大和田崇『ITビジネス超進化論』
東洋経済新報社2000年
山田晃裕
選定理由
ITが非常に発達している今日の社会において、それを利用したビジネスがどうであるかということに興味があり、これを学ぶことでITについてより深く知ることが出来ると思ったため。
著者の紹介
大和田崇(おおわだたかし)
1969年、仙台市生まれ。1993年、東北大学工学部原子核工学科卒業。同年、日経BP社に記者として入社、IT関連の技術動向を取材、記事を執筆。1997年、ベンチャーキャピタルの株式会社ジャフコ入社。投資調査部でIT関連ベンチャー企業の技術評価、企業評価を担当。1998年、同社投資チーム配属、国内IT関連ベンチャー企業への投資を行う。2000年、株式会社エクイティ・リサーチ設立。同社代表取締役として、ベンチャー・ビジネスに関する評価、インキュベーション事業などを手がける。
主な著書に『これで儲ける!インターネット株式投資術)(日経ホーム出版社)、『これで勝つ!インターネット株式投資術、国内市場版』(日経ホーム出版社)などがある。
注目すべき一節
「アメリカで確立したビジネス・モデルが完成された形で輸入され、日本で開花するまでにはほとんど時間を必要としない。しかし、アメリカがこのモデルを確立するまでには、多くの時間と労力が投入されている。日本のインターネット・ビジネスの現状を考察すると、米国モデルの応用がききやすい分野に偏る傾向が見受けられる。その意味では、日本のインターネット・ビジネスはある意味で『いびつ』な形で進化している。アメリカは八〇年代のレーガノミクス以来、二〇年の歳月をかけて規制緩和やグローバル化、さらにはビジネス・モデルそのものの再構築を進めてきた。本来であれば、インターネット革命とは、規制緩和や雇用調整などのそれなりの『手間』と『時間』をかけてビジネス・モデルの再構築が行われ、そのなかに位置付けられてくるはずのものである。しかし、日本においては、これらの動きが同時期に、しかも外圧という形で導入が進んでいる。しかも、IT産業はアメリカが発信地となるため、一部の分野を除き基礎的な技術開発はすべてアメリカに依存している。日本においては、ある程度の変革が進んだサービスの分野にのみ集中してインターネット・ビジネスが普及するという一種のモザイク状態になりつつあるといってよい。このことが贅沢な資金と投資対象の少なさというギャップを生み、証券市場にも影響を与えているのである。」(123行)
要旨
インターネット・ビジネスの要素はインターネット技術(IP技術)、周辺技術(コンポーネント技術、JAVA)、経営手法(リストラクチャリング、株主重視の経営)、ファイナンス技術(直接金融、ベンチャー投資)である。
そして主導権は消費者側にあり、インターネットを使うことでコストの抑制が可能になる。ゆえに、消費者主導のマーケットに合わせた適切なビジネス・モデルを構築し、資本市場をフル活用したファイナンス戦略の組み合わせが成功するための基本的な法則であるといえる。
日本版ネット・ビジネスは規制緩和による自由競争の徹底、ベンチャー企業による産業の活性化、大企業のバランスシートの是正、インセンティブ制度の導入による所得分配の再構築などの課題をクリアする必要がある。それに対してアメリカでは、大企業におけるビジネス・プロセスが全てインターネットを軸に展開され、インターネットになじみにくいと思われていた分野にもネットを使った効率的な取引サービスを提供する会社が増大すると考えられる。
インターネットを使ったビジネスの特徴は、従来にないレベルの多数のユーザーが同時に同じメディアにアクセスし、さらに情報の検索や比較が他のメディアと比べて容易という点、空間的な制約がないため、サイト間の移動が容易である点、情報提供者側のリスクが少ない点、企業の組織をよりスリムにし収益力をアップさせる効果をもたらす可能性が大きい点、消費者主導のマーケットが成立しやすく事業者には常に価格低下の圧力が働くという点がある。
インターネット・ビジネスはファイナンス戦略、株式公開による戦略、ストック・オプションを活用した人材戦略が使われている。
インターネット・ビジネスの普及によって、B to Cサービスではインターネット証券取引、インターネット旅行代理店、書籍のネット販売、B to Bサービスでは企業間取引支援サービス、ASPによる情報システムサービス、ネット家電がさかんになってきた。
講評
著者の問題設定
インターネットが普及した背景には、IT業界独特の産業構造やファイナンス技術との融合などいくつかの重要な要素がある。これらの各要素が絡み合ってインターネット・ビジネスの特徴を形作っている。インターネット時代のビジネス・モデルは、マーケティングや経営スタイルなどをより先鋭化させる傾向が見られる。それはインターネットというメディアが持つ特質に大きく関係している。インターネットの普及によってビジネス・モデルはどのように変化するのだろうか。またどのような企業が生き残るのだろうか。
著者の回答
既存のメディアとインターネットの違いはいくつかある。インターネットはアクセスするユーザーが多い上に全世界のユーザーが同一規格のメディアにアクセスすることが可能という点で既存のメディアとは大きく異なっている。そして、既存メディアとインターネットの最大の違いといえるのが双方向性と検索性である。マスメディアとしての機能を持ち、双方向性を備えたものはおそらくインターネットがはじめてであるし、マス・レベルでの検索性を備えたメディアもまたはじめての存在といえる。この二点はインターネットを使ったビジネスについて考える際に非常に重要になる。マスコミュニケーションは、基本的に一方的な情報提供手段として機能してきた。大量の利用者に情報を提供しているにもかかわらず、利用者側は見る、見ないの選択しかない。しかし、インターネットの場合、情報の選択権は完全に利用者側にある。インターネットではTVと異なり利用者は時間に制約されることなく、いつでも情報にアクセスすることができる。しかも、検索サイトを使うことで、どのような情報が提供されているかを利用者が事前にある程度判断することが可能だ。さらにインターネットの場合、マスメディアと比較してコスト構造がまったく異なっているということがある。インターネットの場合、情報提供者側のコストがきわめて低いことがマスメディアと比べて大きく異なっている。情報提供者側のコストが安いということは、マスメディアとしてだけでなく、一対一のパーソナル・メディアとしても十分実用性があることを示している。マスメディアとしての機能とパーソナル・メディアとしての機能を併せ持った低コストなメディア、それこそがインターネットであるといえる。
インターネットを使ったビジネスの特徴は、従来にないレベルの多数のユーザーが同時に同じメディアにアクセスし、さらに情報の検索や比較が他のメディアと比べて容易という点、空間的な制約がないため、サイト間の移動が容易である点、情報提供者側のリスクが少ない点、企業の組織をよりスリムにし収益力をアップさせる効果をもたらす可能性が大きい点、消費者主導のマーケットが成立しやすく事業者には常に価格低下の圧力が働くという点があげられる。そして、そのようなインターネット・ビジネスを支える戦略としてファイナンス戦略、株式公開による戦略、ストック・オプションを活用した人材戦略があげられる。インターネットの普及によってはじめて登場したポータル・サイトのビジネス、ネットの導入によって劇的な手数料の値下げが可能となった証券取引のビジネス、逆に、利幅の縮小からインターネットへの移行なくしては業界の存続がむずかしい旅行代理店ビジネスなどは、マクロ的に見てインターネット導入のメリットが非常に大きな分野である。一方、生鮮食料品、単純な雑貨など、企業間取引では大きなインパクトがあるもののリテールの分野では、ネットの導入はほとんど期待できない分野もある。
インターネット・ビジネスとオールド・ビジネスを比較してみると、インターネットならではの特徴が見受けられる一方、収益モデルやマーケティングといった基本的な企業戦略についてはオールド・ビジネスの世界とまったく同様であることが分かる。要するに、ネットの導入によって収益構造が大きく変化する分野でなければネット企業として高く評価することは難しいといえよう。
評者の見解
今の世の中はインターネットを利用したものが多く、もちろんビジネスの世界でもそうである。インターネットを使うことでコストを安く済ませることも可能であるから有効な手段である。利用者が個々で得たい情報を選択することが出来るのも魅力である。インターネット旅行代理店や書籍をネットで購入することは同じような要領であると思うが、直接、お店に行く手間が省けるから利用する人は今後も増えることだろう。そういうことでこれらは成功しているインターネットを利用したビジネスといえるのではないか。反対に生鮮食料品や雑貨はネットの導入の必要性は感じない。
インターネット・ビジネスも基本的な企業戦略はオールド・ビジネスと変わりないから劇的にビジネス・モデルが変わることはないだろう。
今後の課題
インターネットを利用している企業が増えてきた中で、各企業の戦略をもっと詳しく調べたいと思う。そうすることでインターネット・ビジネスの実態やどのように収益を上げているかをより理解することが出来ると思うからである。