Bグループ(川田・長島・湯元・山田)
『日本の企業間競争』 第1章 トイレタリー
1960〜70年代の流通戦略
〜ライオンの対花王戦略を中心に〜
1、ライオンの競争戦略構想の背景
・花王は油脂技術を基盤に多様な製品を市場に送り出す。
・ライオンは原料関連部門を整理し、他社の原料に依存しながら合成洗剤を販売。
・常に総売上高は花王がライオンをリード。
●花王の販社政策
・再販売価格維持の実施を基礎として展開された販社政策。
・販社数は徐々に増え、全国展開が図られる。
・68年以降の販社は都道府県を単位に、それを3、4のブロックに分けて、既存の有力問屋の出資によって設立。
・その後に販売される「花王シリーズ商品」は販社のみを一次問屋とすること、その他商品についても販社ルートを主とすること、現金取引の拡大の3つを柱とする新取引制度を実施。
2、流通競争戦略の展開
●ライオンの三強政策
・「販社政策をとった花王」に対する競争戦略。
その内容は
@
自ら努力して体質を強化する卸店に販売の重点を置く
A
ライオン油脂製品を強く育てる卸店活動を期待する
B
行動的ライオン党との結びつきを強め激動期に処す
すなわち強い卸店、強い商品、強い結びつきという3つの面の強化を唱えたもの。
花王の販社政策のような前方統合とは異なり、卸店との継続的取引を前提としながら共存共栄を図ろうという主旨。
●ライオン油脂製品部の設置
・卸店の販売高や人員などの規模に応じた適切なタイプ分け
・卸店のライオン社拡充意欲
・卸店経営者の十分な理解
・卸店油脂製品部とライオン油脂との綿密な情報交換
→ライオンの製品流通のルートは3種の代理店を通じて供給
●小売店への販売支援
・ライオンでは店売高の拡大のために取引相手である小売店に対しても経営の支援
・販売部門に販売促進課を創設し、乱売防止ときめ細かいサービス
・販売目標を設定しその実績評価を行うことをねらいとして専用伝票制度を導入
→小売店の販売を集約することが可能になる
・有力小売店をポイント店として選定し、これを対象に卸店の販売促進を支援
・製品や市場の状況を提供するなどコミュニケーションの促進
3、戦略の強化と浸透の実態
●油脂製品政策の強化策
小売店の計数管理・卸店のテリトリー別の市場分析とエリアマーケティング・基幹卸店の財務諸表や組織および営業実態の把握・基幹油脂製品部の専門部への移行
●油脂製品部の実態
・地域によって様々であり、三強政策の浸透度が高い地域もあれば低い地域もあった
・浸透度が低い地域は卸店のライオン製品総売上高に占める店売高比率の高い代理店、すなわち特約店を多く擁する卸店であり、専門部制への移行は、独自の経営方針や長期相対取引との葛藤がありなかなか容易には進まなかった
4、戦略の限界と成果
・限界…三強政策は卸店との共存共栄を掲げながらも、卸店にとっては価格交渉力の減退と長期的な取引を継続してきた代理店との関係の組替えを意味するため「自己矛盾」をはらんでいるといえる
・
成果…売上高での瞬間的なキャッチアップ、卸店から小売店までの末端にいたる情報の把握
まとめ
ライオンの競争戦略によっていくつかの成果がみられたが、経営主体が展開する戦略それ自体に内包される論理的限界という要因もあって、所期の差別的競争とはなりえず、同質的競争の枠内で競争を継続することとなった。
問題提起
・1960年代〜70年代のトイレタリー業界は花王とライオンだけの競争になっていたが、他の企業が参入できなかったのはなぜか?
・ライオンの三強政策によってライオンは利益拡大をはかることに成功したが圧力をかけられた小売店にも利益はあったのだろうか?