校、病院などの主要施設データ
4.
スーパー、コンビニエンスストア、大型小売店の売上げなどの商業施設データ
5.
外食市場動向、競合店調査データなど外食関連データ
6.
マクドナルド既存店売上データおよびMPSデータ
マクドナルドがMcGISの機能で誇っているもの…出店空白地の検索機能、セールス予測機能
C人材育成
マクドナルドのeラーニング[7]の現状
マクドナルドのeラーニングはCD-ROMとDVDから始動した
2000年度内に全26巻2万5000項目に及ぶマニュアルをCD−ROM化する
*マニュアルの改正はスタッフが1年間かけて8巻程度が精一杯だった
2001年夏には本社のデータベースにすべて入れて店舗から引き出せるようにした
2000年度内に30本に及ぶビデオ教材を、すべてDVDに変換する
2001年秋マニュアルのオンライン化
マクドナルドが考えるeラーニング効果
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ポータビリティ…持ち歩ける手軽さ、またはイントラネットの容易さ
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スピード…配信した情報の即時伝達の可能
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タイミング…必要なときに、必要な教育を入手できる
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頒布性…一度に大量の情報頒布が可能
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理念の共有…経営理念を伝承、実践していくため
まとめ
経営システム構築の面から見ると、パソコンの導入活用で、ペーパレス化が進み数十億円規模のコストダウンが果たされた。また、今まで出店に1週間かかっていたものが5分で行うことができるようになった。これからの戦略としては、たくさんの量の情報を共有できるように経営システムは構築されていくだろ。そこがマクドナルドの経営システムの特徴ではないだろうか。
人材育成の面で見ると、マクドナルドにとってeラーニングの構築がゴールではない。あくまでも、クルーや社員たちが店舗で効果的なマネジメントができることがゴールである。マクドナルドは、すべてをeラーニングにしようとしないで、集合教育は集合教育でよいところがあるという認識がある。これからのIT時代、eラーニングと人間教育をいかに融合させていくか。そこが課題になるだろう。
[1] In-Store Processorの略
[2] トースターとスチーマー、パティのホールディングマシン、そしてドレス(仕上げ)台がワンセットで一直線になった「アッセンブル(Assemble/組み立て)ライン」を指す
[3] McDonald’s Area Market Support Systemの略
[4] McDonald’s Data Ware Houseの略
[5] McDonald’s Document Management Systemの略
[6] McDonald’s
Geographic Information Systemの略。商圏の特性を把握するための商圏データを融合させた地理情報システム
[7] 「電子」を媒介にする「学習教育行為」である。ここでは「eが作り出す環境の中での学習」としている