塚本潔『ドコモとau』について
(光文社、2004年)
湯本裕章
選定理由
現在、日常生活で必要不可欠なものとなっている携帯電話。この携帯電話において2大巨頭であるドコモとauは現在の姿になるまでにどのような戦略、苦難があったのか気になったためである。
著者の紹介
塚本潔(つかもときよし)
慶應義塾大学法学部卒業後、「ニューズウィーク」誌の日本支社を経て、フリーに。その後、日本企業の駐在員として、北米ビジネス戦略などに携わる。帰国後、その経験を元に、国際ビジネスジャーナリストとして、新しい視点の企業論を展開。
注目すべき一節
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「auには『ドコモと同じことを絶対にやりたくない。もし、同じことをやるのなら、ドコモより先にやる』そういう気持ちが今でもつよくある。」(14頁)
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「『NTTに対抗しようと思ったら、NTTに勝てる技術力を持ったところに依存して何が悪い。依存しなかったらコストがかかって仕方ない。』」(20頁)
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「KDDIがクアルコムと手を組むことで競争力を増す戦略をとる一方で、対象的にドコモはあくまでも自社技術による独自路線で成長を目指している。」(32頁)
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「このiモードはまったくの『瓢箪から駒』で、社内でもiモード担当者以外は誰もこれほどまでにヒットするとは思っていなかった。」(33頁)
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「松下とNECが背に腹は代えられぬと決断した結果が、ソフトの開発を最大のライバルどうしであるこの二社が手を組んで行うという前代未聞の協業だ。」(59頁)
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「『我々は携帯端末じゃなく、パソコンをつくっている感覚になりました。』」(121頁)
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「放送と携帯電話が融合したFM携帯は、二〇〇五年末から始まる携帯電話向けのデジタルテレビ放送に先駆けて、『放送と携帯電話が融合すると、こうなりますよ』といった見本になっている。」(194頁)
要旨
第1章では、KDDIの母体の第二電電企画株式会社(後のDDI)が日本電信電話公社によって牛耳られていた電気通信事業の独占体制に風穴を開けてやると考えていた。
またドコモとauが3Gを導入するときに、どのような方式を採用して、実行していくのかが述べられている。
第2章では、KDDIがクアルコムと手を組んで競争力を増す戦略をとる一方で、ドコモは自社技術による独自路線で成長を目指したのである。そして国内市場でドコモのシェアを磐石にしたiモードが登場するが、ドコモの全社的プロジェクトは第三世代携帯電話(3G)であった。
ドコモが開発していたWCDMAを国際標準化させようとしていたが欧米勢が対抗してきたのである。国際化の一環として海外キャリアへも巨額投資をしたのである。
第3章では、第三世代携帯電話(3G)のFOMAのサービス開始直前にソフトウェアにバグが発生してしまい、本格サービス開始が遅れてしまったのである。見切り発車で発売したが、バッテリーとソフトに問題があった。これを松下通信工業とNECが協力しあって問題を解決したのである。
第4章では、auが「EZウェブ」という名で提供していたデータサービスが、インフラ主導型でコンテンツなど新しいサービスを用意していなかったために失敗したのである。どん底のauに勢いをつけたのは「家族割」の拡大、「着うた」のサービスの開始である。
第5章と第6章では、ドコモとauがどのようにして売れるものを作り出したかについてである。auはデザイナーを引き抜き、デザイン改善を図った。ドコモはアプリケーションでドラゴンクエストとファイナルファンタジーを動かそうとした。また、auのデザインプロジェクトの成功の影響を受けてデザインにも力をいれるようにしたのである。
第7章では、auはドコモとの契約者数の差がそれほど縮まったわけではないため、EVDO(エボリューション・データ・オンリー)と定額制を導入したのである。EVDOは後のWINのサービスになり、通信効率もよいために導入された。
ドコモもHSDPA(ハイスピード・ダウンリング・パケット・アクセス)を導入し、定額制を始めたのである。
第8章では、ドコモがビル・ゲイツの「ウォレットパソコン」をコンセプトにした、ソニーの開発した非接触型ICカード技術のフェリカを組み込んだ「お財布ケータイ」を突然始めたのである。また、ソニーとどのようにフェリカでEコマースを広めるかを考えた結果、携帯電話向けのフェリカの「フェリカネットワークス」を設立する。
第9章では、auは手を組んでいるクアルコムのワンチップ・ソリューションで通信とアプリケーションの部分を1つで対応しているチップを使っているためにコストが下がっているのである。
また、クアルコムの開発したBREWでFMを聞けるようにしたのである。これは携帯電話向けのデジタルテレビ放送の先駆けの見本でもある。
第10章では、日本の端末メーカーは世界シェア争いでは苦戦しているのである。特に隣国の韓国のサムスン電子に大差をつけられている。サムスンは根幹部品はクアルコムなどの他社製のものを使い、なおかつ、自社にない部品は外から積極的に買い、これを上手く組み合わせて、開発コストを下げてきた。日本が苦戦したのは日本独自の仕様だったためである。
第11章では、ユーザーは使いやすいシンプルな端末を求めているが、ここでキャリアとの間にズレが生じたのである。機能かコンテンツを前面に打ち出した戦略では顧客を掴めなくなったのである。
WIN、定額制を導入してauに替えるユーザーが増え、新規加入の比率は36%にもなった。いい面もあるが、社会に及ぼす影響や悪用なども存在するのである。携帯大国の日本ができるのは、最先端技術の携帯端末を世に送り出すだけでなく、近未来のモバイル社会のあるべき姿を世界に先駆け、創造していくことである。
講評
著者の問題設定
世界初の第三世代携帯電話(3G)を全社を挙げて取り組み、想像を超えるトラブルに見舞われていたドコモ。
NTTグループに対しての特別な意識を持ち、FOMAで苦戦するドコモを横目に攻めの戦略を打ち出し、いち早く軌道にのせたau。
3Gを立ち上げた両社の辿った道を克明に追い、ドコモとauの戦略の違いを明らかにしていく。
著者の回答
ドコモは自社技術があり、独自路線で成長を目指した。ここでまず誕生したのがiモードである。この勢いで第三世代携帯電話(3G)のFOMAの商用サービス開始に向けて取り組んだ。まずはWCDMAを国際標準化して実用化させようと、海外キャリアへ投資をした。しかし、FOMAのサービス開始直前に、ソフトウェアにバグが発生し、電波が突然切れる事態が発生した。また、FOMAの初期の端末はバッテリーの持ちも悪かったのである。バグの問題を解決したのは松下通信工業とNECの2社が協力したためである。バッテリーに関してもこの2社の協力で協力したのである。auは「ドコモと同じことは絶対にやりたくない。もし同じことをやるなら、ドコモより先にやる。」という気持ちを持っている。
auは、ドコモのiモードよりも2ヶ月遅れてEZウェブを開始するも、新しいコンテンツを用意していないため失敗した。どん底の状態で3GのCDMA2000 1Xを開始し「家族割」「着うた」で勢いがついた。デザイナーを引き抜いて、いいデザインのものを作り、カラートレンドを反映した端末を投入して顧客を掴むことに成功した。
ここで両社は顧客数をより増やすために動いた。
ドコモは3Gと呼ばれるにふさわしいアプリケーションの機能は何かということでドラクエとFFを動かすという答えを出した。またauの影響を受けデザイン重視でいくことにもなったのである。
auは定額制を導入してきたのである。その後ドコモも定額制に踏み切ってきたのである。
ここで突然ドコモはフェリカ搭載の「お財布ケータイ」を始めたのである。これで携帯電話のEコマースを広めていこうと考えていた。auもフェリカ携帯電話の参入を決めた。
ドコモはフェリカを、auは定額制をよりどこりにEコマースをやろうとしていたのである。
ショップに関しても独自の戦略がある。
auは料金シミュレーションを行い、ドコモとauの1年間の差額を提示し、auの方がお得ですという戦略を行っている。
ドコモは現在加入している料金プランの見直しを提案するのである。
このようにドコモとauは近未来のモバイル社会の「あるべき姿」を世界に先駆けて創造していくことが存在理由といえる。
評者の見解
ドコモとauの戦略の違いはあるが、最終的にやりたいことは同じように見える。しかし真似ではなく、微妙な違いがあった。このようにお互いを意識しつつも独自の考えでこれからも進化させていくことは、携帯電話をよりよくすることにいいことである。
今後の課題
今でも十分なくらいの機能が付いているが、これから財布だけでなく、クレジット機能、身分証明機能などが付いてくるかもしれない。そうなると携帯に関しての事件も増えてくるものと思われる。いかに人々が安心して使えるかをこれからはもっと考えていってほしい。
http://wwwint2.int.komazawa-u.ac.jp/~1ek4260y/