三村英武 EK5084 2007年7月13日
夏野剛著 『ケータイの未来』ダイヤモンド社、2006年
1、前回の発表の要旨
u 新しいコンセプトの「生活インフラ」を導入
u おサイフケータイをリアルな生活に溶け込ませる
u 経営陣を進化させ、顧客のために経営をする
u ケータイの未来は無限に広がる
2、おサイフケータイによるリアルライフ革命
u おサイフケータイとiDはDCMXの布石
Ø 金融サービス、強く意識→JAVAの採用。自らプログラムを開発でき、さらにOSとアプリケーション・ソフトウェアが完全に独立している技術が必要。ゲームの開発手段がJAVA、裏ではクレジット事業への道筋を描く。
u JAVA→iD→DCMX=今後のドコモの利益の源泉
Ø iD:VISA、マスター、JCBと同等のカード・ブランド→使える場所が広がる
Ø DCMX:iDを利用するクレジット・カード機能=DCMXを提供するドコモが発行母体
Ø 「アクワイアラ」はカード加盟店を開拓し、iDリーダー/ライターを置くなどの支援業務を行う。そして、店舗から手数料収入を得る。
u デザインでもかっこいいサービス
Ø 使い勝手やデザイン、スタイルにこだわる→ケータイを利用
Ø カードよりも強い→セキュリティ(ICカードのロック機能、iDアプリ用のパスワード、指紋認証、遠隔ロック)
Ø カードの券面でも、とにかく使うことがかっこいいことにこだわる。思わず人に見せたい、使いたい、持ち運びしたいデザイン
Ø さらに、サウンドにもこだわる。環境音楽作曲家の小久保氏が作成。脳をリラックスさせる高周波ノイズ、1/fゆらぎ[1]を研究し、様々なところの外周音楽を手がける。
u 利用シーンの広がりに合わせて
Ø 携帯電話ユーザーは端末機能の進化と共に、通話以外の用途でも「ケータイ」を使い始める(インターネットを通じたバンキング、電子メール、日々のショッピングなど)ユーザーの利便性の向上を考えてサービスの幅を広げることは企業として当然。
Ø 携帯事業者をはじめ通信事業者の成長と言えば、高速ネットサービスは不可欠だが、通信インフラにこだわらなくていい。ユーザーの生活が便利になるなら、必要なものはドンドン取り込んで自ら提供していけばいい。それが生活インフラの根本的な発想。
3、業界志向を捨てマーケット志向へ
u
業界のリーダーから経済界のリーダーに
Ø 2004年度の売上げ、ドコモ約5兆円、KDDI約3兆円、ボーダフォンは約1兆4千7百億円。つまり、携帯電話事業者の売上げ規模は日本企業のかなり上位で、いずれも1兆円企業。
u 通信と放送の融合
Ø 携帯電話機が実現する近未来サービス→地上デジタル放送が大きな波。実際、携帯電話機が今のテレビ放送をそのまま受信しても、個人のライフスタイルにも携帯電話事業にも「革新的なこと」は起こらない。
Ø 単に技術的にテレビ機能をケータイに載せるだけ考えてもいけない。消費者の立場に立ったときにどんな利便性を提供できるか必要。
Ø 放送と融合の場合、重要な4点
@ どのように上り回線を番組内容と組み合わせるか
A データ放送部分をモバイル向けに十分カスタマイズできるか
B 既存のインターネット(モバイル)・コンテンツときちんと連動できるか
C サイマル放送[2]でなくなったときに、モバイル向けの番組のクオリティを保てるか
通信と放送の融合は大きな可能性を秘めている分野。
まとめ
この本を何度も読み返してみて、おサイフケータイについて書かれていることが多く、戦略やエピソードなど詳しく書いてあって、とても勉強になった。
私は実際におサイフケータイなどの携帯電話での簡単な決済をしたことがなく、あまり始めは関心を得ることはなかったが、本書でも書かれていたようにこれからはクレジット・カード事業が利益の源泉になると考えられているので、そのような分野にも視野を広げて学べればよいと感じた。
また、携帯電話という身近なアイテムの本なら分かりやすいと思ったが、携帯事業者には提供者側、また消費者側のための戦略が特に多く存在したので、内容としてはとても多く、勉強になった。